問題提起
法律事務所のウェブサイトやインターネット広告には、「〇〇に強い」「解決実績〇件」「着手金無料」などの言葉が並んでいる。困っているときほど、目立つ言葉に引き寄せられやすい。しかし、弁護士の広告には、日本弁護士連合会(日弁連)の会規による決まりがあり、してはならない広告や、表示してはならない事項が定められている。決まりを知っておくと、広告の言葉を落ち着いて読める。
弁護士に相談する前に知っておきたい法律の要点を、分野ごとにスレッド形式でまとめています。
法律事務所のウェブサイトやインターネット広告には、「〇〇に強い」「解決実績〇件」「着手金無料」などの言葉が並んでいる。困っているときほど、目立つ言葉に引き寄せられやすい。しかし、弁護士の広告には、日本弁護士連合会(日弁連)の会規による決まりがあり、してはならない広告や、表示してはならない事項が定められている。決まりを知っておくと、広告の言葉を落ち着いて読める。
弁護士は、広告又は宣伝をするときは、虚偽又は誤導にわたる情報を提供してはならない。
2 弁護士は、品位を損なう広告又は宣伝をしてはならない。弁護士職務基本規程9条(e-Gov法令検索で原文確認)
弁護士等は、次に掲げる広告をすることができない。
一 事実に合致していない広告
二 誤導又は誤認のおそれのある広告
三 誇大又は過度な期待を抱かせる広告
四 困惑させ、又は過度な不安をあおる広告
五 特定の弁護士、弁護士法人、外国法事務弁護士、外国法事務弁護士法人若しくは弁護士・外国法事務弁護士共同法人又はこれらの事務所と比較した広告
六 法令又は本会若しくは所属弁護士会の会則若しくは会規に違反する広告
七 弁護士等の品位又は信用を損なうおそれのある広告弁護士等の業務広告に関する規程3条(e-Gov法令検索で原文確認)
弁護士等は、次に掲げる事項を表示した広告をすることができない。
一 訴訟の勝訴率
二 顧問先又は依頼者。ただし、顧問先又は依頼者の書面又は電磁的方法による同意がある場合を除く。弁護士等の業務広告に関する規程4条1号・2号。3号・4号は受任中の事件・過去に取り扱った事件についての定め(e-Gov法令検索で原文確認)
① 対象は弁護士・弁護士法人の広告である。 同規程は、弁護士・弁護士法人が、口頭・書面・電磁的方法その他の方法で、自分や自分の業務を他人に知らせるために行う情報の伝達・表示で、顧客や依頼者となるよう誘引することを主な目的とするものを「広告」としている(同規程2条)。事務所のウェブサイトや広告も、これに当たりうる。
② 禁止される広告がある。 事実と違う広告、読む人を誤った理解に導くおそれのある広告、誇大な広告や過度な期待を抱かせる広告、困惑させたり過度な不安をあおったりする広告、特定の弁護士・弁護士法人やその事務所と比較した広告などは、弁護士・弁護士法人がしてはならない(同規程3条)。
③ 表示してはならない事項がある。 弁護士・弁護士法人は、訴訟の勝訴率を広告に表示してはならない。顧問先や依頼者(名前を伏せても特定できる表示を含む)、受任中の事件、過去に取り扱い、または関与した事件も、依頼者などの書面または電磁的方法による同意がある場合などを除き、表示してはならない。受任中の事件は依頼者が特定されず、かつ依頼者の利益を損なうおそれがない場合、過去の事件は広く一般に知られている場合や依頼者が特定されず、かつ依頼者の利益を損なうおそれがない場合も除かれる(同規程4条2号〜4号)。
④ 表示しなければならない事項がある。 弁護士の広告には、弁護士の氏名と所属弁護士会を表示しなければならない(同規程9条1項)。弁護士法人の広告には、名称、法律事務所の名称、所属弁護士会を表示しなければならない(同条2項)。電話や電子メールなどの通信手段で法律事務を受任する場合について広告をするときは、広告に、受任する法律事務の範囲、報酬の種類・金額・算定方法・支払時期、委任契約の解除ができることと中途で終了した場合の清算方法も表示しなければならない(同規程9条の2)。
⑤ 違反には弁護士会が対応する。 弁護士会は、所属の弁護士に広告に関する調査をし、違反があれば違反行為の中止・排除などを命じることができる(同規程12条)。
