問題提起
法律相談で、話の途中で弁護士に質問をはさまれたり、話を先に進められたりすると、「ちゃんと聞いてもらえていない」と感じることがある。一方で、相談時間には限りがあり、弁護士は法律上の判断に必要な事実を短い時間で聞き取ろうとする。弁護士の聞き取りにどのような意味があるのか、相談者は何を確かめればよいのかを知っておくと、相談の場で落ち着いて対応できる。
弁護士に相談する前に知っておきたい法律の要点を、分野ごとにスレッド形式でまとめています。
法律相談で、話の途中で弁護士に質問をはさまれたり、話を先に進められたりすると、「ちゃんと聞いてもらえていない」と感じることがある。一方で、相談時間には限りがあり、弁護士は法律上の判断に必要な事実を短い時間で聞き取ろうとする。弁護士の聞き取りにどのような意味があるのか、相談者は何を確かめればよいのかを知っておくと、相談の場で落ち着いて対応できる。
弁護士職務基本規程は、国会が定めた法律ではなく、日本弁護士連合会が定めた会規で、弁護士はこれに従って職務を行う。
弁護士は、事件を受任するに当たり、依頼者から得た情報に基づき、事件の見通し、処理の方法並びに弁護士報酬及び費用について、適切な説明をしなければならない。弁護士職務基本規程29条1項(e-Gov法令検索で原文確認)
弁護士は、事件の処理に当たり、必要かつ可能な事実関係の調査を行うように努める。弁護士職務基本規程37条2項(e-Gov法令検索で原文確認)
弁護士は、委任の趣旨に関する依頼者の意思を尊重して職務を行うものとする。弁護士職務基本規程22条1項(e-Gov法令検索で原文確認)
弁護士は、真実を尊重し、信義に従い、誠実かつ公正に職務を行うものとする。弁護士職務基本規程5条(e-Gov法令検索で原文確認)
これらの規定には、受任するときの説明(29条1項)、事件を処理するときの調査(37条2項)、委任の趣旨に関する意思の尊重(22条1項)という、それぞれの場面がある。法律相談それ自体も契約に基づく業務になりうるが、相談の段階でどこまで説明や調査が必要かは、相談の目的、頼む内容、得られた情報によって異なる。ここでは、相談のときに確かめておきたい点を整理する。
① 大事な事情が伝わったか。 弁護士の見通しは、相談者から得た情報に基づく(弁護士職務基本規程29条1項)。相談者が伝えていない事情は、見通しに反映されないことがある。不利な事情も含めて、大事な事情が伝わったかを確かめる。
② 質問の意味が分かるか。 弁護士が途中で質問をはさむのは、法律上の要件に当たる事実(いつ、誰が、何をしたか、証拠があるか)を確かめるためのことがある。質問の意味が分からなければ、相談者がその場で尋ねてよい。
③ 希望が伝わったか。 弁護士は、委任の趣旨に関する依頼者の意思を尊重して職務を行うものとされている(同規程22条1項)。相談者がどのような解決を望んでいるか(お金を受け取りたい、関係を終わらせたい、早く終わらせたいなど)が伝わったかを確かめる。
④ 説明に反映されたか。 相談の終わりに受けた説明が、相談者の伝えた事情を踏まえたものになっているかを確かめる。
1. 相談の前に、相談者が、出来事の経過を日付順にまとめた時系列メモと、手元の資料を用意する。
2. 相談の冒頭で、相談者が、「何が起きて、何に困っていて、どうしたいか」を短く伝える。
3. 弁護士の質問には、相談者が分かる範囲で答え、分からないことは「分からない」と伝える。推測で答えない。
4. 相談の最後に、相談者が、伝えそびれた事情がないかメモを見て確かめ、あれば伝える。
5. 相談者が、受けた説明が自分の伝えた事情を踏まえたものかを確かめ、疑問があればその場で尋ねる。
実務の視点 時系列メモは、「日付・出来事・関係する資料」の3列で十分である。感情や評価は別のメモに分け、事実の経過を先に伝えると、弁護士が論点を早くつかみやすく、相談者の話を最後まで聞く時間も取りやすくなる。相談時間が足りなかったときは、次の相談の予約や、資料を追加で送ってよいかを尋ねる。
① 質問をはさまれることが、聞いていないことを意味するとは限らない。 弁護士は、法律上の判断に必要な事実を確かめるために質問することがある。
② 話を最後まで聞いてもらえることだけが良い対応ではない。 時間内に、その相談で確かめられる範囲の見通しや、依頼する場合の進め方・費用の説明まで受けられることも大切である。話すことに時間を使いすぎると、説明を受ける時間がなくなることがある。
③ 不利な事情を隠すと、説明も不正確になる。 弁護士の見通しは相談者から得た情報に基づくので、不利な事情を伝えないと、見通しが実際より良く聞こえてしまうことがある。
④ 大事な事情が伝わっていないと感じたら、その場で伝える。 「先ほどの話に加えて、伝えておきたい事情があります」と切り出してよい。
議論のある点 見通しが外れたことだけで、直ちに弁護士の法的責任が生じるわけではない。弁護士にどこまでの聞き取り・説明・調査が必要だったかは、相談や依頼の内容、相談者から伝えられた情報、そのとき把握できた事情などを踏まえて判断される。相談者が事情を伝えなかった場合も、そのことだけで責任の所在が決まるわけではなく、損害賠償が問題になるときは、損害や因果関係なども検討される。事案によって判断が分かれる。一般論だけで判断せず、弁護士に相談してほしい。
・相談で伝えた大事な事情が、説明にまったく反映されていないと感じた
・相談時間が足りず、見通しや費用の説明を受けられなかった
・依頼した後、伝えた事情と違う前提で書面が作られている
具体的な事案は、法律事務所、弁護士会の法律相談センターや法テラス等にご相談ください。
相談の前に時系列メモを用意し、相談の場で事情を伝え切る。ただし、メモや資料がそろっていなくても、期限があるかもしれない場合は、相談を先延ばしにしない。相談をしただけでは、時効や裁判の期限は止まらない。期限が迫っている事件では、相談の冒頭で期限があることを伝え、裁判所などから届いた書類と封筒、受け取った日が分かるものを示して、まず期限の確認から始めてもらう。相談や資料の送付をしただけで、必要な手続まで引き受けてもらえたとは限らないので、相談の後に「誰が、いつまでに、何をするか」を確かめる。
弁護士の見通しの説明は、相談者から得た情報に基づく。質問をはさまれたこと自体よりも、大事な事情と希望が伝わり、説明に反映されたかを確かめる。時系列メモと優先順位を付けた質問を用意し、伝えそびれたことは相談の最後に伝える。
出典
弁護士職務基本規程5条・22条1項・29条1項・37条2項(平成16年日本弁護士連合会会規第70号)