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訴えの提起|訴状に書くことと出す裁判所

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この記事の要点

  • 民事裁判は、原則として訴状を裁判所に提出して起こす(民事訴訟法134条1項)。簡易裁判所では口頭で訴えを起こすこともでき、請求の原因に代えて紛争の要点を明らかにすれば足りる(民事訴訟法271条・272条)。訴状には、当事者と法定代理人、請求の趣旨と原因を必ず記載する(同条2項)。民事訴訟規則は、請求を理由づける事実や重要な証拠なども具体的に記載するよう求めている(民事訴訟規則53条)。
  • 訴状を出す裁判所は、原則として被告の住所地を管轄する裁判所である(民事訴訟法4条)。お金の請求なら義務を履行すべき場所、不法行為なら不法行為があった場所の裁判所にも出せる(民事訴訟法5条1号・9号)。訴訟の目的の価額(訴額)が140万円を超えないときは簡易裁判所、超えるときは原則として地方裁判所が第一審を担当する(裁判所法33条1項1号・24条1号)。訴額は請求書に書く金額と常に同じとは限らない。
  • 訴えを起こすには、請求額に応じた手数料を納める(民事訴訟費用等に関する法律3条・別表)。訴えを起こすと、裁判が終わるまでの間、時効の完成が猶予される(民法147条1項1号)。

期限に注意

訴えを起こすと時効の完成が猶予される。訴えの取下げや却下で権利が確定しないまま手続が終了したときは、その終了の時から6か月を経過するまでの間は時効が完成しない(民法147条1項)。この6か月は、もともとの時効の完成の日がそれより後なら、時効の期間を短くするものではない。時効の完成猶予の効力は訴えを提起した時(訴状が裁判所に届いた時)に生じる(民事訴訟法147条)ので、郵送の場合は発送ではなく到着が基準になる。また、時効の期間そのものは請求の内容によって違い、2020年4月1日より前に生じた債権(原因となる契約などが同日より前の債権を含む)の消滅時効の期間は、原則として改正前の民法による(平成29年法律第44号附則10条4項)。不法行為による損害賠償請求権などには別の経過措置もあるので、古い債権は弁護士に確かめる。期限を過ぎると権利を失ったり手続ができなくなったりすることがあり、いつから数えるか・延ばせるかは事情で変わるので、思い当たる方はできるだけ早く弁護士に確認してほしい。

問題提起

貸したお金を返してもらえない、損害を賠償してもらえない。話し合いでは解決しないので裁判を起こしたい――そのとき、訴状に何を書き、どこの裁判所に出せばよいのか。訴えの提起の基本を整理する。

法律の文言(民事訴訟法134条)

訴えの提起は、訴状を裁判所に提出してしなければならない。
2 訴状には、次に掲げる事項を記載しなければならない。
一 当事者及び法定代理人
二 請求の趣旨及び原因民事訴訟法134条(e-Gov法令検索で原文確認)

要件(訴えを起こすときに必要なこと)

① 訴状の必要的記載事項。 当事者(原告・被告)と法定代理人、請求の趣旨(どのような判決を求めるか。たとえば「被告は原告に〇〇円を支払え」)と請求の原因(請求を特定するのに必要な事実)を記載する(民事訴訟法134条2項)。

② 民事訴訟規則が求める記載。 請求を理由づける事実を具体的に記載し、立証が必要な事由ごとに、関連する重要な事実と証拠を記載する(民事訴訟規則53条1項)。原告またはその代理人の郵便番号と電話番号なども記載する(同条4項)。重要な証拠の写しを添付する(民事訴訟規則55条2項)。

