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協議離婚|届を出す前に決めておく項目は?

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この記事の要点

  • 協議離婚には、夫婦双方の離婚の意思と、離婚届の受理が必要である。夫婦の間に未成年の子(夫婦双方の子)がいるときは、親権者(父母の双方か一方)を定めているか、親権者の指定を求める家事調停・家事審判を申し立てていなければ、届は受理されない(民法765条1項)。
  • 親権以外の事項(養育費・親子交流・財産分与・年金分割・慰謝料など)は、決めていなくても届は受理される。ただし、後で決めるには協議や家庭裁判所の手続が要り、期間の制限があるものもあるので、できるだけ届の前に決めて書面にする。金額と支払期日が特定された金銭の支払は、強制執行に服する旨の文言を入れた公正証書にしておくと、裁判を経ずに強制執行を申し立てられる(民事執行法22条5号)。
  • 2026年4月1日以後に養育費を決めずに協議離婚した場合、子を主に監護する親は、離婚の日から一定額の「法定養育費」を請求できる(民法766条の3)。これは取り決めまでの暫定的・補充的な制度で、通常の養育費の目安や最低額を示すものではない。
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問題提起

話し合いで離婚することに決まり、離婚届の用紙も用意した。ところが、子どもの親権、養育費、家のこと、お金のことは「後で決めればいい」と言われている。協議離婚は届が受理されれば成立するが、決めていないことを後から決めるには、改めて協議するか家庭裁判所の手続を使う必要があり、期間の制限があるものもある。届に署名する前に決めておく事項を整理する。2026年4月1日に施行された改正で、親権や養育費のルールが変わった点にも注意したい。

なお、相手から暴力や脅しを受けているなど身の危険があるときは、取り決めをまとめることより安全の確保を優先してほしい(下の「特に相談した方がよい場面」を参照)。

法律の文言(民法763条・765条・766条・819条)

夫婦は、その協議で、離婚をすることができる。民法763条(e-Gov法令検索で原文確認)
離婚の届出は、その離婚が前条において準用する第七百三十九条第二項の規定その他の法令の規定に違反しないこと及び夫婦間に成年に達しない子がある場合には次の各号のいずれかに該当することを認めた後でなければ、受理することができない。
一 親権者の定めがされていること。
二 親権者の指定を求める家事審判又は家事調停の申立てがされていること。
2 離婚の届出が前項の規定に違反して受理されたときであっても、離婚は、そのためにその効力を妨げられない。民法765条(e-Gov法令検索で原文確認)
父母が協議上の離婚をするときは、その協議で、その双方又は一方を親権者と定める。民法819条1項(e-Gov法令検索で原文確認)
父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者又は子の監護の分掌、父又は母と子との交流、子の監護に要する費用の分担その他の子の監護について必要な事項は、その協議で定める。この場合においては、子の利益を最も優先して考慮しなければならない。民法766条1項(e-Gov法令検索で原文確認)

成立に必要なことと、決めておく事項

協議離婚の成立に必要なこと:①届出の時に夫婦双方に離婚する意思があること ②離婚届が受理されること。書面で届け出る場合は、夫婦双方と成年の証人2人以上が署名する(民法764条・739条2項)。

届が受理されるための確認:夫婦の間に未成年の子がいるときは(一方の連れ子で、他方と養子縁組をしていない子は含まない)、親権者の定めがあるか、親権者の指定を求める家事調停・家事審判の申立てがあることを、市区町村が確認してから受理する(民法765条1項)。この確認に漏れがあって受理された場合でも、そのことだけで離婚の効力が否定されるわけではない(同条2項)。一方、本人が知らないうちに出された届など、離婚の意思がない届は、受理されても離婚の有効性が問題になる。

決めておく事項(親権以外は、決めていなくても届は受理される)

①親権:父母の双方(共同親権)か一方(単独親権)かを決める(民法819条1項)。共同親権の場合、親権は父母が共同して行うのが原則だが、監護・教育に関する日常の行為や、子の利益のため急迫の事情があるときなどは、一方が単独で行える(民法824条の2第1項・2項)。特定の事項で父母の意見が合わないときは、家庭裁判所が一方に単独で行わせる定めをすることができる(同条3項)。

②監護:子の監護をすべき者(監護者)や、監護の分担(監護の分掌)を決める(民法766条1項)。監護者と定められた親は、子の監護・教育や居所の指定などを単独で行うことができる(民法824条の3)。共同親権にする場合も、監護者を定めるかどうかで権限の分け方が変わる。

③養育費(子の監護に要する費用の分担):金額、支払日、いつまで払うか、進学など特別な出費の扱い。

④親子交流(面会交流):頻度、方法、受渡しの方法、連絡の取り方。

⑤財産分与:婚姻中に夫婦で築いた財産の分け方。

⑥年金分割:婚姻期間の厚生年金の記録を分ける割合(厚生年金保険法78条の2)。3号分割は、2008年4月以後で、相手の被扶養配偶者(国民年金の第3号被保険者)だった期間の記録が対象で、相手の同意なく請求できる(同法78条の14。詳しくは関連記事「年金分割|手続の窓口と期限の数え方」)。

