問題提起
離婚を急いで、財産の分け方を決めないまま離婚届を出した。あるいは、離婚後に相手の預金や退職金のことを知った。こうしたときでも、離婚後に財産分与を求めることはできる。ただし、家庭裁判所に求められる期間には限りがあり、しかもその長さは、離婚した時期で違う。まず自分の期間がどちらかを確かめることが出発点になる。
弁護士に相談する前に知っておきたい法律の要点を、分野ごとにスレッド形式でまとめています。
離婚を急いで、財産の分け方を決めないまま離婚届を出した。あるいは、離婚後に相手の預金や退職金のことを知った。こうしたときでも、離婚後に財産分与を求めることはできる。ただし、家庭裁判所に求められる期間には限りがあり、しかもその長さは、離婚した時期で違う。まず自分の期間がどちらかを確かめることが出発点になる。
協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる。
2 前項の規定による財産の分与について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、当事者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる。ただし、離婚の時から五年を経過したときは、この限りでない。民法768条1項・2項。裁判上の離婚にも準用=771条(e-Gov法令検索で原文確認)
施行日前に離婚し、又は婚姻が取り消された場合における財産の分与に関する処分を家庭裁判所に請求することができる期間の制限については、なお従前の例による。民法等の一部を改正する法律〔令和6年法律第33号〕附則4条(e-Gov法令検索で原文確認)
改正前の民法768条2項ただし書は「離婚の時から二年を経過したときは、この限りでない。」と定めていた(e-Gov 法令API の時点指定〔2026年3月31日〕で原文確認)。この改正法の施行日は2026年4月1日である。
① 離婚した日を確かめる。 協議離婚は届出が受理された日、調停離婚は調停が成立した日、裁判離婚は判決が確定した日など、離婚の方法で「離婚の時」が違う。
② 施行日の前か後か。 離婚の時が2026年4月1日以後なら5年、2026年3月31日以前なら2年(附則4条)。
③ 数え方。 期間は原則として民法の期間計算のルール(初日不算入など=民法140条・143条)に従って数えるが、離婚の方法や、末日が休日に当たる場合などで確かめるべき点がある。具体的な末日は、余裕をもって弁護士か家庭裁判所に確かめる。郵送で申し立てる場合は、期限内に裁判所に届く必要がある。
④ 期間内にすること。 話し合いで決まらないときは、期間内に家庭裁判所へ財産分与の調停か審判を申し立てる。期間内に適法に申し立て、その手続が続いていれば、途中で期間を過ぎても、それだけで判断を受けられなくなるわけではない。調停が不成立で終わった場合は、調停を申し立てた時に審判の申立てがあったものとみなされ、審判に移る(家事事件手続法272条4項)。
実務の視点 離婚の日が分かる書類(戸籍の記載、調停調書、判決と確定証明書など)を手元にそろえ、期間の終わりを早めに確認しておく。財産分与の資料(相手名義の預金・保険・退職金・不動産・株式など)は、時間がたつほど集めにくくなる。期間に余裕があるうちに、分かっている財産の一覧と資料を作り始めるとよい。
1. 離婚の日と、2年・5年のどちらが当たるかを確かめる。
2. 相手と話し合う。合意できたら、対象の財産、金額、支払期限、登記などの手続を具体的に書面に残す。金銭の支払について強制執行に備える場合は、債務者が直ちに強制執行に服する旨の文言がある公正証書(民事執行法22条5号)や、調停調書にしておく。不動産の名義変更などは別に確かめる。
3. 話し合いがまとまらない、またはできないときは、家庭裁判所に財産分与の調停を申し立てる。審判を直接申し立てることもできるが、裁判所の判断で調停に付されることがある(家事事件手続法274条1項)。
