問題提起
法律相談では、聞き慣れない言葉や手続の名前が次々に出てくる。説明を受けたその場では分かったつもりでも、帰宅してから「結局どうすればよいのか」「費用はいくらかかるのか」が分からなくなることは珍しくない。弁護士にはどのような説明が求められていて、相談者は何を確かめればよいのかを知っておくと、初回相談で依頼先を判断しやすくなる。
弁護士に相談する前に知っておきたい法律の要点を、分野ごとにスレッド形式でまとめています。
法律相談では、聞き慣れない言葉や手続の名前が次々に出てくる。説明を受けたその場では分かったつもりでも、帰宅してから「結局どうすればよいのか」「費用はいくらかかるのか」が分からなくなることは珍しくない。弁護士にはどのような説明が求められていて、相談者は何を確かめればよいのかを知っておくと、初回相談で依頼先を判断しやすくなる。
弁護士職務基本規程は、国会が定めた法律ではなく、日本弁護士連合会が定めた会規で、弁護士はこれに従って職務を行う。
弁護士は、事件を受任するに当たり、依頼者から得た情報に基づき、事件の見通し、処理の方法並びに弁護士報酬及び費用について、適切な説明をしなければならない。弁護士職務基本規程29条1項(e-Gov法令検索で原文確認)
弁護士は、必要に応じ、依頼者に対して、事件の経過及び事件の帰趨に影響を及ぼす事項を報告し、依頼者と協議しながら事件の処理を進めなければならない。弁護士職務基本規程36条(e-Gov法令検索で原文確認)
弁護士は、委任の終了に当たり、事件処理の状況又はその結果に関し、必要に応じ法的助言を付して、依頼者に説明しなければならない。弁護士職務基本規程44条(e-Gov法令検索で原文確認)
受任者は、委任者の請求があるときは、いつでも委任事務の処理の状況を報告し、委任が終了した後は、遅滞なくその経過及び結果を報告しなければならない。民法645条(e-Gov法令検索で原文確認)
① 事件の見通し。 相談者の主張がどの程度認められそうか、争いになりそうな点は何か、どのような結果がありうるか。弁護士の説明は、相談者が伝えた事実と資料に基づくので、相談者が伝えていない事情は見通しに反映されないことがある。
② 処理の方法。 交渉、調停、訴訟など、どの手続で進めるか。それぞれの手続にどのくらいの時間がかかるか。
③ 弁護士報酬と費用。 着手金・報酬金などの弁護士報酬と、印紙代・郵便代などの実費の、それぞれの金額と算定方法、支払の時期。
④ 受任後の報告と協議。 依頼した後も、弁護士は必要に応じて事件の経過や結果に影響する事項を報告し、依頼者と協議しながら進める(弁護士職務基本規程36条)。依頼者は、処理の状況の報告を求めることができる(民法645条)。
1. 相談の前に、相談者が、聞きたいことを優先順に並べてメモにする。
2. 相談の場で、相談者が、弁護士の説明のうち分からない言葉や手続の名前を、その場で質問する。
3. 相談者が、説明された内容を「つまり、〇〇ということですね」と自分の言葉で言い直し、弁護士に確かめる。
4. 相談の終わりに、相談者が、見通し・進め方・費用・次にすること(誰が・いつまでに・何をするか)を確認する。
5. 相談の後、相談者が、説明の内容をメモに整理し、依頼するかどうかを決める。依頼する場合は、委任契約書の内容が説明と一致しているかを確かめる。
実務の視点 初回相談で確かめたい質問の例:「私の主張が認められない可能性があるとすれば、どの点ですか」「どの手続で進めると、どのくらいの期間がかかりますか」「費用は、最初にいくら、終わったときにいくら、ほかに実費はいくらかかりますか」「途中で依頼を終えた場合、着手金や実費はどのように精算されますか」「私が今すぐしなければならないことは何ですか」。説明を受けた内容はメモに残し、依頼する場合は委任契約書の記載と見比べる。
① 分かりやすさと正確さは両方必要。 説明が簡単すぎて、不利な点や例外が抜けていないかにも注意する。分かりやすくするために、見通しの幅が省かれていないかを確かめる。
② 見通しの説明と結果の保証は別。 弁護士は、事件について、依頼者に有利な結果となることを請け合い、または保証してはならないとされている(弁護士職務基本規程29条2項)。「必ず勝てる」「必ず全額回収できる」といった、結果を保証する説明には注意する。根拠とともに有利な見通しを説明すること自体は禁止されていない。
③ 専門用語を尋ねるのは失礼ではない。 相談者が分からない言葉を確かめることは、正確な判断のために必要である。
④ 口頭の説明だけで終わらせない。 依頼する場合、弁護士は、原則として、弁護士報酬に関する事項を含む委任契約書を作成しなければならないとされている(弁護士職務基本規程30条1項)。ただし、法律相談、簡易な書面の作成、顧問契約その他継続的な契約に基づくものであるときなど、合理的な理由があるときは作成を要しない(同条2項)。日本弁護士連合会の「弁護士の報酬に関する規程」にも、委任契約書の作成についての定めがある。顧問契約などで新しい契約書を作らない場合も、既存の契約書の報酬の定めが今回の依頼に及ぶかを確かめる。費用や依頼の範囲は、口頭の説明と書面の記載を見比べる。
⑤ 依頼後の説明も求められる。 依頼した後に経過が分からなくなったときは、処理の状況の報告を求めることができる(民法645条)。
議論のある点 弁護士の説明がどの程度具体的であれば「適切な説明」といえるか、説明が不十分だった場合に弁護士がどのような責任を負うかは、事件の内容、依頼者が伝えた情報、やり取りの記録によって判断が分かれる。結果が期待どおりでなかったことだけで、説明が不十分だったことになるわけではない。一般論だけで判断せず、弁護士に相談してほしい。
・相談を受けたが、見通し・進め方・費用のどれかが分からないまま依頼を求められている
・依頼した後、事件の経過の説明がなく、今どうなっているのか分からない
・委任契約書の記載が、相談のときの説明と違っている
・有利な結果を保証する説明を受け、依頼を強く勧められている
具体的な事案は、法律事務所、弁護士会の法律相談センターや法テラス等にご相談ください。
説明が分かりやすいかは、依頼する前の相談で確かめる。弁護士に相談すること自体には、時効の完成を猶予したり、裁判の期限を延ばしたりする効果はない。また、相談したというだけで、その後の手続や期限の管理まで引き受けてもらえたとは限らない。期限が迫っている事件では、相談の場で期限の有無を最初に確かめ、期限の確認だけを頼むのか、期限内の手続まで頼むのかをはっきりさせ、誰が・いつまでに・何をするかを確認する。
弁護士は、受任に当たって見通し・処理の方法・報酬と費用を適切に説明しなければならず、受任後も必要に応じて報告と協議をすることとされている。初回相談では、この3点が自分に分かる言葉で説明されたかを、質問と言い直しで確かめ、説明の内容をメモに残して委任契約書と見比べる。
出典
民法645条(e-Gov 法令検索で原文確認・2026-10-21)
弁護士職務基本規程29条1項・2項・30条・36条・44条(平成16年日本弁護士連合会会規第70号)
弁護士の報酬に関する規程5条(平成16年日本弁護士連合会会規第68号)