問題提起
弁護士に依頼した後の不満として多いのが、「電話がつながらない」「メールの返事が来ない」「今どうなっているのか分からない」という連絡の問題である。依頼の前に連絡の取り方を確かめておけば、こうしたすれ違いの多くは防げる。弁護士には報告や協議についてどのような決まりがあるのか、依頼の前に何を確かめればよいのかを整理しておく。
弁護士に相談する前に知っておきたい法律の要点を、分野ごとにスレッド形式でまとめています。
弁護士に依頼した後の不満として多いのが、「電話がつながらない」「メールの返事が来ない」「今どうなっているのか分からない」という連絡の問題である。依頼の前に連絡の取り方を確かめておけば、こうしたすれ違いの多くは防げる。弁護士には報告や協議についてどのような決まりがあるのか、依頼の前に何を確かめればよいのかを整理しておく。
受任者は、委任者の請求があるときは、いつでも委任事務の処理の状況を報告し、委任が終了した後は、遅滞なくその経過及び結果を報告しなければならない。民法645条(e-Gov法令検索で原文確認)
受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負う。民法644条(e-Gov法令検索で原文確認)
弁護士職務基本規程は、国会が定めた法律ではなく、日本弁護士連合会が定めた会規で、弁護士はこれに従って職務を行う。
弁護士は、事件を受任したときは、速やかに着手し、遅滞なく処理しなければならない。弁護士職務基本規程35条(e-Gov法令検索で原文確認)
弁護士は、必要に応じ、依頼者に対して、事件の経過及び事件の帰趨に影響を及ぼす事項を報告し、依頼者と協議しながら事件の処理を進めなければならない。弁護士職務基本規程36条(e-Gov法令検索で原文確認)
弁護士は、事務職員、司法修習生その他の自らの職務に関与させた者が、その者の業務に関し違法若しくは不当な行為に及び、又はその法律事務所の業務に関して知り得た秘密を漏らし、若しくは利用することのないように指導及び監督をしなければならない。弁護士職務基本規程19条(e-Gov法令検索で原文確認)
① 連絡の方法。 電話、メール、面談、オンライン会議など、どの方法で連絡を取るか。書類のやり取り(郵送・電子データ)の方法も含めて確かめる。
② 連絡の窓口。 担当弁護士に直接連絡するのか、事務職員を通すのか。事務職員が関わる場合も、弁護士は事務職員を指導・監督しなければならないとされている(弁護士職務基本規程19条)。法律的な判断や方針の相談は、弁護士と直接話せるかを確かめる。
③ 報告の頻度と時期。 弁護士は、必要に応じて事件の経過や結果に影響する事項を報告し、依頼者と協議しながら進めなければならない(同規程36条)。どのような節目(相手方からの回答、期日の前後など)に報告を受けられるかを確かめる。依頼者は、処理の状況の報告をいつでも求めることができる(民法645条)。
④ 急ぎのときの連絡。 期限のある書類が届いたときなど、急ぎの連絡をどこにすればよいかを確かめる。
1. 相談の場で、相談者が、依頼した場合の連絡の方法と窓口を尋ねる。
2. 相談者が、返事のおおよその目安(例:何日以内に返事をもらえるか)と、弁護士が不在のときの対応を尋ねる。
3. 相談者が、どのような節目に報告を受けられるかを尋ね、希望があれば伝える。
4. 相談者が、急ぎのときの連絡先と、期限のある書類が届いたときの伝え方を確かめる。
5. 依頼した後、相談者が、連絡の記録(日時・内容)を残しておく。
実務の視点 弁護士に連絡するときは、用件を一つにまとめ、「何について」「いつまでに」「何をしてほしいか」を書いておくと、返事が早く正確になりやすい。裁判所や相手方から書類が届いたときは、届いた日を記録し、書類の写し(写真でもよいか確かめる)をすぐに送る。期限が書かれている書類は、そのことを最初に伝える。
① すぐにつながらないことは珍しくない。 弁護士は、裁判所の期日、他の依頼者との打合せ、移動などで事務所を離れていることが多い。すぐに電話がつながらないことだけで、対応が悪いとは限らない。返事の目安を依頼の前に確かめておくことが大切である。
② 報告がないまま長期間が過ぎるときは、報告を求めてよい。 依頼者は、処理の状況の報告をいつでも求めることができる(民法645条)。
③ 事務職員についても、秘密を守るための指導・監督が求められる。 弁護士は、事務職員が業務に関して知り得た秘密を漏らしたり利用したりしないよう、指導・監督しなければならない(同規程19条)。職場や家族に知られたくない事情があるときは、連絡先・郵送先・留守番電話への伝言の可否を具体的に確かめる。事件の方針や見通しのような判断は、弁護士から説明を受ける。
④ 連絡方法の希望は早めに伝える。 職場に電話されたくない、郵便物を家族に見られたくないなど、連絡方法に希望があるときは、依頼の時点で伝える。
議論のある点 弁護士の報告や連絡がどの程度遅れたら、委任契約上の義務(善管注意義務や報告義務)に反するといえるか、それによって依頼者に損害が生じたといえるかは、事件の内容、期限の有無、やり取りの記録によって判断が分かれる。期限が迫っているときは、連絡が取れない期間の長さにかかわらず、通常の返事の目安を待たずに、事務所に急ぎであることを伝える。それでも必要な確認ができないときは、一般論だけで判断せず、すぐに別の弁護士に相談してほしい。
・手続の期限が迫っている、または期限が分からないのに、依頼した弁護士と連絡が取れず必要な確認ができない
・事件の経過の報告がなく、今どうなっているのか分からない
・連絡の方法について希望を伝えたのに、守られていない
具体的な事案は、法律事務所、弁護士会の法律相談センターや法テラス等にご相談ください。
連絡の方法と窓口は、依頼する前の相談で確かめる。法律相談それ自体によって、時効の完成が猶予されたり、裁判の期限が延びたりするわけではない。事件の処理や期限の管理をどこまで頼み、弁護士が何を引き受けたかを確かめる。依頼した後に裁判所などから書類が届いたときは、期限の日付が書かれていなくても期限がないとは限らないので、届いたその日に弁護士に知らせる。
弁護士は、受任した事件に速やかに着手し、必要に応じて報告と協議をすることとされ、依頼者はいつでも処理の状況の報告を求めることができる。依頼の前に、連絡の方法、窓口、返事の目安、急ぎのときの連絡先を確かめておき、依頼の後は用件と期限を明確にして連絡する。
出典
民法644条・645条(e-Gov 法令検索で原文確認・2026-10-21)
弁護士職務基本規程19条・35条・36条(平成16年日本弁護士連合会会規第70号)