⑦慰謝料:相手の不貞や暴力などが原因で離婚する場合。

⑧氏:婚姻で氏を改めた人は離婚で元の氏に戻るが、離婚の日から3か月以内に届け出れば、離婚の際の氏を称することができる(民法767条)。

実務の視点 決めた内容は必ず書面にする。お金の支払(養育費・財産分与・慰謝料など)は、金額と支払期日を特定したうえで、公証役場で「支払を怠ったときは直ちに強制執行に服する」旨を入れた公正証書(執行証書)にしておくと、不払いのときに裁判を起こさなくても強制執行を申し立てられる(民事執行法22条5号)。ただし、「進学費用はその都度協議する」のように金額が決まっていない条項は、そのままでは強制執行できない。また、強制執行には裁判所での手続が別に要り、相手に差し押さえる財産がなければ回収できない。作成の前に、公証役場に必要書類と手数料を確認しておく。

手続の流れ

①(相手が勝手に届を出しそうなときは、まず最初に)市区町村に離婚届の不受理申出をしておく。申出をしておくと、申出をした本人が窓口に出頭して届け出たことを確認できない離婚届は受理されない(戸籍法27条の2第3項・第4項)。申出の方法と受付窓口は市区町村に確認する。すでに受理されてしまった届を、不受理申出でさかのぼって取り消すことはできないので、その場合はすぐに弁護士に相談する → ②話し合いで上の事項を決める → ③合意書を作り、金銭の支払は公正証書にする → ④離婚届を出す(書面なら夫婦双方と証人2人の署名)→ ⑤離婚後の手続(年金事務所への年金分割の請求、氏の届出、子の氏や戸籍、児童手当・保険などの手続)。

年金分割は、合意書や公正証書を作っただけでは年金の記録は分割されず、年金事務所などへの請求が必要である。

話し合いがまとまらないときは、家庭裁判所の離婚調停(夫婦関係調整調停)を使う(関連記事「離婚調停|申立てから成立までの道のり」)。離婚前の別居中の生活費は、養育費とは別の「婚姻費用」の問題で、離婚の成立を待たずに請求できる(関連記事「婚姻費用|別居中の生活費の決め方と算定表」)。

改正後のルールと確認点

①共同親権は「選べる」制度。改正後は父母の双方を親権者にすることもできるが、それが原則になったわけではない。家庭裁判所が親権者を定める場合、父母の一方が子の心身に害悪を及ぼすおそれがあるときや、暴力等のおそれなどから父母が共同して親権を行うことが困難なときは、一方を親権者と定めなければならない(民法819条7項)。改正前に離婚して単独親権になっている場合も、自動的に共同親権に変わるわけではない。

②法定養育費。養育費を決めずに協議離婚した場合でも、離婚の時から引き続き子の監護を主として行う親は、他方に対し、離婚の日から、法務省令で定める額(子の数に応じて定められる)の支払を毎月末に請求できる(民法766条の3第1項)。父母が養育費を取り決めた日、養育費の審判が確定した日、子が成年に達した日のいずれか早い日まで続く。支払う側が、支払能力を欠くことなどを証明したときは、全部または一部の支払を拒むことができる(同項ただし書)。この制度は2026年4月1日より前の離婚には適用されない(令和6年法律第33号附則3条2項)。取り決めまでの暫定的な制度で、通常の養育費は双方の収入などに応じて別に決めるのが基本である。成年に達して法定養育費が終わっても、すでに生じた未払分が消えるわけではない。通常の養育費の終期は、取り決めの内容などによって決まり、18歳で一律に終わるものではない。

③養育費の先取特権。養育費など子の監護の費用を、確定した期限ごとに繰り返し支払う定期金(毎月の養育費など)には一般の先取特権が認められ(民法306条3号)、各期の定期金のうち法務省令で定める額の範囲で効力がある(民法308条の2)。支払期限を決めた一時金(進学費用など)が当然に対象になるわけではない。公正証書や調停調書がなくても、先取特権の存在を証する文書を出して差押えを申し立てられる(民事執行法193条1項)が、取り決めの存在などを示す書類は必要である。2026年4月1日より前に支払期が来た分には適用されないが、それより前の取り決めでも、同日以後に支払期が来る各期の分には適用される(令和6年法律第33号附則3条1項)。

④財産分与の期間。協議がまとまらないときに家庭裁判所に財産分与の処分を求められるのは、離婚の時から5年以内(民法768条2項)。2026年4月1日より前に離婚した場合は、改正前の規定により2年以内(令和6年法律第33号附則4条)。相手に請求書を送ったり、話し合いを続けたりするだけでは、この期間は延びない。期間内に家庭裁判所に調停・審判を申し立てる必要がある。