4. 調停で合意できなければ、審判で家庭裁判所が分与させるかどうかと、額・方法を決める(民法768条3項)。
5. 離婚の裁判をしている途中なら、離婚の訴えと一緒に財産分与を求める申立て(附帯処分)をすることもできる(人事訴訟法32条1項)。
① 「時効」とは扱いが違うと解されている。 この期間は、時効ではなく「除斥期間」と解されているのが一般的である。そのため、時効のように、相手への請求(催告)による完成の猶予や、相手の承認による更新といった仕組みは使えない。手紙やメールで請求していても、期間内に家庭裁判所に申し立てていなければ、家庭裁判所に求めることはできなくなる。
② すでに決まった財産分与の支払は別。 2年・5年は、財産分与の内容がまだ決まっていないときに、家庭裁判所に決めてもらう期間である。合意書や調停・審判ですでに決まった支払を相手が守らない場合は、その支払を求めることになり、この期間とは別に、消滅時効などを確かめる。
③ 期間が過ぎても、相手が任意に応じることはできる。 期間の制限は家庭裁判所に求める場合のもので、相手が自分から話し合いに応じ、財産を分けることに合意すれば、その合意で分けることはできると説明されている。ただし、相手に応じる義務はない。
④ 申立てを取り下げると、期間が過ぎてしまうおそれがある。 期間内に申し立てた後で取り下げ、その時点で期間が過ぎていれば、改めて申し立てることはできなくなるおそれがある。取り下げる前に弁護士に相談する。
⑤ 後から財産が見つかったとき。 離婚後に相手の財産の存在を知っても、そのことだけで期間の数え始めが変わったり、期間が延びたりするわけではない。すでに財産分与の合意(「ほかに請求しない」という清算条項など)をしている場合は、追加で求められるかどうかを合意の内容に照らして検討することになる。
⑥ 慰謝料・養育費・年金分割は別の期間・別の手続。 離婚の慰謝料は損害賠償の時効の問題、養育費は子の監護の問題、年金分割は厚生年金保険法の請求期限の問題で、財産分与の期間とは別に確かめる。
⑦ 改正前の離婚は、2年のまま。 2026年3月31日以前に離婚した人の期間が、改正で5年に延びたわけではない(附則4条)。「5年になった」と聞いて安心せず、自分の離婚の時期を確かめる。
議論のある点 期間を過ぎた後に救済される余地があるか(たとえば、相手が財産を隠していた場合など)は、問題になることがあるが、救済を認める扱いが確立しているとはいえない。期間を過ぎてしまった、または過ぎそうなときは、一般論で判断せず、すぐに弁護士に相談してほしい。
・財産分与を決めないまま離婚した
・離婚後に、相手の財産(預金・退職金・保険など)の存在を知った
・財産分与を約束したのに、支払や名義変更がされていない
・財産分与の合意書(清算条項を含む)を作った後に、新たな財産が見つかった
・期間の終わりが近い、またはすでに過ぎたかもしれない
・相手が話し合いに応じない、財産を明らかにしない
・離婚の時期が2026年4月1日の前か後か、はっきりしない
財産分与の資料集めには時間がかかる。期間の終わりが近づいてからでは、申立ての準備が間に合わないことがある。離婚の前、遅くとも離婚の直後に相談しておくのが安全である。特に2026年3月31日以前に離婚した人は、期間が2年なので早めに確かめてほしい。
財産分与を家庭裁判所に求められる期間は、2026年4月1日以後の離婚なら離婚の時から5年、それより前の離婚なら2年。手紙で請求しただけでは期間は止まらないと解されているので、期間内に家庭裁判所に調停か審判を申し立てる。すでに合意や調停で決まった支払を求める場合は、この期間とは別に考える。
出典
民法140条・143条・768条・771条/民法等の一部を改正する法律(令和6年法律第33号)附則1条・4条/改正前民法768条2項(e-Gov 法令API 時点指定 2026-03-31)/家事事件手続法272条4項・274条1項/人事訴訟法32条1項/民事執行法22条5号(いずれも e-Gov 法令検索で原文確認・2026-10-18)