③ 土地管轄(どこの裁判所か)。 原則は被告の普通裁判籍(個人なら住所)の所在地を管轄する裁判所(民事訴訟法4条)。財産権上の訴えは義務履行地、不法行為に関する訴えは不法行為があった地の裁判所などにも出せる(民事訴訟法5条)。当事者が、一定の法律関係に基づく訴えについて、書面(またはその内容を記録した電磁的記録)で合意した裁判所に出すこともできる(民事訴訟法11条。第一審に限る)。契約書に管轄の条項があるときは、ほかの裁判所にも出せる趣旨か、その裁判所だけに限る趣旨かを確かめる。ただし、法令で専属管轄が定められている訴えには、これらの規定は適用されない(民事訴訟法13条1項)。

④ 事物管轄(簡易裁判所か地方裁判所か)。 訴訟の目的の価額が140万円を超えない請求は簡易裁判所(裁判所法33条1項1号。行政事件訴訟を除く)、それ以外は原則として地方裁判所(裁判所法24条1号。人事訴訟などは家庭裁判所)が第一審を担当する。訴額の算定には、複数の請求の合算や附帯の請求(遅延損害金など)の扱いのルールがある(民事訴訟法8条・9条)。訴額を算定できないときや極めて困難なときは、管轄の上では140万円を超えるものとみなされ(民事訴訟法8条2項)、手数料の計算では、財産権上の請求でない請求などは160万円とみなされる(民事訴訟費用等に関する法律4条2項)。不動産に関する訴訟は、140万円以下でも地方裁判所に出せる(同号)。

⑤ 手数料。 訴えの提起には、訴訟の目的の価額に応じた手数料を納める(民事訴訟費用等に関する法律3条・別表)。現在の別表では、価額に応じた額に一定の額が加わり、その一定の額は紙で出すかオンラインで出すかで違う。具体的な額は裁判所の案内で確認する。

訴えの提起の流れ

1. 請求の内容を整理し、証拠を集め、訴状を作る。
2. 管轄のある裁判所に訴状を提出し、手数料を納める。弁護士などの委任を受けた訴訟代理人は、原則としてインターネット(裁判所の電子情報処理組織)を使って提出しなければならない(民事訴訟法132条の11第1項1号)。本人が出す場合は、紙で出すこともオンラインで出すこともできる(民事訴訟法132条の10)。
3. 訴状が審査される。必要的記載事項が欠けているときは、裁判長が相当の期間を定めて補正を命じ(民事訴訟法137条1項)、手数料を納めていないときは、裁判所書記官が相当の期間を定めて納付を命じる(民事訴訟法137条の2第1項)。原告が期間内に補正や納付をしないときは、裁判長が命令で訴状を却下する(民事訴訟法137条2項・137条の2第6項)。
4. 訴状が被告に送達され(民事訴訟法138条1項)、裁判長が口頭弁論の期日を指定して当事者を呼び出す(民事訴訟法139条)。最初の期日は、特別の事由がある場合を除き、訴えの提起から30日以内の日に指定される(民事訴訟規則60条2項)。

実務の視点 訴える前に、相手の正確な住所・氏名(法人なら登記上の本店と代表者)を確かめておくことが大切である。住所が分からなくても、居所や勤務先(就業場所)で送達できる場合がある(民事訴訟法103条)。調査をしても送達すべき場所が分からないときなどは、公示送達(民事訴訟法110条)を検討することになる。証拠は、契約書、領収書、メールやメッセージの記録、写真など、時系列に並べて整理しておくとよい。

確認点・よくある誤解

① 訴額が140万円以下なら原則は簡易裁判所。 ただし、その地方裁判所の管轄区域内にある簡易裁判所の管轄に属する事件は、地方裁判所が相当と認めれば自ら審理することができる(民事訴訟法16条2項。簡易裁判所の専属管轄の場合を除く)。原告が自由に地方裁判所を選べるという意味ではない。60万円以下の金銭の請求には、簡易裁判所の少額訴訟という手続もある(民事訴訟法368条1項)。

② 主張や証拠は適切な時期に出す。 主張や証拠は審理の中で追加できるが、故意または重大な過失で時機に後れて出し、訴訟の完結を遅らせると認められると、却下されることがある(民事訴訟法157条1項)。

