問題提起
依頼している弁護士の方針に不安があっても、「ほかの弁護士に聞くのは失礼ではないか」「今の弁護士に知られたらどうなるか」とためらう人は多い。別の弁護士の意見を聞くことは、依頼者に認められた選択肢である。上手に使うための手順と注意点を知っておくとよい。
弁護士に相談する前に知っておきたい法律の要点を、分野ごとにスレッド形式でまとめています。
依頼している弁護士の方針に不安があっても、「ほかの弁護士に聞くのは失礼ではないか」「今の弁護士に知られたらどうなるか」とためらう人は多い。別の弁護士の意見を聞くことは、依頼者に認められた選択肢である。上手に使うための手順と注意点を知っておくとよい。
弁護士は、受任している事件について、依頼者が他の弁護士又は弁護士法人に依頼をしようとするときは、正当な理由なく、これを妨げてはならない。弁護士職務基本規程40条(e-Gov法令検索で原文確認)
弁護士は、他の弁護士等が受任している事件に不当に介入してはならない。弁護士職務基本規程72条(e-Gov法令検索で原文確認)
委任は、各当事者がいつでもその解除をすることができる。民法651条1項(e-Gov法令検索で原文確認)
① 依頼中でも別の弁護士の意見を聞ける。 依頼者が、依頼中の事件について別の弁護士に相談すること自体を禁じる規定はない。弁護士は、依頼者が他の弁護士に依頼しようとするときに、正当な理由なくこれを妨げてはならない(弁護士職務基本規程40条)。
② 相談を受けた弁護士は「不当な介入」をしない。 弁護士は、他の弁護士が受任している事件に不当に介入してはならない(弁護士職務基本規程72条)。禁止されているのは「不当な」介入であり、相談に応じて今の方針の評価や別の選択肢について意見を述べることが、それだけで不当な介入に当たるわけではない。相談だけを頼んだ場合と、交渉などの代理まで頼んだ場合は別であり、相談を受けただけの弁護士が相手方と交渉を始めることはない。共同で依頼したい、交代したいと考えるときは、その可否と必要な調整を確かめる。
③ 判断の材料をそろえる。 別の弁護士が意見を述べるには、事件の資料が必要である。委任契約書、相手方や裁判所とやり取りした書面、今の弁護士から受けた説明の記録、これまでの経過のメモをそろえる。資料が少ないと、一般的な意見しか聞けない。
④ 聞いた後にどうするかは依頼者が決める。 意見を聞いたうえで、今の弁護士に疑問を伝えて説明を求めることも、今の弁護士との委任契約を解除して別の弁護士に依頼し直すこともできる(民法651条1項)。ただし、いつでも解除できることと、負担なく解除できることは別である。着手金などの清算は、委任契約書の定め、それまでの仕事の程度、終了の理由などによって変わる。また、相手に不利な時期に解除したときなどは、報酬の清算とは別に、やむを得ない事由がない限り損害の賠償が問題になる(同条2項)。依頼し直すときは、清算や記録の引継ぎをどうするかを確かめる。この説明は、依頼者が自分で弁護士と委任契約を結んだ場合のものである。刑事事件の国選弁護人のように裁判所が選任する弁護士は、委任契約の解除によって自由に交代できる仕組みではない。
⑤ 費用は相談料がかかるのが通常である。 セカンドオピニオンの相談料は、相談を受ける弁護士や窓口によって違う。法テラスの公式サイトは、法テラスの立替制度を利用して弁護士に依頼している事件について、別の弁護士の意見を聞くために法テラスの無料法律相談を利用することはできず、有料相談などを検討するよう案内している(2026年10月20日確認。依頼中の事件とは全く別の問題であれば利用できる場合がある)。
1. 今の弁護士の方針のうち、どこに不安があるのかを書き出す(例:「和解を勧められているが、金額が低いのではないか」)。
2. 委任契約書、書面のやり取り、経過のメモをそろえる。
3. セカンドオピニオンの相談を受けてくれる弁護士に、依頼中の事件についての相談であることを伝えて予約する。