1. 相談したい人が、ウェブサイトや広告で、弁護士の氏名・所属弁護士会・事務所の所在地を確かめる。実在する弁護士や事務所の名前をかたる偽の広告もあるため、日本弁護士連合会の弁護士情報検索や所属弁護士会で登録情報と連絡先を照らし合わせ、疑わしいときは広告とは別に調べた連絡先に問い合わせる。
2. 取扱分野や費用の表示を読み、分からない点を書き出しておく。
3. 法律相談を申し込み、相談の場で、自分の事件についての見通し、処理の方法、弁護士報酬と費用を尋ねる。弁護士は、事件を受任するに当たり、これらについて適切な説明をしなければならないとされている(弁護士職務基本規程29条1項)。
4. 説明に納得できれば委任契約を結ぶ。納得できなければ、その場で依頼を決めず、他の弁護士に相談することもできる。
実務の視点 広告の画面は後で変わることがある。依頼を決める判断材料にした広告(費用の表示など)は、画面を保存したり印刷したりして日付とともに残しておくと、後で説明と食い違ったときに確かめやすい。依頼するときは、広告の表示や相談で受けた説明と、委任契約書の記載が合っているかも確かめる。
① 「実績〇件」は自分の事件の結果を示さない。 事件の結果は、証拠や相手方の対応など個別の事情で大きく変わる。弁護士は、依頼者に有利な結果となることを請け合ったり保証したりしてはならないとされている(弁護士職務基本規程29条2項)。
② 「無料」の範囲を確かめる。 「相談料無料」「着手金無料」と表示されていても、報酬金・実費・日当などの他の費用がかかる場合がある。どの費用がいくらかかるかは、相談の場と委任契約書で確かめる。
③ 広告の多さは能力の目安にならない。 広告の量や検索結果の順位は、広告費のかけ方などで変わる。弁護士の能力や自分の事件との相性を示すものではない。
④ 紹介サイト・比較サイトにも注意する。 弁護士または弁護士法人でない者が、報酬を得る目的で、法律事件に関する法律事務の取扱いの周旋などを業とすることは、法律に別段の定めがある場合を除き禁止されている(弁護士法72条)。掲載料を取る紹介・検索サイトがすべて違法というわけではないが、弁護士が依頼者の紹介を受けた対価を支払うことも禁止されている(弁護士職務基本規程13条1項)。サイトの運営者が誰で、どのような仕組みで弁護士を載せているのかを確かめる。
議論のある点 どのような表示が「誤導又は誤認のおそれのある広告」や「誇大又は過度な期待を抱かせる広告」に当たるかは、表示の言葉だけでなく、広告全体の印象や前後の文脈で判断が分かれる。「専門」の表示については、日弁連が業務広告に関する指針で取扱いを示しており、個別の表示が許されるかどうかもこれに照らして判断される。広告の表示と実際の説明が食い違っていて問題があると感じたときは、一般論だけで判断せず、弁護士会や別の弁護士に相談してほしい。
・広告に書かれていた費用と、契約の際に示された費用が大きく違う
・「必ず勝てる」「確実に取り戻せる」などと言われて依頼を急かされた
・弁護士ではない業者から、弁護士を紹介すると言われて費用を求められた
・弁護士本人と話せないまま、着手金などの振込みを急かされた
具体的な事案は、法律事務所、弁護士会の法律相談センターや法テラス等にご相談ください。
広告を見て依頼を考えたら、依頼を決める前に、見通しと費用の説明を受けて内容を確かめる。契約書への署名の前でも、口頭やメールのやり取りで依頼と承諾がそろえば委任契約が成立することがある(民法522条2項・643条)。期限が迫っている事件(時効・控訴期限など)がある場合は、広告の比較に時間をかけすぎず、早めにどこかの窓口で相談する。相談の予約や法律相談をしただけでは、時効や裁判の期限は止まらない。契約した後で広告と説明の食い違いに気づいたときも、相談できる。
弁護士の広告には、日弁連の会規で、禁止される広告(事実と違う広告、誤認のおそれ、誇大な広告、比較広告など)と、表示してはならない事項(勝訴率など)が定められている。広告は弁護士を知るきっかけにすぎず、依頼するかどうかは、相談の場での見通し・方針・費用の説明を確かめて決める。
出典
弁護士法72条(e-Gov 法令検索で原文確認・2026-10-19)
弁護士職務基本規程9条・13条・29条(平成16年日本弁護士連合会会規第70号)
弁護士等の業務広告に関する規程2条・3条・4条・9条・9条の2・12条(平成12年日本弁護士連合会会規第44号。令和7年12月5日改正後のもの)