⑤年金分割の期限。原則として、離婚が成立した日の翌日から5年を経過すると請求できない(厚生年金保険法78条の2第1項ただし書・同法施行規則78条の3第1項)。2026年4月1日より前に離婚した場合は、改正前の2年の制限による(令和7年法律第74号附則10条)。通常の請求期限の後、またはその期限前6か月以内に、期限内に申し立てた割合を定める調停が成立したり審判が確定したりした場合などには、その翌日から6か月を経過するまで請求できる特例がある(同規則78条の3第2項)。この特例で通常の5年・2年が短くなるわけではない。また、割合が決まった後に当事者の一方が亡くなった場合は、亡くなった日から1か月以内という短い期限が問題になる(厚生年金保険法施行令3条の12の7)。

議論のある点

議論のある点 次の点は、法律の基本ルールは決まっていても、個々の場面への当てはめで判断が分かれる。一般論だけで判断せず、弁護士に相談してほしい。

①共同親権の具体的な運用。どの行為が「日常の行為」や「急迫の事情」に当たるか、父母の対立があるときに共同親権がうまく機能するかは、改正後の事例の積み重ねによるところが大きい。DVや虐待のおそれがある場合は、共同親権にすること自体が問題になる。

②親子交流の取り決めの実効性。公正証書にしても、親子交流そのものを強制執行することはできない。調停調書や審判で日時・頻度・受渡しの方法などが具体的に定められている場合には、間接強制(守らないと金銭の支払を命じる方法)が認められることがあると説明されているが、使えるかは取り決めの内容と事情による。

③慰謝料の有無と額。離婚の原因や証拠によって、請求できるか、いくらになるかが大きく変わる。

特に相談した方がよい場面

・親権や子との交流で意見が合わない、共同親権にするか迷っている
・相手から暴力や暴言を受けている(受けていた)。この場合は、直接の話し合いや合意書の作成より、避難・保護命令など安全の確保を優先して相談する
・生活費を止められている、別居中の生活費(婚姻費用)が払われない
・財産が多い、住宅ローンの残る家がある、相手の財産が分からない
・相手に不貞などがあり、慰謝料を請求したい(されている)
・相手が勝手に離婚届を出すおそれがある、または署名した後で気持ちが変わった
・取り決めを公正証書にしたいが、条項の書き方が分からない
・すでに離婚したが、条件が決まっていない、養育費が払われない、収入や進学などの事情が変わった

相談のタイミング

相談は離婚届を出す前が望ましい。次の期間に注意する。

・財産分与:離婚の時から5年以内に家庭裁判所に申し立てる(2026年4月1日より前の離婚は2年)(民法768条2項、令和6年法律第33号附則4条)。
・年金分割の請求:原則として離婚の翌日から5年(2026年4月1日より前の離婚は2年)(厚生年金保険法78条の2第1項ただし書・同法施行規則78条の3、令和7年法律第74号附則10条)。
・婚氏続称の届出:離婚の日から3か月以内(民法767条2項)。
・慰謝料:不法行為による損害賠償は、損害と加害者を知った時から3年(暴力などで身体を害された場合は5年)、不法行為の時から20年で時効にかかる(民法724条・724条の2)。古い不法行為には2020年4月1日施行の改正の経過措置があり、同日の時点で改正前の3年の時効が完成していた場合は5年の規定は適用されず、改正前の20年の期間が過ぎていた場合はなお改正前の規定による(平成29年法律第44号附則35条)。離婚そのものによる慰謝料は、離婚が成立した時から数えるとした判例がある(最高裁昭和46年7月23日判決)。夫婦間の権利は、婚姻の解消の時から6か月を経過するまで時効が完成しない(民法159条)。どれに当たるかで期限が変わるので、早めに確認する。

まとめ

協議離婚は、夫婦双方の離婚の意思と届の受理で成立する。夫婦の間に未成年の子がいれば、親権者の定め(または指定を求める調停・審判の申立て)がなければ届は受理されない。養育費・親子交流・財産分与・年金分割なども、できるだけ届の前に決めて書面に残す。2026年4月の改正で共同親権や法定養育費の制度ができたが、どちらも「何も決めなくてよい」という制度ではない。届に署名する前に一度相談しておくと安心である。

出典

民法159条・306条3号・308条の2・724条・724条の2・739条2項・763条・764条・765条・766条1項・766条の3・767条・768条2項・819条1項・7項・824条の2・824条の3/民事執行法22条5号/戸籍法27条の2/厚生年金保険法78条の2・78条の14、同法施行令3条の12の7、同法施行規則78条の3/民事執行法193条1項/平成29年法律第44号附則35条/令和6年法律第33号附則3条・4条/令和7年法律第74号附則10条(いずれも e-Gov 法令検索で原文確認・2026-10-18〜19)/最高裁昭和46年7月23日判決(民集25巻5号805頁)

最終確認日
2026年10月19日
法令の基準時
2026年10月時点の法令による
出典(外部サイト)
e-Gov 法令検索(デジタル庁)〔外部サイト〕/裁判所ウェブサイト〔外部サイト〕
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