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仮差押え|預金を押さえるときの準備

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この記事の要点

  • 預金の仮差押えは、金銭の支払を求める債権について、判決の前に、相手方(債務者)が金融機関に対して持つ預金債権を仮に差し押さえる手続である。保全執行は、裁判所が金融機関(第三債務者)に対し、債務者への弁済を禁止する命令を発する方法で行う(民事保全法20条1項・50条1項)。
  • 仮差押命令は特定の物について発しなければならない(民事保全法21条)。預金では、送達を受けた金融機関が差し押さえられた預金を速やかかつ確実に識別できるように特定する必要があり、通常は金融機関と支店(取扱店舗)を指定する。最高裁は、債権差押命令の申立てで、大規模な金融機関の全ての店舗を対象に順位を付けて差し押さえる方式は、差押債権の特定を欠き不適法であると判断した(最決平成23年9月20日・民集65巻6号2710頁)。
  • 財産開示手続や金融機関から預金の情報を取得する手続(民事執行法197条・207条)は、判決や調停調書、執行証書などの執行力のある債務名義を持つ債権者などが使える手続で、仮差押命令を得ただけでは使えない。仮差押えを申し立てる段階では、相手方の預金がどこにあるかの見当をつけておく必要がある。

期限に注意

仮差押命令が出ても、債権者に命令が送達された日から2週間を過ぎると、保全執行をすることができなくなる(民事保全法43条2項)。この期間は裁判所の判断で延ばせるものではない。この期間は保全執行に着手する期間と考えられており、着手した執行が期間の経過で消えるわけではない。預金の仮差押えでは、仮差押命令を発した裁判所が執行も担当し(民事保全法50条2項)、通常は命令の発令とともに金融機関への送達の手続が進む。担保を立てることが執行の条件とされた場合は、裁判所が定めた期間内に担保を立てる必要がある(民事保全法14条1項)。債務者の申立てで本案の訴えの提起を命じられた場合は、定められた期間(2週間以上)内に、訴えを起こしたことを証する書面(すでに訴えを起こしているときは係属を証する書面)を出さないと、債務者の申立てにより命令が取り消される(民事保全法37条1項〜3項)。期限を過ぎると権利を失ったり手続ができなくなったりすることがあり、いつから数えるか・延ばせるかは事情で変わるので、思い当たる方はできるだけ早く弁護士に確認してほしい。

問題提起

お金を払わない相手が、裁判の間に預金を引き出して使ってしまうかもしれない。判決を得るまで待っていては、回収できなくなるおそれがある――このようなときに検討するのが預金の仮差押えである。ただ、申立てには事前の準備が欠かせず、相手方の生活や営業に大きな影響を与えることもある。この記事は、2026年10月21日現在の民事保全法などで説明している。民事保全の全体像は「民事保全|判決前に財産を押さえる意味」で説明している。

法律の文言(民事保全法21条・50条1項)

仮差押命令は、特定の物について発しなければならない。ただし、動産の仮差押命令は、目的物を特定しないで発することができる。民事保全法21条(e-Gov法令検索で原文確認)
民事執行法第百四十三条に規定する債権に対する仮差押えの執行は、保全執行裁判所が第三債務者に対し債務者への弁済を禁止する命令を発する方法により行う。民事保全法50条1項(e-Gov法令検索で原文確認)

要件・準備

① 被保全権利の疎明。 貸金、売買代金、損害賠償など、金銭の支払を求める権利があることを、契約書、借用書、請求書、やり取りの記録などで疎明する(民事保全法13条)。

② 保全の必要性の疎明。 判決を待っていては強制執行ができなくなる、または著しく困難になるおそれがあることを疎明する(民事保全法20条1項)。相手方が財産を処分しようとしている、ほかに財産が見当たらないなどの事情を示す。預金は相手方の生活や営業に直結するため、不動産などほかの財産がある場合は、そちらを先に検討するよう求められることがある。

