問題提起
法テラスの立替制度を使うとき、「着手金」のほかに「実費」という言葉が出てくる。実費とは何か、どこまで法テラスが立て替えてくれるのか、本人が別に払わなければならない費用はあるのか――申し込む前に知っておくと、後で「思っていたより負担が大きい」という事態を避けやすくなる。
弁護士に相談する前に知っておきたい法律の要点を、分野ごとにスレッド形式でまとめています。
法テラスの立替制度を使うとき、「着手金」のほかに「実費」という言葉が出てくる。実費とは何か、どこまで法テラスが立て替えてくれるのか、本人が別に払わなければならない費用はあるのか――申し込む前に知っておくと、後で「思っていたより負担が大きい」という事態を避けやすくなる。
センターが、援助を行う案件(以下「援助案件」という。)について立て替える費用(以下「立替費用」という。)の種類は、次の各号に掲げるとおりとする。
一 代理援助又は書類等作成援助に係る報酬
二 代理援助又は書類等作成援助に係る実費
三 保証金
四 その他附帯援助に要する費用日本司法支援センター業務方法書11条1項(e-Gov法令検索で原文確認)
前条第1項第1号及び第2号に掲げる報酬及び実費の立替えは、次の各号に掲げる事項を踏まえて別表3に定める基準(以下「立替基準」という。)による。日本司法支援センター業務方法書12条柱書(e-Gov法令検索で原文確認)
① 実費とは何か。 法テラスの公式サイトは、実費を「裁判所に納める印紙代、予納郵券(切手)代など、事件処理のため実際に出費される費用」と説明している。弁護士・司法書士に支払う報酬(着手金・報酬金)とは別の費用である。
② 実費の額は立替基準で決まる。 法テラスの地方事務所長は、援助開始決定をするときに、立て替える費用の種類と額(または限度)と、本人が負担する実費の額を定める(業務方法書30条1項1号・2号)。額は立替基準(別表3)によって事件の種類ごとに決まる。たとえば法テラスの公式サイトは、弁護士が代理人となる代理援助について、依頼時の実費の目安を、自己破産事件で23,000円、離婚の示談交渉・調停で20,000円、離婚の訴訟で35,000円と案内している。弁護士・司法書士に裁判所に出す書類の作成だけを頼む書類作成援助では、別の基準が定められている(たとえば自己破産の申立書の作成では実費17,000円。業務方法書別表3の2)。書類作成援助は、手続の代理を頼む制度ではない。実際の額は審査で決まる。
③ 実費だけの立替えは原則としてできない。 法テラスの公式サイトは、原則として実費だけを立て替えることはできないと案内している。総合法律支援法は、代理人に支払う報酬とその事務の処理に必要な実費、または書類の作成を依頼して支払う報酬とその作成に必要な実費を立て替える業務を定めている(総合法律支援法30条1項2号イ・ハ)。例外的な扱いがあるかは、法テラスに確認する。
④ 足りなくなった実費は追加支出を申し立てる。 援助開始決定などで定めた額では足りなくなったときは、受任者(弁護士・司法書士)が、疎明資料を付けた追加費用支出申立書を地方事務所長に出して、追加の支出を申し立てることができる(業務方法書50条1項・2項)。地方事務所長は、相当と認めるときに、地方扶助審査委員の審査を経て、立替基準に従って追加の支出を決める(同条3項)。立替基準に合わないときなどは、認めない決定をすることがある(同条5項)。
⑤ 追加支出には項目ごとの限度額がある。 代理援助の立替基準は、追加支出の限度額を項目ごとに定め、限度額を超える部分は原則として本人の直接負担としている(業務方法書別表3の1(注)5)。たとえば、鑑定料は523,808円(医療過誤事件は838,095円)、記録の謄写料は20万円、通訳料・翻訳料は各104,761円(ハーグ条約事件は別の額)、それ以外の実費の合計は30万円が限度とされている。記録の謄写料は、その事件で通算5,000円を超える部分だけが追加支出の対象になる(民事法律扶助業務運営細則14条の2第1項)。
⑥ 自己破産・民事再生の予納金は扱いが違う。 破産手続開始の申立てをするときは、申立人は、破産手続の費用として裁判所が定める金額(予納金)を納めなければならない(破産法22条1項)。立替基準は、自己破産事件の予納金を、代理援助・書類作成援助のどちらでも原則として本人の直接負担とし、生活保護を受けている人の場合に限り、裁判所の決定に基づく予納金を追加して支出できるとしている(業務方法書別表3の1・3の2の備考)。この追加支出にも審査があり、代理援助では官報公告の費用を除く予納金について20万円の限度額が定められている(別表3の1(注)5)。破産手続開始の決定日に生活保護を受けている場合は、官報公告のための費用を、この限度額とは別に支出することができる(民事法律扶助業務運営細則14条の5第1項)。受給していれば必要な額の全部が自動的に支出されるわけではない。依頼時の実費(23,000円など)でどの費用がまかなわれ、裁判所に納める費用のうちどれを本人が別に用意するかは、事件と裁判所によって違うので、依頼する弁護士に確かめる。法テラスの公式サイトも、生活保護を受けている人を除き自己破産事件の予納金は立替えの対象にならず、民事再生事件の予納金は生活保護の有無にかかわらず立替えの対象にならないと案内している。
