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弁護士との相性|話しやすさをどう見極めるか

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この記事の要点

  • 弁護士への依頼は委任契約であり、弁護士は委任の趣旨に関する依頼者の意思を尊重して職務を行うものとされている(弁護士職務基本規程22条1項)。依頼者が事情を正直に話し、弁護士の説明に納得できる関係があると、事件を進めやすい。
  • 「相性」は、好き嫌いや話し方の印象だけで判断するのではなく、①不利な事情も含めて話せるか、②質問に答えてもらえるか、③方針について意見を伝えられるかという点で確かめるとよい。
  • 依頼した後に信頼関係が失われた場合、依頼者は委任契約をいつでも解除できる(民法651条1項)。ただし、解除の時期などによっては損害賠償の問題が生じることがあり(同条2項)、費用の精算も問題になる。弁護士を替えても期限は延びないので、替える前に期限と精算の扱いを確かめる。
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問題提起

弁護士に依頼すると、事件が終わるまで、何か月、場合によっては何年も、その弁護士とやり取りを続けることになる。「この弁護士には話しにくい」と感じたまま依頼すると、大事な事情を伝えそびれたり、方針に納得できないまま進んだりするおそれがある。一方で、話しやすいかどうかだけで選ぶと、必要な説明を受けないまま依頼してしまうこともある。「相性」を何で見極めればよいのかを整理しておく。

法律の文言(民法・弁護士職務基本規程)

本人が弁護士と契約して事件の処理を頼む場合、通常は委任契約に当たる。法律相談のように法律行為ではない事務を頼む場合は準委任契約に当たることがあり、準委任にも委任の規定が準用される(民法656条)。国選弁護人の選任や交代は、裁判所が行う別の手続で、この記事の対象ではない。

委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。民法643条(e-Gov法令検索で原文確認)
委任は、各当事者がいつでもその解除をすることができる。民法651条1項(e-Gov法令検索で原文確認)

弁護士職務基本規程は、国会が定めた法律ではなく、日本弁護士連合会が定めた会規で、弁護士はこれに従って職務を行う。

弁護士は、委任の趣旨に関する依頼者の意思を尊重して職務を行うものとする。弁護士職務基本規程22条1項(e-Gov法令検索で原文確認)
弁護士は、事件の受任及び処理に当たり、自由かつ独立の立場を保持するように努める。弁護士職務基本規程20条(e-Gov法令検索で原文確認)
弁護士は、受任した事件について、依頼者との間に信頼関係が失われ、かつ、その回復が困難なときは、その旨を説明し、辞任その他の事案に応じた適切な措置をとらなければならない。弁護士職務基本規程43条(e-Gov法令検索で原文確認)

要件(「相性」を見極める観点)

法律に「相性」の基準があるわけではない。ここでは、上の規定から読み取れる「依頼者と弁護士の関係」に照らして、相談者が確かめておくとよい観点を挙げる。

① 事情を正直に話せるか。 弁護士は、依頼者から得た情報に基づいて、事件の見通しや処理の方法を説明する(弁護士職務基本規程29条1項)。相談者が、自分に不利な事情や恥ずかしいと感じる事情も話せる相手かどうかは、見通しの正確さにつながる。

② 質問に答えてもらえるか。 相談者が分からない点を尋ねたときに、弁護士が説明してくれるかどうかを確かめる。

③ 意見を伝えられるか。 弁護士は、委任の趣旨に関する依頼者の意思を尊重して職務を行うものとされている(同規程22条1項)。相談者が、方針についての希望や不安を伝えられる関係かどうかを確かめる。

④ 言いなりになる関係ではないこと。 弁護士は、事件の受任と処理に当たり、自由かつ独立の立場を保持するように努めるとされている(同規程20条)。依頼者の希望をそのまま受け入れるのではなく、法律や証拠に照らして難しい点を指摘することも、弁護士の役割である。耳の痛い説明をされたことだけで「相性が悪い」と判断しない。

相性を確かめる流れ(よくある例)

1. 相談の前に、相談者が、出来事の経過、聞きたいこと、希望する解決の形をメモにまとめる。
2. 相談の場で、相談者が、メモに沿って事情を話し、不利な事情も伝える。
3. 弁護士の説明を聞き、分からない点を、相談者がその場で質問する。
4. 相談者が、方針についての希望や不安を伝え、弁護士がどのように応じるかを見る。
5. 相談の後、相談者が、説明に納得できたか、この弁護士に事情を話し続けられそうかを振り返り、依頼するかどうかを決める。

実務の視点 相談の後に、「説明の中で分からなかった点」「話しそびれた点」「気になった点」をすぐにメモしておくと、依頼するかどうかを落ち着いて判断できる。依頼するかどうかは、その場で決めなければならないものではない。ただし、期限が迫っている事件では、判断を先延ばしにしすぎないように、期限の有無をその場で弁護士に確かめておく。

