問題提起
弁護士を選ぶとき、「経験の長いベテランの方が安心」「若手の方が熱心に動いてくれる」といった印象で迷う人は多い。しかし、経験の長さと事件の扱い方の関係は、一言では決まらない。法律が弁護士に求めていることと、相談の場で経験を確かめる方法を知っておくと、年数の印象だけに頼らずに選びやすくなる。
弁護士に相談する前に知っておきたい法律の要点を、分野ごとにスレッド形式でまとめています。
弁護士を選ぶとき、「経験の長いベテランの方が安心」「若手の方が熱心に動いてくれる」といった印象で迷う人は多い。しかし、経験の長さと事件の扱い方の関係は、一言では決まらない。法律が弁護士に求めていることと、相談の場で経験を確かめる方法を知っておくと、年数の印象だけに頼らずに選びやすくなる。
弁護士は、常に、深い教養の保持と高い品性の陶やに努め、法令及び法律事務に精通しなければならない。弁護士法2条(e-Gov法令検索で原文確認)
司法修習生の修習を終えた者は、弁護士となる資格を有する。弁護士法4条(e-Gov法令検索で原文確認)
弁護士となるには、日本弁護士連合会に備えた弁護士名簿に登録されなければならない。弁護士法8条(e-Gov法令検索で原文確認)
弁護士職務基本規程は、国会が定めた法律ではなく、日本弁護士連合会が定めた会規で、弁護士はこれに従って職務を行う。
弁護士は、教養を深め、法令及び法律事務に精通するため、研鑽に努める。弁護士職務基本規程7条(e-Gov法令検索で原文確認)
弁護士は、事件の処理に当たり、必要な法令の調査を怠ってはならない。
2 弁護士は、事件の処理に当たり、必要かつ可能な事実関係の調査を行うように努める。弁護士職務基本規程37条(e-Gov法令検索で原文確認)
弁護士となる資格は、司法修習生の修習を終えた者のほか、法律で定める例外(弁護士法5条など)によっても得られる。
① 資格と基本的な義務は共通。 弁護士の一般的な資格と業務の範囲は、登録年数で区分されていない。若手もベテランも、弁護士法・弁護士職務基本規程による共通の基本的な職務上の義務を負う。ただし、利益相反のある事件など、個別の事件を扱えない場合はある。
② 事件の種類ごとの経験。 経験年数の合計よりも、相談者の事件と同じ種類の事件(例:相続、離婚、交通事故、労働、債務整理など)をどのくらい扱ってきたかの方が、判断の材料になりやすい。
③ 調査と準備の姿勢。 弁護士は、事件の処理に当たり、必要な法令の調査を怠ってはならず、必要かつ可能な事実関係の調査を行うように努めるとされている(弁護士職務基本規程37条)。経験が長くても短くても、事件に即した調査をするかどうかが大切である。
④ 説明の具体性。 弁護士は、受任に当たり、事件の見通し、処理の方法、報酬と費用を適切に説明しなければならない(同規程29条1項)。説明が具体的で、根拠が示されているかを確かめる。
1. 相談の前に、相談者が、事件の種類と争点をメモにまとめる。
2. 相談の場で、相談者が、「同じような事件をどのくらい扱ったことがありますか」と尋ねる。
3. 相談者が、「この事件ではどのように進めるつもりですか」「どの点が難しいと考えますか」と尋ね、説明の具体性を確かめる。
4. 共同事務所や弁護士法人の場合、相談者が、実際に担当する弁護士と、ほかの弁護士が関わるかどうかを確かめる。
5. 相談者が、説明に納得できたかどうかを振り返り、依頼するかどうかを決める。
実務の視点 「何年目ですか」と尋ねるより、「同じ種類の事件を最近扱いましたか」「似た事件ではどのように進めましたか」と尋ねる方が、相談者の事件に即した経験を確かめやすい。弁護士には守秘義務があるので、他の依頼者の事件の具体的な内容は話せないことがある。答えが一般的な説明にとどまっても、それだけで経験がないと決めつけない。
① 年数と結果は一対一で結びつかない。 事件の結果は、証拠、相手方の反論、裁判所の判断によって変わる。経験の長さで結果が保証されるわけではない。弁護士は、事件について、依頼者に有利な結果となることを請け合い、または保証してはならないとされている(同規程29条2項)。
② 「専門」「実績」の表示は参考の一つ。 日本弁護士連合会の「弁護士等の業務広告に関する規程」は、事実に合致していない広告、誤導または誤認のおそれのある広告、誇大または過度な期待を抱かせる広告などを禁止している(同規程3条)。表示の言葉だけでなく、相談での説明の内容で判断する。
③ 複数の弁護士で担当することもある。 共同事務所や弁護士法人では、経験の異なる弁護士が組んで事件を担当することがある。誰が主に担当し、誰が連絡の窓口になるのかを確かめる。
④ 登録の有無は確かめられる。 依頼しようとする相手が弁護士名簿に登録された弁護士かどうかは、日本弁護士連合会や所属弁護士会の弁護士の検索で、氏名・所属弁護士会を手がかりに確かめられる。検索で見つからないときは、それだけで登録がないと決めつけず、日本弁護士連合会や所属弁護士会に問い合わせる。
議論のある点 どのような経歴・実績の表示が「誤導又は誤認のおそれのある広告」や「誇大又は過度な期待を抱かせる広告」に当たるかは、表示の言葉だけでなく、広告全体の印象や前後の文脈によって判断が分かれる。表示と実際の説明が食い違っていて問題があると感じたときは、一般論だけで判断せず、弁護士会や別の弁護士に相談してほしい。
・相談した弁護士の経験について、表示と説明が食い違っていると感じた
・事件の種類が特殊で、扱った経験のある弁護士を探したい
・依頼した後、担当の弁護士が説明なく替わった
具体的な事案は、法律事務所、弁護士会の法律相談センターや法テラス等にご相談ください。
経験は、依頼する前の相談で確かめる。相談をしたことや、委任契約を結んだことだけで、時効や裁判の期限が止まるわけではない。期限が迫っている事件では、経験の比較に時間をかけすぎず、最初の連絡で期限があることを伝え、届いた書類を示し、期限までに必要な対応を誰が行うのかを確かめる。
弁護士の一般的な資格と基本的な職務上の義務は経験年数で区分されておらず、年数だけで事件の結果や対応の良し悪しは決まらない。相談の場で、同じ種類の事件の経験、進め方の説明の具体性、実際に担当する弁護士を確かめ、経歴・実績の表示は参考の一つにとどめる。
出典
弁護士法2条・4条・5条・8条(e-Gov 法令検索で原文確認・2026-10-21)
弁護士職務基本規程7条・9条1項・29条・37条(平成16年日本弁護士連合会会規第70号)
弁護士等の業務広告に関する規程3条(平成12年日本弁護士連合会会規第44号)