1. 弁護士・司法書士に相談し、事件の内容と、裁判所に納める費用などの見込みを確かめる。
2. 援助の申込みのときに、弁護士・司法書士を通じて事件の内容を法テラスに伝える。
3. 法テラスが審査をし、援助開始決定で、着手金と実費の額、本人が負担する実費の額などを決める(業務方法書30条1項)。
4. 法テラスは、立て替える費用を受任者に支払う。本人の立替金の返済は、事件が終わるのを待たず、援助開始決定の後から原則として毎月の分割で始まる(業務方法書30条3項)。
5. 事件の途中で鑑定や記録の謄写などが必要になり、実費が足りなくなったときは、受任者が追加支出を申し立て、法テラスが審査して決める(業務方法書50条)。
6. 事件が終わったら、終結決定で立替金の総額が確定する(業務方法書57条1項)。
実務の視点 鑑定・記録の謄写・通訳など費用がかかりそうな手続があるときは、依頼の段階で、受任する弁護士などに「どの費用が立替えの対象で、限度額を超えたらどうなるか」を確かめておくとよい。法テラスの立替金は、本人に代わって払われる費用であって、立て替えられた分は原則として返す必要がある。決定書に書かれた実費の額と、本人の直接負担とされた費用を、写しを残して確認しておく。
① 「実費も含めて全部無料」ではない。 立て替えられた実費も立替金の一部であり、原則として返す必要がある(業務方法書30条3項)。生活保護を受けている人などは、申請により返済の猶予や免除を受けられることがあるが、猶予は返済を待ってもらう制度で、返す義務がなくなるわけではない。免除も、申請して決定を受ける必要がある(業務方法書31条・65条)。
② 予納金は別に考える。 自己破産の予納金は、生活保護を受けている人を除き立替えの対象にならないので、本人が用意する必要がある。いくら必要かは裁判所の運用によって違うので、依頼する弁護士などに確かめる。
③ 事件の結果お金を受け取ったときは精算される。 受任した弁護士などが相手方から金銭を受け取ったときは、本人に渡さずに一時保管して法テラスに報告し(業務方法書49条1項)、終結決定の後に、まだ返していない立替金・報酬金・追加支出の対象となる実費を精算して、残りが本人に渡される(同条3項本文)。必要と認める事情があるときは、終結決定の前でも受け取った金銭の一部が本人に渡されることがある(同項ただし書)ので、生活費などに必要なときは受任者に相談する。本人が直接受け取ったときも、受任者に知らせて精算の方法を確かめる。
議論のある点 追加支出を認めるか、どれだけ認めるかは、立替基準と細則に従って事件ごとに法テラスの審査で判断される(業務方法書50条3項・5項)。限度額を超える費用は原則として本人の負担で、必要性が高いというだけで限度額を超える立替えが認められるわけではない。どの費用が本人の直接負担になるかを一般論だけで判断せず、弁護士や法テラスに相談してほしい。
・鑑定(医療・不動産など)や大量の記録の謄写が必要になりそうな事件
・自己破産を考えているが、予納金を用意できるか分からない
・外国語の通訳・翻訳が必要になる事件
・決定された実費では足りなくなりそうだと言われた
具体的な事案は、法律事務所、弁護士会の法律相談センターや法テラス等にご相談ください。
実費の見込みは、援助の申込み前の相談で確かめるのがよい。追加支出は審査を経て決まるので、費用が必要になると分かった時点で、早めに受任者に伝える。
法テラスが立て替える費用には、報酬のほかに、印紙代や郵便切手代などの実費が含まれる(業務方法書11条)。実費の額は立替基準で事件ごとに決まり、実費だけの立替えは原則としてできない。足りなくなった実費は追加支出を申し立てられるが、限度額があり、自己破産の予納金は生活保護を受けている人を除き立替えの対象にならない。
出典
総合法律支援法30条、破産法22条(e-Gov 法令検索で原文確認・2026-10-20)
日本司法支援センター業務方法書11条・12条・30条・31条・49条・50条・57条・65条・別表3(令和8年3月25日法務大臣認可の版)
民事法律扶助業務運営細則14条の2・14条の5
日本司法支援センター(法テラス)公式サイト「費用の目安(概要)」「自己破産事件 費用の目安」「離婚等請求事件 費用の目安」「立替制度に関するよくあるご質問」(2026-10-20確認)