弁護士に相談する前に知っておきたい法律の要点を、分野ごとにスレッド形式でまとめています。

このサイトについて:本サイトは、法律の問題を弁護士に相談する前に知っておくと、弁護士の話が理解しやすくなる基礎知識をまとめたサイトです。掲載している情報は、スレッドの形でまとめています(掲示板の体裁ですが投稿は受け付けておりません)。評価や見解が分かれる点は「議論のある点」として示しています。あくまで管理人の便宜のために作成した参考情報ですので、個別のご相談にはお答えできません。ご自身の個別事案については弁護士にご相談ください。なお、条文の原文・判例・公的機関の資料を機械的に照合し、AIによる確認・文書の補充をしておりますが、掲載情報には誤りが含まれることがあります。本サイトで相場観を掴んだうえで、弁護士に相談をしてください。

相続放棄|期限を過ぎた後に借金が分かった場合

このスレッドは、AIが確認した情報を掲載したものです。スレッド形式は見せ方だけで、実際の投稿や利用者の体験談ではありません。
赤い枠の「議論のある点」は、評価や見解が分かれる点です。書き込み・返信はできません。

この記事の要点

  • 相続放棄は、原則として自分が相続人になったと知った時から3か月以内に家庭裁判所に申述する(民法915条1項・938条)。ただし判例は、相続財産がまったくないと信じ、そう信じたことに相当な理由がある場合には、相続財産の全部または一部の存在を知った時(または通常知ることができた時)から3か月を数えるとしている(最高裁昭和59年4月27日判決)。
  • 亡くなったことを知ってから3か月を過ぎていても、この判例の要件に当たれば、相続財産の存在を知った時(借金の請求書が届いた時など)から3か月以内の申述が受理される可能性がある。ただし、請求書を受け取った日から必ず3か月あるわけではなく、ほかの財産を以前から知っていた場合や、通常もっと早く知ることができた場合は、それより前から期間が進んでいるとされるおそれがある。家庭裁判所は、放棄が無効であることが明らかな場合を除いて受理する運用だと説明されている。ただし、受理されても、債権者が後の裁判で放棄の効力を争うことがある。
  • 請求書を受け取ったら、払わない・払う約束をしない・遺産に手を付けないで、届いた書類と日付を保存し、すぐに相談する。遺産を使って払ったり、遺産を処分したりすると、単純承認とみなされて放棄できなくなるおそれがある。自分のお金で払ったことだけで当然に同じ扱いになるわけではないが、書面や約束の内容によって別の問題が生じうる。すでに払ってしまった場合も、放棄できないと決めつけずに相談する。
  • --

問題提起

父が亡くなって1年。目立った財産はなく、借金もないと思っていたので、何の手続もしていなかった。ところが先日、父の借金について、債権回収会社から相続人である自分あての請求書が届いた。相続放棄の3か月はとっくに過ぎている。もう払うしかないのか。

法律の文言(民法915条・921条・938条)

相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。
2 相続人は、相続の承認又は放棄をする前に、相続財産の調査をすることができる。民法915条(e-Gov法令検索で原文確認)
次に掲げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなす。
一 相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。(ただし書略)
二 相続人が第九百十五条第一項の期間内に限定承認又は相続の放棄をしなかったとき。民法921条・一部省略(e-Gov法令検索で原文確認)
相続の放棄をしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。民法938条(e-Gov法令検索で原文確認)

原則と、判例の例外

① 原則。 3か月は、亡くなったことと、それによって自分が相続人になったことを知った時から数えると解されている(詳しくは「相続放棄|3か月の数え方と避けるべき行動」のスレッドを参照)。この期間内に放棄も限定承認もしないと、単純承認をしたものとみなされる(民法921条2号)。

② そもそも3か月を過ぎていない場合もある。 先の順位の相続人(子など)が全員放棄したことで、後から自分(親・兄弟姉妹など)が相続人になった場合は、そのことを知った時から数えるのが原則で、亡くなった日から3か月を過ぎていても、自分の期間は過ぎていないことがある。同じ順位の相続人が複数いれば、一人が放棄しただけで次の順位に移るわけではない。相続人が未成年者・成年被後見人の場合(民法917条)や、相続人が決めないまま亡くなった場合(民法916条)にも、別の数え方がある。

③ 判例の例外。 最高裁昭和59年4月27日判決は、相続人が亡くなったことと自分が相続人になったことを知っていても、3か月以内に放棄などをしなかったのが、

・相続財産がまったく存在しないと信じたためであり、
・亡くなった人の生活歴、亡くなった人と相続人との交際の状態その他の事情から、相続財産の有無を調べることを相続人に期待するのが著しく困難な事情があって、
・そう信じたことに相当な理由がある