③ 預金の特定。 送達を受けた金融機関が、差し押さえられた預金を速やかかつ確実に識別できるように特定する。通常は金融機関と支店を指定し、仮に差し押さえる預金の範囲(請求額を限度とすること、複数の預金があるときの順序、複数の支店を対象にするときは支店ごとの金額)を明らかにする。上の最高裁の決定は債権差押命令の申立てについてのものだが、その理由は、送達を受けた金融機関が速やかかつ確実に差し押さえられた債権を識別できることが必要だというものである(最決平成23年9月20日)。指定した支店に預金がなく、押さえられないこともある。

④ 担保の用意。 保全命令は、多くの場合、担保を立てることを条件に発せられる(民事保全法14条1項)。担保の額は、債務者が受けるおそれのある損害などを考えて裁判所が決める。預金の仮差押えは債務者への影響が大きいため、担保の額も考慮されやすい。担保は、供託所への金銭の供託などの方法で立てる(民事保全法4条1項)。

⑤ 申し立てる裁判所。 本案の管轄裁判所、または仮に差し押さえる物の所在地を管轄する地方裁判所に申し立てる。預金債権は、第三債務者である金融機関の普通裁判籍の所在地にあるものとされる(民事保全法12条1項・4項)。

申立てから仮差押えまでの流れ

1. 請求の根拠と、相手方の預金のある金融機関・支店を確かめる。
2. 申立書と疎明資料を裁判所に出す。事前に相手方に知られると預金を移されるおそれがあるため、通常は債務者を呼ばずに審理される。すでに相手方に紛争を知られていても、預金が残っていて要件を満たせば、申立てを検討できる。
3. 裁判所が担保の額を決め、債権者が担保を立てる。
4. 仮差押命令が発せられ、金融機関に弁済禁止の命令が送達される。その時点の預金が、請求額の範囲で引き出せなくなる。
5. 債権者の申立てがあるときは、裁判所書記官は、命令の送達に際し、金融機関に、命令の送達の日から2週間以内に預金の有無などを陳述するよう催告しなければならない(民事保全法50条5項、民事執行法147条1項)。金融機関が故意または過失で陳述をしなかったり、事実と違う陳述をしたりしたときは、それによって生じた損害を賠償する責任を負う(民事執行法147条2項)。
6. 仮差押えだけでは、債権者は預金を取り立てられない。本案の訴訟で勝訴し、判決の確定や仮執行宣言などで強制執行ができる状態になったら、別に申し立てて預金の差押え(本執行)に進む。

実務の視点 預金の仮差押えで押さえられるのは、命令が金融機関に送達された時点の残高である。送達の時点で残高が少なければ、ほとんど押さえられないこともある。給料の振込日や売上の入金日など、残高が多くなる時期を考えて申し立てることがある。残高があっても、金融機関が相手方に貸付けをしていて相殺を主張したり、ほかの債権者の差押えと競合したりすると、確保できる額が変わることがある。

確認点・よくある誤解

① 仮差押解放金。 仮差押命令には、債務者が供託すれば執行の停止や取消しを受けられる金額(仮差押解放金)が定められる(民事保全法22条1項)。すでに仮差押えが執行されているときは、債務者が解放金を供託したことを証明して、裁判所に執行を取り消してもらう(民事保全法51条1項)。供託しただけで直ちに預金を引き出せるわけではない。金融機関が仮差押えされた預金の額に相当する金銭を供託した場合は、その額の範囲で、債務者が解放金を供託したものとみなされる(民事保全法50条3項)。

② 相手方の生活への影響。 預金が押さえられると、相手方は生活費や事業資金を引き出せなくなることがある。給料などには差押えが禁止される範囲があるが(民事執行法152条)、預金口座に振り込まれた後の預金については、裁判所に申し立てて差押えの範囲を変更してもらう手続によることになる(民事保全法50条5項が準用する民事執行法153条)。

