問題提起
離婚したいが、相手が話し合いに応じない。あるいは離婚には同意していても、子どもやお金のことで折り合わない。こうしたときに使うのが、家庭裁判所の離婚調停(正式には夫婦関係調整調停)である。どこに申し立て、どう進み、成立・不成立のあとどうなるのかを整理する。
弁護士に相談する前に知っておきたい法律の要点を、分野ごとにスレッド形式でまとめています。
離婚したいが、相手が話し合いに応じない。あるいは離婚には同意していても、子どもやお金のことで折り合わない。こうしたときに使うのが、家庭裁判所の離婚調停(正式には夫婦関係調整調停)である。どこに申し立て、どう進み、成立・不成立のあとどうなるのかを整理する。
第二百四十四条の規定により調停を行うことができる事件について訴えを提起しようとする者は、まず家庭裁判所に家事調停の申立てをしなければならない。家事事件手続法257条1項(e-Gov法令検索で原文確認)
家事調停事件は、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所又は当事者が合意で定める家庭裁判所の管轄に属する。家事事件手続法245条1項(e-Gov法令検索で原文確認)
調停において当事者間に合意が成立し、これを調書に記載したときは、調停が成立したものとし、その記載は、確定判決(別表第二に掲げる事項にあっては、確定した第三十九条の規定による審判)と同一の効力を有する。家事事件手続法268条1項(e-Gov法令検索で原文確認)
①申立人・相手方。夫婦の一方が申立人、他方が相手方になる。
②申立先。相手方の住所地の家庭裁判所か、当事者が合意で決めた家庭裁判所(家事事件手続法245条1項)。
③申立書。当事者と、申立ての趣旨・理由を書いた申立書を出す(同法255条)。戸籍謄本などの基本の書類に加え、養育費などを求めるときは収入の資料(源泉徴収票など)、年金分割(合意分割)を求めるときは年金分割のための情報通知書など、話し合う事項に応じた資料が要る。必要な書類は申立先の家庭裁判所の案内で確かめる。
④調停前置。調停を経ずに離婚の訴えを起こしても、原則として裁判所が職権で調停に回す。ただし、調停に付するのが相当でないとき(相手方の所在が分からない場合など)は例外である(同法257条2項)。
実務の視点 申立ての前に、①離婚の条件の希望(親権、養育費、財産の分け方など)②夫婦の財産の一覧③これまでの経緯(いつから別居か、離婚を考えた理由)を時系列のメモにしておく。相手方に知られたくない現住所などがある場合は、書類を出す前に、書き方や非開示・秘匿の手続を家庭裁判所に確認する。非開示を希望すると伝えるだけで必ず守られるわけではない。
①申立て → ②第1回期日の通知 → ③期日:裁判官と家事調停委員で構成する調停委員会が、通常は当事者から交代で事情を聴き、合意に向けて調整する。期日の始めや終わりに、双方が同席して進め方の説明を受ける運用もあるが、暴力などで顔を合わせたくない事情があれば個別にしてもらえるよう伝える。数回の期日を重ねることが多い → ④合意できれば調書に記載して調停成立。離婚の調停は、ウェブ会議(映像と音声の送受信)の方法による場合を除き、電話会議では成立させられない(同法268条3項)。
⑤成立後の届出:調停離婚は成立した時点で効力を生じる。申立人は成立の日から10日以内に、調書の謄本を添えて離婚の届出をする(戸籍法77条1項・63条1項)。期間は成立の日から数える(戸籍法43条1項)。
⑥不成立:合意の見込みがないと、調停委員会は調停不成立として事件を終了させることができる(家事事件手続法272条1項)。離婚の調停は、遺産分割や婚姻費用の調停と違い、不成立でも当然には審判に移らない(同条4項は別表第二の事項に限る)。離婚を求めるなら家庭裁判所に離婚訴訟を起こす。不成立の通知を受けた日から2週間以内に、調停を申し立てた事件について訴えを起こすと、調停の申立ての時に訴えを起こしたものとみなされる(同条3項)。この2週間は訴えを起こせる期限ではなく、過ぎても離婚訴訟は起こせる。
⑦調停に代わる審判:わずかな意見の違いで合意できない場合などに、家庭裁判所が職権で調停に代わる審判をすることがある(同法284条1項)。異議は、告知を受けた日から2週間の不変期間内にする(同法286条2項・279条2項・3項)。適法な異議がなければ確定し、離婚などについては確定判決と、養育費・財産分与などの別表第二の事項については確定した審判と同じ効力を持ち(同法287条)、適法な異議があれば効力を失う(同法286条5項)。異議の期間は当事者ごとに告知の日から進むので、確定したかどうかは裁判所に確かめる。離婚を命じる審判は確定した時に効力を生じ、確定の日から10日以内に届出をする。
①話し合う事項。離婚するかどうかに加え、親権者、監護、養育費、親子交流、財産分与、年金分割、慰謝料も一緒に話し合える。未成年の子がいるときは、2026年4月1日の改正後は、親権者を父母の双方とするか一方とするかも検討する。共同親権が自動的に選ばれるわけではなく、家庭裁判所が親権者を定める場合、父または母が子の心身に害悪を及ぼすおそれがあるとき、暴力等のおそれなどで父母が共同して親権を行うことが困難なとき、その他双方を親権者とすると子の利益を害するときは、一方を親権者と定めなければならない(民法819条7項)。
