問題提起
弁護士に依頼したいが、着手金などをまとめて払えない――そのような人のために、法テラスには弁護士費用を立て替える制度がある。立て替えてもらった費用は返す必要があるが、分割で返すことができる。仕組みを知っておくと、依頼をあきらめずに済むことがある。
弁護士に相談する前に知っておきたい法律の要点を、分野ごとにスレッド形式でまとめています。
弁護士に依頼したいが、着手金などをまとめて払えない――そのような人のために、法テラスには弁護士費用を立て替える制度がある。立て替えてもらった費用は返す必要があるが、分割で返すことができる。仕組みを知っておくと、依頼をあきらめずに済むことがある。
イ 次の(1)又は(2)に掲げる場合の区分に応じ、それぞれ(1)又は(2)に定める手続の準備及び追行(民事裁判等手続に先立つ和解の交渉で特に必要と認められるものを含む。)のため代理人に支払うべき報酬及びその代理人が行う事務の処理に必要な実費の立替えをすること。総合法律支援法30条1項2号イ(e-Gov法令検索で原文確認)
代理援助及び書類等作成援助は、次の各号に掲げる要件のいずれにも該当する場合に行う。
一 申込者が、別表1の代理援助及び書類等作成援助資力基準に定める資力に乏しい国民等であること。
(中略)
二 勝訴の見込みがないとはいえないこと。
三 民事法律扶助の趣旨に適すること。日本司法支援センター業務方法書9条(e-Gov法令検索で原文確認)
⓪ 使える人。 民事法律扶助の対象は、原則として、日本の国民、または日本に住所を有し適法に在留する人(国民等)である(総合法律支援法30条1項2号)。法人や団体は対象にならない。国際的な子の連れ去りに関する手続(ハーグ条約に関する事件)には、国民等とみなされる外国人についての特則がある(業務方法書25条2項参照)。
① 資力の基準を満たすこと。 申込者と配偶者の手取り月収(賞与を含む)の合計と、資産(不動産や有価証券なども含む)が、家族の人数に応じた基準以下であることが必要である(業務方法書9条1号・別表1)。配偶者が事件の相手方であるときは、配偶者の収入や資産は合計しない。収入の基準額は、住んでいる地域(一級地は10%加算)、家賃・住宅ローンの負担によって上がり、医療費・教育費などで生計が困難なときは基準を満たすものとして扱われることもある(別表1第1)。生活のために必要な住宅や、事件で争っている物件は資産から除く(別表1第2の1)。
② 勝訴の見込みがないとはいえないこと。 業務方法書9条2号の要件である。法テラスの公式サイトは、自己破産であれば免責の見込みがあること、離婚であれば離婚成立の見込みがあることなど、問題が解決する見込みがあることが必要であると説明し、和解・調停・示談などで紛争を解決する見込みがあるものも含むとしている。
③ 民事法律扶助の趣旨に適すること。 業務方法書9条3号の要件である。法テラスの公式サイトは、報復目的や自己宣伝、権利濫用的な訴訟などは援助できず、極端に訴額が少ない訴訟や回収の可能性がない場合も費用対効果の観点から援助できないと説明している。お金の回収を目的とする事件では、回収の見通しも審査で確かめられるが、事件の性質や目的も含めて判断される。
④ 立て替える費用。 法テラスが立て替える費用は、代理援助に係る報酬(着手金と報酬金)と実費などである(業務方法書11条)。額は、法テラスが定める立替基準によって、事件の種類や内容に応じて決まる(業務方法書12条・別表3)。法テラスの公式サイトは、原則として実費だけを立て替えることはできないこと、自己破産事件の予納金は生活保護を受けている人を除き立替えの対象にならないことを案内している。自己破産で裁判所に納める費用のうちどれが立替えの対象になるかは、依頼する弁護士に確かめる。
⑤ 返し方。 立て替えた費用は、援助開始決定の後、法テラスが指定した金額を、原則として自動払込などの方法で分割して返す(業務方法書30条3項)。事件の結果、相手方などから金銭を得たときは、その金銭から報酬金を差し引いた残りを、立替金の額に達するまで(すでに返した分を除いた残りの額まで)、立替金の返済に充てなければならない(業務方法書60条1項)。即時に全額を返すことが相当でない事情があるときは、返済に充てる額が減らされることがある(同条2項)。これは返済に充てる額の調整で、立替金の返済そのものを免除するものではない。