ときは、3か月を、相続人が相続財産の全部または一部の存在を知った時、または通常これを知ることができた時から数えるとした。いったん過ぎた期間を復活させるのではなく、例外的に数え始めを後にずらす考え方である。数え始めは「問題の借金を知った時」とは限らず、ほかの財産の存在を知った時や、通常知ることができた時が基準になることがある。

④ 「まったくない」と信じた場合が典型。 この判例が直接扱ったのは、相続財産がまったくないと信じていた場合である。亡くなった人と長く連絡がなかった、生活を別にしていた、などの事情が典型的に問題になる。

⑤ 一部の財産を知っていた場合。 自宅や少しの預金などがあることは知っていたが、多額の借金は知らなかった、という場合にも例外が認められるかは、見解が分かれている。判例の文言どおり「まったくない」と信じた場合に限るとする見解(限定説)と、通常の人なら放棄したであろう多額の借金を知らなかった場合にも認める余地があるとする見解(非限定説)があり、裁判例でも結論が分かれている。

家庭裁判所での扱い

① 受理は「入口」の判断。 家庭裁判所は、3か月を過ぎた申述でも、放棄が無効であることが明らかな場合を除いて受理する運用だと説明されている(受理が保証されるという意味ではない)。受理するかどうかの段階では、例外に当たるかを最終的に決めるわけではない。

② 受理されても争われることがある。 受理は放棄が有効であることを確定させるものではないので、債権者は後の裁判で「3か月を過ぎている」「遺産を処分していた」などと主張して、放棄の効力を争うことができる。その場合、例外に当たるかが裁判で判断される。

③ 申述書には事情を具体的に書く。 3か月を過ぎた申述では、亡くなったことを知った日、借金を知った日とそのきっかけ(請求書が届いた日など)、それまで財産がないと思っていた理由(亡くなった人との交流の状況、生活の様子など)を具体的に書き、請求書や封筒など、知った時期を示す資料を付ける。家庭裁判所から照会書が届いたら、事実どおりに答える。

請求書を受け取ったときにしてはいけないこと

① 払わない・払う約束をしない。 遺産から借金を払うと、遺産の処分として単純承認とみなされるおそれがある。自分のお金で払ったことだけで当然に単純承認になるわけではないが、分割払の約束をする、債務を認める書面に署名する、といった行為は、放棄の判断の場面で不利な事情とされたり、自分で別に支払義務を負うことにつながったりするおそれがある。また、借金の時効が問題になる場合に、払ったり認めたりすると時効を主張しにくくなることもある。「少しだけ払えば待ってもらえる」といった提案にも、その場で応じない。

② 遺産に手を付けない。 亡くなった人の預金を引き出す、遺品を売る・処分する、といった行為は、単純承認とみなされるおそれがある(民法921条1号)。ただし、保存行為などは除かれ(同号ただし書)、すでに引出しや片付けをした場合も、目的・使い道・物の価値などで扱いが変わるので、それだけで放棄をあきらめない。放棄が受理された後も、遺産を隠したり自分のために使ったりすると単純承認とみなされることがあり(同条3号)、放棄の時に遺産を現に占有している人には保存の義務がある(民法940条1項)。どこまでが処分に当たるかは「単純承認|遺産を処分したとみなされる行為」のスレッドを参照。

③ 放置しない。 請求書を放置していると、例外に当たる場合の3か月も過ぎてしまう。裁判所から訴状や支払督促が届いた場合は、相続放棄の手続とは別に対応が必要で、相続放棄を申述した・受理されたというだけで放置してはいけない。訴状なら指定された答弁書の提出期限と期日を確かめる。支払督促は送達から2週間以内に異議を申し立てるのが基本で、その後に仮執行の宣言が付いた支払督促が届いた場合も、送達から2週間以内に異議を申し立てる必要がある。対応しないと、請求どおりの判決などが確定するおそれがある。

実務の視点 請求書が届いたら、封筒ごと保管し、受け取った日をメモする。これが、相続財産の存在を知った時期の証拠になる。債権者に電話で問い合わせるときは、借金を認めたり支払を約束したりせず、「相続について検討中」と伝えるにとどめる。ほかの相続人(兄弟姉妹など)にも同じ請求が届いている可能性があり、先の順位の相続人が放棄すると後の順位の親族に請求が回ることもあるので、親族とも情報を共有する。