②別居中の生活費。別居中の生活費(婚姻費用。民法760条)は、離婚調停の中で話し合うこともできる。ただし、離婚の調停は不成立になると審判に移らないため、合意できない場合にも裁判所に決めてもらうには、婚姻費用分担調停を別に申し立てておく。こちらは不成立になると審判に移る(家事事件手続法272条4項)。婚姻費用は、実務上、支払を求めた時からの分が認められることが多いので、請求したことが分かる記録を残し、早めに申し立てる(関連記事「婚姻費用|別居中の生活費の決め方と算定表」)。
③同席しないこともできる。調停は通常、当事者が交代で調停委員と話す。暴力などで相手と顔を合わせたくない場合は、申立ての時点で家庭裁判所に伝えておく。
④相手が来ないとき。相手方が手続に参加せず、合意を確認できなければ、通常の調停は成立しない。最終的には不成立となり、離婚を求めるなら訴訟に進むことが多いが、事情によっては調停に代わる審判がされることもある。
⑤調停調書の効力。具体的な金銭の支払を定めれば、払われないときに強制執行の根拠になる。ただし、すべての条項がそのまま強制執行できるわけではなく、養育費や親子交流などは、その後の事情の変化で変更が問題になることもある。
⑥年金分割は調停だけでは終わらない。調停で割合を決めても、年金の記録は自動的には分割されない。年金事務所などへの請求が別に必要で、期限がある(下の「相談のタイミング」を参照)。
議論のある点 次の点は、法律の争いというより、事案ごとの判断や裁判所の運用で分かれる。一般論だけで判断せず、弁護士に相談してほしい。
①どこまで譲るか。調停で合意するか、訴訟まで進むかは、訴訟になった場合の見通し(離婚原因が認められるか、財産分与や親権がどうなりそうか)によって変わる。
②離婚だけ先に成立させるか。離婚と親権だけ先に合意し、財産分与などを後の手続に回す方法もあるが、調停条項に「ほかに債権債務がない」などの清算条項が入ると、後の請求が妨げられることがある。後で請求する事項は条項で明確に残し、財産分与・年金分割・慰謝料はそれぞれ期限が違う点に注意する。養育費を決めないまま2026年4月1日以後に離婚した場合は、法定養育費の制度(民法766条の3)もあるが、取り決めまでの暫定的・補充的なもので、個別の事情に応じた養育費の取り決めに代わるものではない。
③調停に代わる審判を求めるか。異議があれば効力を失うため、どのような場面で使われるかは事案と裁判所の運用による。
・相手が離婚に応じない、または条件で大きく対立している
・相手から暴力や暴言を受けている。身の危険があるときは、調停の申立てを待たずに、避難や保護命令などを含めて相談する
・生活費を止められている
・親権や子との交流で争いがある、共同親権への同意を強く求められている
・財産が多い、相手の財産が分からない、住宅ローンの残る家がある
・相手に弁護士が付いた
・調停が不成立になり、訴訟を考えている
弁護士に依頼すると、申立書と資料の準備、期日への同行、主張の書面化、訴訟への移行まで任せられる。
相談は申立ての前が望ましい。次の期間に注意する。
・婚姻費用:支払を求めた時からの分が認められることが多いので、別居したら早めに請求・申立てをする。
・不成立後の訴え:不成立の通知を受けた日から2週間以内に訴えを起こすと、調停申立ての時に訴えを起こしたものとみなされる(家事事件手続法272条3項)。2週間を過ぎても訴えは起こせる。
・調停に代わる審判への異議:告知を受けた日から2週間以内(同法286条2項・279条2項)。
・調停成立後の届出:成立の日から10日以内(戸籍法77条1項・63条1項)。
・財産分与:離婚の時から5年以内に家庭裁判所に申し立てる(2026年4月1日より前の離婚は2年)(民法768条2項、令和6年法律第33号附則4条)。調停離婚では、調停が成立した日が離婚の日になる。
・年金分割の請求:原則として離婚の翌日から5年(2026年4月1日より前の離婚は2年)。通常の期限の後、またはその前6か月以内に、期限内に申し立てた割合を定める調停が成立したり審判が確定したりした場合などは、その翌日から6か月を経過するまで請求できる特例がある。この特例で通常の期限が短くなるわけではない(厚生年金保険法78条の2第1項ただし書・同法施行規則78条の3、令和7年法律第74号附則10条)。
離婚の話し合いがまとまらなければ、まず家庭裁判所の離婚調停を申し立てる。親権やお金のことも一緒に話し合え、別居中の生活費は婚姻費用分担調停を併せて申し立てておくとよい。離婚の調停は、不成立になっても当然には審判に移らない。家庭裁判所が調停に代わる審判をする場合を除き、離婚を求めるなら訴訟を起こす。調停が成立した後も、届出や年金分割の請求など、期限のある手続が残る。申立ての前に、条件の希望と資料を整理しておくことが大切である。
出典
家事事件手続法245条1項・255条・257条・268条・272条・279条・284条・286条・287条/戸籍法43条・63条1項・77条1項/民法760条・766条の3・768条2項・819条7項/厚生年金保険法78条の2、同法施行規則78条の3/令和6年法律第33号附則4条/令和7年法律第74号附則10条(いずれも e-Gov 法令検索で原文確認・2026-10-18〜19)