確認点・よくある誤解

① 話しやすさと説明の正確さは別の物差し。 話しやすくても、見通し・方法・費用の説明が不十分であれば、依頼の判断材料にはならない。弁護士は、受任するに当たり、事件の見通し、処理の方法、弁護士報酬と費用について、適切な説明をしなければならないとされている(同規程29条1項)。

② 厳しい説明は、相性が悪いことを意味しない。 不利な点を率直に伝えることは、依頼者が判断するための材料である。

③ 依頼した後に信頼関係が失われることもある。 依頼者は、委任契約をいつでも解除できる(民法651条1項)。ただし、解除した者は、①契約の相手方(ここでは弁護士)に不利な時期に解除したとき、②委任者が受任者の利益(専ら報酬を得ることによるものを除く)をも目的とする委任を解除したときは、やむを得ない事由があったときを除き、相手方の損害を賠償しなければならない(同条2項)。弁護士が予定していた報酬を得られなくなるというだけで、当然に損害賠償が必要になるわけではない。

④ 費用の精算は契約書だけで決まるとは限らない。 着手金などの精算は、まず委任契約書の定めを確かめる。ただし、契約条項の有効性、民法の規定(委任が履行の途中で終了したときは、受任者は既にした履行の割合に応じて報酬を請求できる=民法648条3項2号)、報酬の性質、処理の進み具合も関係し、契約書の記載だけで結論が決まるとは限らない。成果に対して支払うと約束した報酬については、別の規定(民法648条の2第2項による634条の準用)が問題になり、単純に作業の割合では決まらない。法テラスの代理援助を利用している場合は、委任契約の解除とは別に、担当弁護士の変更や立替金の扱いについて法テラスの手続や確認が必要になる。支払った報酬、支出済みの実費、使われていない預り金を分けて、精算の明細を確かめる。なお、2020年3月31日以前に結ばれた委任契約には、原則として改正前の民法が適用される(平成29年法律第44号附則34条1項)。

⑤ 弁護士を替えても、期限は延びない。 委任契約を解除したり、新しい弁護士に相談したりしただけでは、時効や裁判の期限は延びない。新しい弁護士が、どの期限の、どの手続を引き受けたのかを確かめる。裁判の途中であれば、代理人の交代に伴う裁判所への届出や記録の引継ぎも必要になる。なお、委任が終わった後でも、急迫の事情があるときは、元の受任者は、委任者が自分で事務を処理できるようになるまで必要な処分をしなければならない(民法654条)。ただし、元の弁護士が対応済みだと思い込まず、誰が何を行うかをすぐに確かめる。

⑥ 弁護士の側から辞任することもある。 弁護士は、依頼者との信頼関係が失われ、その回復が困難なときは、その旨を説明し、辞任その他の適切な措置をとらなければならないとされている(同規程43条)。

議論のある点

議論のある点 依頼した後に「相性が合わない」と感じて弁護士を替える場合に、すでに支払った着手金がどこまで戻るか、解除した依頼者が損害賠償を負うかどうかは、委任契約書の定め、解除の時期、事件の進み具合、解除の理由によって判断が分かれる。一般論だけで判断せず、弁護士に相談してほしい。

特に相談した方がよい場面

・依頼している弁護士に事情を話せず、方針にも納得できないまま事件が進んでいる
・弁護士を替えたいが、期日や期限が近く、引継ぎが間に合うか不安がある
・委任契約を解除した場合の着手金や費用の扱いが分からない
・依頼している弁護士と連絡が取れず、期限のある手続が行われたか確認できない

具体的な事案は、法律事務所、弁護士会の法律相談センターや法テラス等にご相談ください。

相談のタイミング

相性を確かめるのは、依頼する前の相談の段階が適している。相談をしただけでは、時効や裁判の期限は止まらない。期限が迫っている事件では、相性の見極めに時間をかけすぎず、早めに依頼先を決める。依頼した後に弁護士を替えたいと考えたときは、期日や期限の前に余裕をもって、新しい弁護士への相談を始める。

まとめ

弁護士への依頼は委任契約で、依頼者と弁護士の信頼関係が土台になる。相性は好き嫌いではなく、不利な事情も含めて話せるか、質問に答えてもらえるか、方針について意見を伝えられるかで確かめる。依頼後に信頼関係が失われたときは委任契約を解除できるが、時期や精算の問題があるので、替える前に契約書の定めと期限を確かめる。

出典

民法634条・643条・648条・648条の2・651条・654条・656条、平成29年法律第44号附則34条(e-Gov 法令検索で原文確認・2026-10-21)

弁護士職務基本規程20条・22条1項・29条1項・43条(平成16年日本弁護士連合会会規第70号)

最終確認日
2026年10月21日
法令の基準時
2026年10月時点の法令による
出典(外部サイト)
e-Gov 法令検索(デジタル庁)〔外部サイト〕/裁判所ウェブサイト〔外部サイト〕
ご相談
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