問題提起
弁護士に一度相談したが、説明が分かりにくかった、費用が高いように感じた、言われた見通しが本当か不安だ。そのようなとき、別の事務所にも相談して比べたいと考えるのは自然である。比べるときに何を見ればよいか、すでに依頼している弁護士がいる場合はどうすればよいかを整理する。
弁護士に相談する前に知っておきたい法律の要点を、分野ごとにスレッド形式でまとめています。
弁護士に一度相談したが、説明が分かりにくかった、費用が高いように感じた、言われた見通しが本当か不安だ。そのようなとき、別の事務所にも相談して比べたいと考えるのは自然である。比べるときに何を見ればよいか、すでに依頼している弁護士がいる場合はどうすればよいかを整理する。
複数の弁護士に相談することについて定めた法律の条文はない。弁護士の側の決まりとして、日本弁護士連合会の会規である弁護士職務基本規程は次のように定めている。
弁護士は、事件を受任するに当たり、依頼者から得た情報に基づき、事件の見通し、処理の方法並びに弁護士報酬及び費用について、適切な説明をしなければならない。
2 弁護士は、事件について、依頼者に有利な結果となることを請け合い、又は保証してはならない。弁護士職務基本規程29条1項・2項(e-Gov法令検索で原文確認)
弁護士は、他の弁護士等が受任している事件に不当に介入してはならない。弁護士職務基本規程72条(e-Gov法令検索で原文確認)
見る点|確かめること
見通し|どのような結果がありうるか。不利な点やリスクを説明しているか。
進め方|交渉・調停・訴訟などのどれを、どの順で考えているか。その理由。
費用|着手金・報酬金の計算方法、実費・日当、追加でかかる場面、総額の目安。同じ前提(同じ請求額・同じ手続の範囲)で比べているか。
期間|解決までのおおよその期間。
説明|専門用語をかみくだいて説明しているか。質問に答えてくれるか。
連絡|担当する弁護士が誰か、連絡の方法と頻度。
実務の視点 相談のたびに、事件の経過をまとめた同じメモと同じ資料を持参すると、相談先ごとの説明を同じ前提で比べやすい。相談後に、それぞれの説明の要点(見通し・進め方・費用)を書き留めておくとよい。見積りは書面でもらえるか尋ねる。
1. 相談したい人が、相談先を2〜3か所程度選ぶ。
2. 相談したい人が、それぞれに相手方の氏名・名称を伝えて相談を申し込む。
3. 相談したい人が、同じメモ・同じ資料で相談し、見通し・進め方・費用を尋ねる。
4. 相談した人が、説明を比べて依頼先を決める。相談だけで事件の処理まで頼んでいない相談先には、相談料を精算し、必要に応じて依頼しない旨を伝える。すでに依頼の合意をしている場合は、委任契約書に署名していなくても契約が成立していることがあり、契約の終了と費用の精算が必要になる。
5. 依頼する場合は、弁護士報酬に関する事項を含む委任契約書を作る(弁護士職務基本規程30条1項)。
・依頼している弁護士の方針に不安があるときは、まずその弁護士に疑問を伝え、説明を求める。
・別の弁護士の意見を聞くこともできる。そのときは、依頼している弁護士がいること、これまでの経過、手元の資料を伝える。
・依頼する弁護士を替える(委任契約を解除する)場合は、それまでの費用の精算、書類の引継ぎ、進行中の手続の期限の管理に注意する。民法上、委任は各当事者がいつでも解除できる(民法651条1項)。ただし、解除した者は、相手方に不利な時期に解除したときなどには、やむを得ない事由があったときを除き、相手方の損害を賠償しなければならない(同条2項)。依頼者が委任契約を解除したときの弁護士報酬の精算は、まず委任契約書の定めを確かめる。ただし、契約書の定めがそのまま常に有効になるとは限らず、業務の進み具合や法律の規定によって判断されることがある。精算に疑問があるときは、内訳と計算の根拠の説明を求める。
① 複数の相談先に相談したことを伝える義務はない。 ただし、別の弁護士の意見との違いを尋ねると、説明の根拠が分かりやすくなることがある。
② 相談料はそれぞれにかかる。 無料相談の範囲は相談先ごとに違う。
③ 相談先によっては、利益相反で相談や依頼を受けてもらえないことがある。 相手方がすでにその弁護士に相談し、相談の内容や程度から弁護士法25条1号・2号に当たる場合は、その弁護士には依頼できない。単なる問い合わせや予約だけで当然に依頼できなくなるわけではない。逆に、自分が相談した弁護士が、同じ事件で相手方の依頼を受けられなくなることもある。
④ 費用の安さだけで選ばない。 費用の項目や範囲が違えば、単純に比べられない。
・依頼中の弁護士の説明や方針に納得できない
・弁護士から示された見通しが楽観的すぎる、または悲観的すぎると感じる
・弁護士を替えたいが、進行中の裁判や期限が心配
・見積りの項目が事務所ごとに違い、比べられない
具体的な事案は、法律事務所、弁護士会の法律相談センターや法テラス等にご相談ください。
比べる時間は、期限に間に合う範囲にとどめる。期限が迫っている問題では、比べることにこだわらず、早く依頼先を決める。相談の予約、比べるための相談、弁護士の交代をしているだけでは、期限は止まらない。依頼中の弁護士を替える場合は、裁判の期日や提出の期限の前に余裕をもって相談する。
依頼の前に複数の弁護士・法律事務所に相談して比べることができる。見通し・進め方・費用・説明の分かりやすさ・連絡の取り方を、同じ前提で比べる。依頼中の弁護士がいる場合も別の弁護士の意見を聞けるが、弁護士を替えるときは費用の精算や手続の期限に注意する。
出典
弁護士法25条、民法651条(e-Gov 法令検索で原文確認・2026-10-19)
弁護士職務基本規程29条1項・2項・30条1項・72条(日本弁護士連合会会規)