問題提起
被害者参加制度で刑事裁判に参加することになったが、尋問や意見の準備を弁護士に頼みたい。けれども、弁護士費用を払う余裕がない――そのような被害者参加人のために、国の費用で弁護士を付ける制度がある。
弁護士に相談する前に知っておきたい法律の要点を、分野ごとにスレッド形式でまとめています。
被害者参加制度で刑事裁判に参加することになったが、尋問や意見の準備を弁護士に頼みたい。けれども、弁護士費用を払う余裕がない――そのような被害者参加人のために、国の費用で弁護士を付ける制度がある。
刑事訴訟法第三百十六条の三十四から第三百十六条の三十八までに規定する行為を弁護士に委託しようとする被害者参加人であって、その資力(その者に属する現金、預金その他政令で定めるこれらに準ずる資産の合計額をいう。以下同じ。)から、手続への参加を許された刑事被告事件に係る犯罪行為により生じた負傷又は疾病の療養に要する費用その他の当該犯罪行為を原因として請求の日から六月以内に支出することとなると認められる費用の額(以下「療養費等の額」という。)を控除した額が基準額(……政令で定める額をいう。以下同じ。)に満たないものは、当該被告事件の係属する裁判所に対し、被害者参加弁護士を選定することを請求することができる。犯罪被害者保護法11条1項。一部省略(e-Gov法令検索で原文確認)
前項の規定による請求は、日本司法支援センターを経由してしなければならない。犯罪被害者保護法11条2項前段(e-Gov法令検索で原文確認)
① 被害者参加人であること。 刑事裁判への参加を裁判所から許された被害者参加人で(刑事訴訟法316条の33)、公判期日への出席や尋問・質問・意見の陳述(刑事訴訟法316条の34〜316条の38)を弁護士に委託しようとする人である。
② 資力が基準額に満たないこと。 資力とは、本人の現金、預金と、政令で定めるこれに準ずる資産(自己宛小切手、農協などへの貯金など。施行令7条)の合計額である。ここから療養費等の額(犯罪によるけがや病気の治療費など、犯罪を原因として請求の日から6か月以内に支出することになると認められる費用)を差し引いた額が、基準額200万円(施行令8条)に満たないことが必要である。
③ 申告書の提出。 請求するときは、資力とその内訳を申告する書面(療養費等の額を差し引く人は、療養費等の額とその内訳も申告する書面)を出す(犯罪被害者保護法11条2項各号)。
1. 被害者参加の許可を受ける(または申出と同時に準備する)。
2. 法テラスに、選定の請求書と資力などの申告書を出す。窓口や書式は法テラスの案内に従う。
3. 法テラスは、裁判所に請求を通知して書面を送り(犯罪被害者保護法11条3項)、請求した人の意見を聴いたうえで、法テラスと契約している弁護士の中から候補を指名して裁判所に通知する(同法12条1項・3項、総合法律支援法30条1項6号ロ・ハ)。
4. 裁判所は、請求が不適法なときや要件に当たらないときなどを除き、被害者参加弁護士を選定する(犯罪被害者保護法13条1項)。
5. 選定は審級ごとにする(同法14条1項)。控訴審でも弁護士の援助を受けたいときは、改めて手続が要る。
実務の視点 法テラスの請求の書式には、弁護士の選定についての要望を書く欄がある(法テラス公式サイト)。被害者支援の経験がある弁護士を希望するなど、要望があれば書いておくとよい。ただし、要望どおりになるとは限らない。
① 費用は国が負担する。 選定された被害者参加弁護士は、国選弁護人と同じ例で旅費・日当・宿泊料・報酬を請求できる(犯罪被害者保護法14条4項・5項)。被害者参加人がこれらを支払う仕組みではない。
② 虚偽の申告には制裁がある。 裁判所の判断を誤らせる目的で資力や療養費等の額について虚偽の書面を出すと10万円以下の過料に処せられ(同法16条)、その結果判断を誤らせたときは、裁判所は弁護士に支給した費用の全部または一部を徴収できる(同法17条1項)。この徴収の決定には即時抗告ができる(同条2項)が、期間は短いので、決定を受けたらすぐに弁護士に相談する。
③ 選定が取り消されることがある。 被害者参加人が、被害者参加として行う行為(刑事訴訟法316条の34〜316条の38の行為)を自分で別の弁護士に委託したことなどで国選の弁護士に職務を行わせる必要がなくなったとき、被害者参加人と弁護士の利益が相反するとき、弁護士が職務を行えないときなどには、裁判所は選定を取り消すことができる(同法15条1項)。損害賠償の請求など別の事項を別の弁護士に依頼しただけで、当然に取り消されるわけではない。利益相反や職務を行えないことなどを理由に取り消したときは、裁判所は改めて被害者参加弁護士を選定する(同条2項)。
④ 刑事裁判以外の支援は別の制度。 被害者参加弁護士は刑事裁判への参加の援助である。捜査段階の対応や損害賠償の請求などには、法テラスの「犯罪被害者等法律援助」など別の制度がある。この援助には、対象となる犯罪の種類、被害の時期(2026年1月13日以降の被害が対象)、資力などの要件があり、国選被害者参加弁護士とは要件が違う(法テラス公式サイト)。どの制度も使えないと思われる場合も、法テラスなどに相談するとよい。
議論のある点 療養費等の額としてどこまでの支出を差し引けるか、選定の取消し事由に当たるかは、事情によって判断が分かれることがある。一般論だけで判断せず、弁護士や法テラスに相談してほしい。
情報通信技術を使う手続の整備により、申告を電磁的記録でもできるように改める規定が設けられている(犯罪被害者保護法16条・17条ほか。e-Gov 法令検索では2027年3月31日施行の未施行の版として掲載)。資力の要件そのものの変更は見当たらない。
・被害者参加をしたいが、弁護士費用を払う余裕がない
・治療費などの支出が続いていて、資力の要件に当たるか分からない
・刑事裁判のほかに、損害賠償や加害者との交渉も考えている
具体的な事案は、法律事務所、弁護士会の法律相談センターや法テラス等にご相談ください。
被害者参加の申出を考えた段階で、法テラス(犯罪被害者支援ダイヤルなど)に相談する。公判の日程が決まってからでは、弁護士との打合せの時間が足りなくなることがある。
国選被害者参加弁護士は、被害者参加人の資力から、その事件の犯罪を原因として請求の日から6か月以内に支出することになると認められる治療費などの費用を差し引いた額が200万円に満たない場合に、国の費用で弁護士を付ける制度である。請求は法テラスを経由して行い、裁判所が選定する。虚偽の申告には制裁があるので、資力は正確に申告する。
出典
犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律11条〜17条、同法施行令7条・8条(e-Gov 法令検索で原文確認・2026-10-20。未施行の改正も確認)
総合法律支援法30条1項6号
刑事訴訟法316条の33〜316条の38
法テラス公式サイト「『被害者参加人』のための国選弁護制度」「犯罪被害者等法律援助(犯罪被害者等支援弁護士制度)」(2026-10-20確認)