⑥ 生活保護を受けている人などの扱い。 生活保護を受けている人、またはそれに準ずる程度に生計が困難な人は、申請により、事件が終わるまでの返済の猶予を受けられることがある(業務方法書31条1項)。事件が終わった後に生活保護を受けているとき、またはそれに準ずる程度に生計が困難で将来も資力を回復する見込みに乏しいときは、返済の免除を申請できる(業務方法書65条1項。相手方から金銭を得た場合などの例外がある)。猶予と免除は要件が違い、申請すれば必ず認められるわけではない。返済が難しくなったときは、放置せず法テラスに相談する。
1. 法テラスと契約している弁護士・司法書士に相談し(法テラスの無料法律相談でもよい)、依頼が必要か、代理援助を使えそうかを確かめる。司法書士が代理人になれる事件には法律上の範囲がある(司法書士法3条1項6号・2項)。すでに自分で費用を払って契約した場合、その費用が当然に援助に切り替わるわけではないので、使いたいときは契約や支払の前に伝える。
2. 依頼したい弁護士・司法書士を通じて、援助申込書と、住民票・収入の資料などの書類を出す。
3. 法テラスの地方事務所で審査を受ける。
4. 援助開始決定が出たら、決定書・契約書・返済の案内を確かめ、契約書に署名して出す。
5. 弁護士・司法書士が事件の処理を始め、利用者は立て替えられた費用の返済を始める。
6. 事件が終わったら、結果に応じて報酬金と返済の方法が決まる。
実務の視点 代理援助を使うときは、弁護士などに支払う費用は法テラスの立替基準で決まり、依頼者と弁護士が自由に決めるわけではない。代理援助を受任した弁護士などは、事件の処理に関して、被援助者から金銭その他の利益を受けてはならない(業務方法書45条本文。特別の事情があり、法テラスの地方事務所長の承認を得た場合を除く)。費用のことで分からない点は、受任した弁護士か法テラスに尋ねる。
① 「無料になる」制度ではない。 代理援助は立替えの制度で、生活保護による猶予・免除などの場合を除き、立て替えられた費用は返す必要がある。
② 審査がある。 相談した弁護士が引き受けてくれても、代理援助を使えるかどうかは法テラスの審査で決まる。
③ 刑事事件には使えない。 代理援助の対象は、裁判所での民事・家事・行政事件の手続と、その前の和解の交渉などである(業務方法書8条1項)。刑事事件の弁護には、国選弁護などの別の制度がある。
議論のある点 「勝訴の見込みがないとはいえない」「民事法律扶助の趣旨に適する」に当たるかは、事件ごとに法テラスの審査で判断される。立替金の返済の猶予・免除が認められるか、相手方から得た金銭のうちどれだけを返済に充てるかも、事情によって判断が分かれる(業務方法書60条2項・65条)。一般論だけで判断せず、弁護士や法テラスに相談してほしい。
・弁護士に依頼したいが、着手金をまとめて払えない
・生活保護を受けていて、弁護士費用をどうすればよいか分からない
・相手方から金銭を受け取る見込みがあり、返済との関係が気になる
・代理援助を使えるか、審査に通るか不安がある
・返済が始まった後に、失業や病気で返済が難しくなった
具体的な事案は、法律事務所、弁護士会の法律相談センターや法テラス等にご相談ください。
代理援助の審査には時間がかかる。法テラスの公式サイトは、通常、申込みから決定まで2週間程度かかり、書類の不備や時期によってはさらに時間がかかると案内している。この期間は目安で、その間の権利を守ってくれる期間ではない。法テラスへの相談や援助の申込みをしただけでは、時効や裁判所の期限は止まらない。期限が迫っているときは、相談の冒頭で書類と期限を伝え、援助の決定の前に誰がいつまでに何をするかを確かめる。
代理援助は、資力の乏しい人などが弁護士・司法書士に事件を依頼するときの報酬と実費を法テラスが立て替える制度で、資力・勝訴の見込み・扶助の趣旨の三つの要件と審査がある(業務方法書9条)。立て替えた費用は原則として分割で返し、生活保護を受けている人などは猶予・免除を申請できる。
出典
総合法律支援法30条、司法書士法3条(e-Gov 法令検索で原文確認・2026-10-20)
日本司法支援センター業務方法書5条・8条・9条・11条・12条・30条・31条・45条・60条・65条・別表1(令和8年3月25日法務大臣認可の版)
日本司法支援センター(法テラス)公式サイト「弁護士・司法書士費用等の立替制度のご利用の流れ」「立替制度に関するよくあるご質問」「無料法律相談に関するよくあるご質問」(2026-10-20確認)