③ 財産開示などは仮差押えだけでは使えない。 財産開示手続や第三者からの情報取得手続は、執行力のある債務名義の正本を持つ債権者や、一般の先取特権を持つことを証する文書を出した債権者などが、それぞれの要件を満たす場合に使える手続であり(民事執行法197条1項・2項・207条1項・2項)、仮差押命令を得ただけでは使えない。

④ 不当な仮差押えの責任。 被保全権利がなかったなどの理由で仮差押えが不当とされた場合、申立人に故意または過失があれば、相手方に生じた損害を賠償する責任を負う。被保全権利がないとして保全命令が異議などで取り消されたり、本案で敗訴が確定したりした場合には、特段の事情がない限り過失が推認される(最判昭和43年12月24日・民集22巻13号3428頁。仮処分の事案)。発令後の弁済などの事情の変更や、手続上の理由で取り消された場合まで、取消しの事実だけで申立ての時の過失が推認されるわけではない。立てた担保の額が賠償の上限になるわけではない。

⑤ 時効。 仮差押えがあると、その事由が終了した時から6か月を経過するまで時効は完成しない(民法149条)。仮差押えだけでは時効は更新されず、権利を確定させるには、本案の訴えなどで確定判決などを得る必要がある(民法147条2項)。2020年4月1日より前に時効の中断の事由が生じていた場合は、改正前の民法による扱いが残る(平成29年法律第44号附則10条2項)。

議論のある点

議論のある点 保全の必要性がどの程度あれば預金の仮差押えが認められるか、担保の額がどのくらいになるか、ほかの財産を先に押さえるべきかは、事件ごとの判断による。どのような表示なら預金の特定として足りるかも、上の最高裁の決定の後も問題になることがある。担保の額として割合が語られることはあるが、一律の基準はない。

法改正の予定

民事保全法・民事執行法には、2026年10月21日現在、施行前の改正がある(e-Gov 法令検索で未施行の版として掲載。施行日は改正法の附則と政令で定められるので、手続をする時点で確認が必要)。申立ての時点の規定を確認してほしい。

特に相談した方がよい場面

・相手方が預金を引き出して使ってしまいそうだ
・相手方の預金がどの金融機関・支店にあるか分からない
・請求権の有無や金額に争いがある
・担保を用意できるか不安がある
・自分の預金が仮差押えされ、生活費や事業資金が引き出せない
・仮差押えを受けて、解放金の供託や保全異議を検討したい

具体的な事案は、法律事務所、弁護士会の法律相談センターや法テラス等にご相談ください。

相談のタイミング

相手方の財産処分のおそれに気づいたら、すぐに相談するのがよい。預金の仮差押えは、相手方に預金を移される前に申し立てる必要があり、準備(疎明資料・金融機関と支店の特定・担保の資金)に時間がかかる。仮差押えを受けた側も、命令を受け取ったらすぐに相談する。

まとめ

預金の仮差押えは、判決の前に相手方の預金を押さえる手続で、金融機関が識別できる預金の特定(通常は金融機関と支店)、被保全権利と保全の必要性の疎明、担保の用意が必要になる。押さえられるのは送達時点の残高で、保全執行は債権者に命令が送達された日から2週間以内にする。仮差押えだけでは取立ても財産開示などの手続もできず、不当な仮差押えは損害賠償の責任を生ずることがある。

出典

民事保全法4条・12条・13条・14条・20条・21条・22条・37条・43条・50条・51条(e-Gov 法令検索で原文確認・2026-10-21)

民事執行法147条・152条・153条・197条・207条

民法147条・149条

民法の一部を改正する法律(平成29年法律第44号)附則10条

最決平成23年9月20日・民集65巻6号2710頁

最判昭和43年12月24日・民集22巻13号3428頁

最終確認日
2026年10月21日
法令の基準時
2026年10月時点の法令による
出典(外部サイト)
e-Gov 法令検索(デジタル庁)〔外部サイト〕/裁判所ウェブサイト〔外部サイト〕
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