① 仮差押解放金。 仮差押命令には、債務者が供託すれば執行の停止や取消しを受けられる金額(仮差押解放金)が定められる(民事保全法22条1項)。すでに仮差押えが執行されているときは、債務者が解放金を供託したことを証明して、裁判所に執行を取り消してもらう(民事保全法51条1項)。供託しただけで直ちに預金を引き出せるわけではない。金融機関が仮差押えされた預金の額に相当する金銭を供託した場合は、その額の範囲で、債務者が解放金を供託したものとみなされる(民事保全法50条3項)。
② 相手方の生活への影響。 預金が押さえられると、相手方は生活費や事業資金を引き出せなくなることがある。給料などには差押えが禁止される範囲があるが(民事執行法152条)、預金口座に振り込まれた後の預金については、裁判所に申し立てて差押えの範囲を変更してもらう手続によることになる(民事保全法50条5項が準用する民事執行法153条)。
③ 財産開示などは仮差押えだけでは使えない。 財産開示手続や第三者からの情報取得手続は、執行力のある債務名義の正本を持つ債権者や、一般の先取特権を持つことを証する文書を出した債権者などが、それぞれの要件を満たす場合に使える手続であり(民事執行法197条1項・2項・207条1項・2項)、仮差押命令を得ただけでは使えない。
④ 不当な仮差押えの責任。 被保全権利がなかったなどの理由で仮差押えが不当とされた場合、申立人に故意または過失があれば、相手方に生じた損害を賠償する責任を負う。被保全権利がないとして保全命令が異議などで取り消されたり、本案で敗訴が確定したりした場合には、特段の事情がない限り過失が推認される(最判昭和43年12月24日・民集22巻13号3428頁。仮処分の事案)。発令後の弁済などの事情の変更や、手続上の理由で取り消された場合まで、取消しの事実だけで申立ての時の過失が推認されるわけではない。立てた担保の額が賠償の上限になるわけではない。
⑤ 時効。 仮差押えがあると、その事由が終了した時から6か月を経過するまで時効は完成しない(民法149条)。仮差押えだけでは時効は更新されず、権利を確定させるには、本案の訴えなどで確定判決などを得る必要がある(民法147条2項)。2020年4月1日より前に時効の中断の事由が生じていた場合は、改正前の民法による扱いが残る(平成29年法律第44号附則10条2項)。