③ 訴えを起こしても時効の問題がすべて片付くわけではない。 取下げや却下で手続が終わると、時効の完成猶予は終了の時から6か月までになる(民法147条1項)。確定判決などで権利が確定したときは、時効は新たに進行を始める(同条2項)。請求の一部だけを訴えた場合の残りの部分や、すでに時効が完成している場合の扱いは、別に確認が必要である。

④ 費用の救助。 訴訟の費用を払う資力がない人などには、勝訴の見込みがないとはいえない場合に、裁判所が申立てにより訴訟上の救助をすることがある(民事訴訟法82条1項)。法テラスの民事法律扶助(費用の立替え)とは別の制度である。

議論のある点

議論のある点 金額で表せない請求の価額をどう評価するか、どの事実をどこまで請求の原因として書くか、どの裁判所に出すのが有利か(移送の可能性を含む)は、事件ごとに判断が分かれる。一般論だけで判断せず、弁護士に相談してほしい。

法改正の予定

民事訴訟費用等に関する法律については、手数料の別表の構成などを改める改正がある(e-Gov 法令検索では2028年6月13日施行の未施行の版として掲載)。民事訴訟法134条・137条・138条・139条には、2026年10月20日現在、施行前の改正は見当たらない。この記事は、民事訴訟のIT化の改正(令和4年法律第48号。主な部分は2026年5月21日に施行)の後の規定で説明している。この改正の多くの規定には経過措置があり、2026年5月21日より前に起こされた訴えの事件では、改正前の規定(紙の判決書・調書など)によるものがある(同法附則)。期間の長さなどの中身は同じことが多いが、どちらの規定によるかは裁判所の書類や弁護士に確かめる。

特に相談した方がよい場面

・時効が近いかもしれない請求がある
・相手の住所や正確な名前が分からない
・請求額の計算や証拠の整理に自信がない
・どこの裁判所に出せばよいか分からない
・裁判所から補正や手数料の納付を命じられた、または訴状を却下された(裁判所書記官の手数料の納付命令に対する異議の申立ても、訴状の却下の命令に対する即時抗告も、告知を受けた日から1週間の不変期間内。民事訴訟法137条の2第3項・137条3項・332条)
・相手方に自分の住所や氏名を知られると、生活に著しい支障が生じるおそれがある(住所・氏名などを秘匿する決定を求められる場合がある。民事訴訟法133条)

具体的な事案は、法律事務所、弁護士会の法律相談センターや法テラス等にご相談ください。

相談のタイミング

時効の期間が迫っていそうなときは、すぐに相談する。訴状の準備には証拠の整理を含めて時間がかかるので、裁判を考え始めた段階で相談するとよい。

まとめ

訴えは訴状を裁判所に提出して起こし、訴状には当事者と請求の趣旨・原因を必ず書く。原則は被告の住所地の裁判所で、140万円以下の請求は簡易裁判所、それを超えると地方裁判所が担当する。手数料を納めて訴えを起こすと時効の完成が猶予されるが、取下げなどの場合は猶予が限られる。

出典

民事訴訟法4条・5条・8条・9条・11条・13条・16条・82条・103条・110条・133条・132条の10・132条の11・134条・137条・137条の2・138条・139条・147条・157条・271条・272条・332条・368条(e-Gov 法令検索で原文確認・2026-10-20)

裁判所法24条・33条

民事訴訟費用等に関する法律3条・4条・別表第一・別表第二(2028年6月13日施行予定の改正も確認)

民法147条、民法の一部を改正する法律(平成29年法律第44号)附則10条

民事訴訟法等の一部を改正する法律(令和4年法律第48号)附則

民事訴訟規則53条・55条・60条(裁判所ウェブサイト掲載の2026年5月21日の版で確認)

最終確認日
2026年10月20日
法令の基準時
2026年10月時点の法令による
出典(外部サイト)
e-Gov 法令検索(デジタル庁)〔外部サイト〕/裁判所ウェブサイト〔外部サイト〕
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