4. 意見を聞いたら、今の弁護士に疑問を伝えて説明を求めるか、弁護士を替えるかを考える。
5. 弁護士を替えると決めたら、今の弁護士との委任契約の解除、費用の清算、記録の引継ぎを確かめる。裁判中であれば、新しい弁護士の委任状の提出、裁判所や相手方への連絡、書類の送り先、次の期日や提出期限の担当を確かめる。
6. 法テラスの立替制度を使っている場合は、替える前に、受任している弁護士と法テラスの地方事務所に連絡し、援助の扱い(新しい弁護士にも援助を使えるか、前の弁護士の報酬の扱い、立替金の返済)を確かめる。今の援助がそのまま新しい弁護士に引き継がれるとは限らない。
実務の視点 セカンドオピニオンの相談では、「結論として何を聞きたいか」を最初に伝えると、限られた時間を有効に使える。予約のときは、利益相反を確かめるために相手方の名前も伝える。相談を受けた弁護士にも守秘義務がある(弁護士法23条)ので、今の弁護士に連絡してほしくない場合は、そのことも伝えておく。今の弁護士に別の弁護士の意見を聞いたことを伝えるかどうかは依頼者が決めてよいが、聞いた意見をきっかけに今の弁護士と率直に話し合うと、誤解が解けることも多い。
① 別の弁護士の意見が正しいとは限らない。 別の弁護士は、今の弁護士が持っている全部の情報や、相手方とのやり取りの細かな経過を知らないまま意見を述べることが多い。意見が分かれたら、何が違うのか(事実の前提か、見通しか、方針か)を確かめる。
② 期日や期限が迫っているときは注意する。 弁護士を替えるかどうか迷っている間も、裁判の期日や期限は進む。期限が近いときは、別の弁護士の予約を待つだけでなく、今の弁護士に期限と必要な対応を直ちに確かめ、誰が手続をするかをはっきりさせる。
③ 今の弁護士に資料の写しを求めることができる。 手元に資料がないときは、今の弁護士に、事件の書面の写しを求めることができる。資料の種類によっては、交付できる範囲や方法に制限があることもあるので、範囲・方法・費用を確かめる。
議論のある点 相談を受けた弁護士の関わり方が、どこまでなら意見を述べる範囲で、どこからが他の弁護士の事件への「不当な介入」(弁護士職務基本規程72条)に当たるかは、関わり方や事情によって判断が分かれる。また、弁護士を替えたときに、すでに支払った着手金をどこまで清算できるかは、委任契約書の定めとそれまでの仕事の程度によって変わる。一般論だけで判断せず、弁護士に相談してほしい。
・和解や示談を勧められているが、その内容で決めてよいか分からない
・今の弁護士から事件の経過の説明を十分に受けられない
・弁護士を替えたいが、費用の清算や記録の引継ぎが心配である
・判決が出て、控訴するかどうかを決める期限が近い
具体的な事案は、法律事務所、弁護士会の法律相談センターや法テラス等にご相談ください。
和解や示談に応じる前、控訴などの期限が切れる前のように、後で取り返しがつかなくなる判断の前にセカンドオピニオンを聞くとよい。期限が近いときは、別の弁護士の予約を急ぎ、相談の冒頭で期限を伝える。
依頼中の事件でも、別の弁護士の意見を聞くことはでき、弁護士は依頼者が他の弁護士に依頼しようとするのを正当な理由なく妨げてはならない(弁護士職務基本規程40条)。相談を受けた弁護士は他の弁護士の事件に不当に介入してはならない(同規程72条)が、相談に応じて意見を述べることがそれだけで不当な介入になるわけではない。意見を聞いた後にどうするかは依頼者が決めるが、交代するときは清算・引継ぎ・期限を確かめる。資料をそろえ、期限に注意して相談する。
出典
弁護士法23条、民法651条(e-Gov 法令検索で原文確認・2026-10-20)
弁護士職務基本規程40条・72条(平成16年日本弁護士連合会会規第70号)
日本司法支援センター(法テラス)公式サイト「無料法律相談に関するよくあるご質問」(2026-10-20確認)