手続の流れ

1. 請求書・封筒を保管し、受け取った日を記録する。払ったり、払う約束をしたりしない。
2. 亡くなった人の財産と借金をできる範囲で調べる(通帳・郵便物・信用情報機関への開示請求など)。
3. 調査の完了を待たず、できるだけ早く(例外の起算点は実際に知った日より前になることもあるので、請求書が届いてから必ず3か月あるとは考えずに)、亡くなった人の最後の住所地の家庭裁判所へ相続放棄を申述する。3か月を過ぎた事情と、借金を知った経緯を具体的に書き、資料を付ける。郵送するときは期間内に家庭裁判所に届くようにする(受理の判断が期間後になることはかまわない)。調査が間に合わないときは、期間が満了する前に伸長の申立てを考える(すでに満了した期間を後から延ばす制度ではない)。
4. 家庭裁判所からの照会書に事実どおり回答する。
5. 受理されたら、相続放棄申述受理証明書を取り、債権者に示す。
6. 債権者が放棄の効力を争って裁判を起こした場合は、例外に当たる事情を主張・立証する。

確認点・よくある誤解

① 「3か月過ぎたら絶対無理」ではない。 判例の例外があり、その要件に当たれば、相続財産の存在を知った時から3か月以内の申述が受理される可能性がある。ただし、例外が認められるとは限らない。

② 「請求書が届いてから3か月あれば必ず大丈夫」でもない。 亡くなった当時に財産や借金の存在を知っていた、または容易に知ることができた事情があると、例外は認められにくい。相談や債権者への連絡だけでは、期間は止まらない。

③ 請求が遅かったことだけでは決まらない。 亡くなってからかなりたって初めて請求が届くこともある。請求が遅かったことだけで放棄の可否は決まらないので、経緯と日付を整理して相談する。

④ 放棄で消えない責任・請求を争う余地。 相続放棄で免れるのは相続で引き継ぐ借金で、自分が保証人・連帯債務者になっていた借金の責任は残る。また、放棄が難しい場合でも、請求の根拠・金額・時効などを確かめる余地がある。

⑤ 却下されたら。 申述が却下されたときは、審判の告知を受けた日から2週間以内に即時抗告ができる(家事事件手続法201条9項3号・86条)。

議論のある点

・一部の財産を知っていた場合に例外を認めるか。 限定説と非限定説があり、裁判例でも結論が分かれている。どのような事情なら認められやすいかは、亡くなった人との関係、知っていた財産の内容と額、借金を知るきっかけなどで変わる。
・「相当な理由」の判断。 亡くなった人と同居していた、生活の様子を知っていた、郵便物を見られた、などの事情があると、相当な理由が否定されやすい。どこまで調べるべきだったかは、事案ごとの判断になる。
・すでにした行為の評価。 請求を受けてから一部を払ってしまった、遺品を処分してしまった、という場合に、それが単純承認に当たるか、放棄の効力にどう影響するかは、行為の内容と時期で判断が分かれる。

これらは一般論だけで判断せず、弁護士に相談してほしい。

特に相談した方がよい場面

・亡くなってから3か月を過ぎて、借金の請求書が届いた
・裁判所から訴状・支払督促が届いた
・請求を受けて、すでに一部を払った・払う約束をした
・亡くなった人の預金を引き出した、遺品を処分した
・亡くなった人の財産の一部(自宅・預金)は知っていた
・先の順位の相続人の放棄で自分が相続人になった
・自分も保証人になっている、または請求の内容に心当たりがない
・相続放棄の申述が却下された、または受理後に債権者から裁判を起こされた

相談のタイミング

請求書が届いたら、払う前に、すぐに相談してほしい。例外に当たる場合の3か月も短く、いつから数えるかも争われうるので、日数の余裕があるうちに申述の準備を始める。訴状や支払督促が届いた場合は、対応の期限がさらに短い。

まとめ

相続放棄の3か月を過ぎても、相続財産がまったくないと信じ、そう信じたことに相当な理由があれば、相続財産の存在を知った時(または通常知ることができた時)から3か月以内の放棄が認められることがある。ただし例外は狭く、受理後も争われうる。請求書が届いたら、払わず、遺産に手を付けず、すぐに相談したい。

出典

民法915条〜917条・921条・938条・940条1項/家事事件手続法86条・201条9項3号(いずれも e-Gov 法令検索で原文確認・2026-10-19)/最高裁昭和59年4月27日判決(民集38巻6号698頁)

最終確認日
2026年10月19日
法令の基準時
2026年10月時点の法令による
出典(外部サイト)
e-Gov 法令検索(デジタル庁)〔外部サイト〕/裁判所ウェブサイト〔外部サイト〕
ご相談
個別の相談には応じません。具体的な事案は、法律事務所、弁護士会の法律相談センターや法テラス等にご相談ください。

同じ小分類(相続放棄・承認)のスレッド

  1. 相続放棄|3か月の数え方と避けるべき行動
  2. 限定承認|プラスの範囲で借金を払う選択肢
  3. 被相続人の負債|信用情報などで借入れを調べる
  4. 相続放棄|申述書の書き方と添付する戸籍
  5. 相続放棄|期限を過ぎた後に借金が分かった場合
  6. 相続放棄|熟慮期間の伸長を求める手続
  7. 相続放棄|遺品整理や形見分けで単純承認になるか
  8. 相続放棄|葬儀費用を遺産から払ってよいか
  9. 相続放棄|生命保険金や遺族年金は受け取れるか
  10. 相続放棄|次の順位の相続人に伝えるべきこと
  11. 相続放棄|放棄した後の家や土地の管理
  12. 相続放棄|家庭裁判所からの照会書への答え方
  13. 単純承認|遺産を処分したとみなされる行為
  14. 相続人不存在|相続人がいないときの財産の行方
  15. 相続財産清算人|選任の申立てと費用の負担
  16. 相続放棄|放棄すべきか判断するための財産調査
  17. 相続放棄|家族全員で放棄するときの順番と連絡
  18. 相続放棄|受理通知書と受理証明書の使い分け
  19. 相続放棄|債権者から請求書が届いたときの対応
  20. 相続放棄|故人の賃貸住宅の解約と荷物の扱い
  21. 相続放棄|故人の預金を引き出してしまった場合
  22. 相続放棄|未成年の子の放棄と利益相反
  23. 相続放棄|放棄の取消しや撤回ができる場合
  24. 相続放棄|却下されたときの不服申立て
  25. 相続放棄|故人の車や携帯電話の契約の始末
  26. 相続放棄|連帯保証人になっていた場合の影響
  27. 相続放棄|海外に住む相続人の申述
  28. 限定承認|相続人全員でする手続と清算の流れ
  29. 限定承認|不動産を残したいときの先買権
  30. 単純承認|故人の債務を一部払ってしまったとき
  31. 相続放棄と遺産分割|取り分なしの合意との違い
  32. 相続放棄|死亡を知った時期が遅れた事情の説明

大分類暮らし・家族の他の板 中分類 4

中分類離婚・男女

  1. 協議離婚|届を出す前に決めておく項目は?
  2. 離婚調停|申立てから成立までの道のり
  3. 財産分与|離婚後いつまで求められるか
  4. 不貞の慰謝料|請求する側・される側の論点整理
  5. 保護命令|命令の種類と裁判所への申立て
  6. 財産分与|分ける財産と分けない財産の線引き
  7. 精神的な嫌がらせ|慰謝料の対象になる場合とは
  8. DVからの避難|持ち出しておきたい書類一覧
  9. 婚約|口約束だけでも婚約は成立するか
  10. 婚約の成立|指輪や結納、両親への挨拶の意味

中分類子ども・親権

  1. 共同親権|改正民法で変わる点・変わらない点
  2. 養育費|取り決めを書面に残す方法
  3. 親権者の指定|決め方と判断で重視される事情
  4. 養育費|支払いが途絶えたときの回収手段
  5. 面会交流|頻度・方法の決め方と調停
  6. 面会交流|約束が守られない場合の手続
  7. 認知|父子関係を法的に確定させる手続
  8. 嫡出否認|誰が・いつまでに申し立てられるか
  9. 普通養子縁組|縁組届の要件と証人
  10. 普通養子縁組|配偶者のいる人が養子をとるとき
  11. 児童相談所|通告を受けて家庭訪問されたとき
  12. 一時保護|子が突然保護されたときの初動

中分類高齢者・成年後見・終活

  1. 後見・保佐・補助|判断能力に応じた3つの類型
  2. 成年後見人|家族と専門職、選ばれ方
  3. 家族信託|財産管理を家族に託す仕組み
  4. 死後事務委任|葬儀・解約手続を任せる契約
  5. 介護事故|施設側の責任が問われる場面
  6. 介護施設の契約|入居一時金・退去をめぐる争い

中分類近隣・日常トラブル

  1. 生活騒音|我慢の限度と法的な対応
  2. 越境した枝・境界|改正民法での切取りルール
  3. いじめ|記録の残し方と学校への申入れ
  4. 学校事故|授業・部活動中のけがと責任の所在
  5. 内容証明郵便|送る意味と効果的な場面
  6. 少額訴訟|小さな金額の請求を簡単に争う手続