問題提起
離婚したいが弁護士に払うお金がない、別居中で生活費(婚姻費用)を請求したい、子どもの養育費を決めたい――このような場面で、法テラスの代理援助が使われることは多い。ただし、手続ごとに費用が違い、事件の結果お金を受け取ったときの返済にも独特の決まりがある。
弁護士に相談する前に知っておきたい法律の要点を、分野ごとにスレッド形式でまとめています。
離婚したいが弁護士に払うお金がない、別居中で生活費(婚姻費用)を請求したい、子どもの養育費を決めたい――このような場面で、法テラスの代理援助が使われることは多い。ただし、手続ごとに費用が違い、事件の結果お金を受け取ったときの返済にも独特の決まりがある。
日本司法支援センター業務方法書は、法律そのものではなく、総合法律支援法に基づいて法務大臣の認可を受けた法テラスの規程である(総合法律支援法34条)。具体的な金額などは、民事法律扶助業務運営細則でも定められている。
被援助者は、事件により相手方等から得た金銭等が養育費その他被援助者の子の監護に要する費用として細則に定めるもの(以下「養育費等」という。)である場合には、前条の規定にかかわらず、当該養育費等から細則に定める金額を差し引いた残額(次項において「差引残額」という。)について、立替金の額に満つるまで、立替金の償還に充てなければならない。日本司法支援センター業務方法書60条の2第1項(e-Gov法令検索で原文確認)
理事長は、第1号に掲げる要件のいずれも満たす被援助者から、養育費を請求する事件及びその関連事件として細則に定めるもの(中略)について、終結決定又はその後の決定で定めた立替金の償還の免除を求める申請を受けた場合において、当該被援助者が第2号に掲げる要件のいずれかに該当すると認めるとき(中略)は、前条の規定にかかわらず、当該養育費請求等特定事件に係る立替金の償還未済額の償還の免除を決定することができる。日本司法支援センター業務方法書65条の2第1項柱書(e-Gov法令検索で原文確認)
① 援助の要件。 民事法律扶助の対象は、日本の国民と、日本に住所を有し適法に在留する人(国民等)である(総合法律支援法30条1項2号)。そのうえで、資力が基準以下であること、勝訴の見込みがないとはいえないこと、民事法律扶助の趣旨に適すること、の三つの要件が必要である(業務方法書9条)。法テラスの公式サイトは、離婚であれば離婚成立の見込みがあることが必要であると説明し、和解・調停などで紛争を解決する見込みがあるものも含むとしている。離婚を求められて対応する側も、事件の内容に応じて審査される。見込みが自分では分からなくても、まず相談してよい。
② 配偶者が相手方のときの資力の判断。 資力の基準では、原則として申込者と配偶者の収入・資産を合算するが、配偶者が事件の相手方であるときは合算しない(業務方法書別表1)。
③ 手続ごとの着手金と実費の目安。 離婚の調停・訴訟や婚姻費用の調停などの代理を依頼できるのは弁護士で、司法書士に裁判所に出す書類の作成を頼む場合は、代理援助ではなく書類作成援助になる。この記事は、弁護士に代理を頼む代理援助を説明する。法テラスの公式サイトは、依頼時の費用の目安を次のように案内している。離婚の示談交渉は着手金66,000〜110,000円・実費20,000円、離婚の調停は着手金88,000〜132,000円・実費20,000円、調停が成立せず訴訟も援助する場合は着手金165,000円・実費35,000円(調停の費用とは別にかかる)、訴訟から始める場合は着手金231,000円・実費35,000円、婚姻費用分担請求の調停・審判は着手金88,000〜132,000円・実費20,000円である。離婚と婚姻費用の請求などは別々の援助となる場合があり、関連する事件をあわせて援助するときは着手金の額を調整することがある。実際の額は事件の内容などにより審査で決まる。
④ 報酬金の考え方。 法テラスの公式サイトは、慰謝料や養育費などの金銭を得た場合には、得た金額の10%(税別)が報酬金の目安で、婚姻費用や養育費は2年分を上限とすると案内している。離婚だけが成立し金銭の支払がない場合は、基準に基づき審査で報酬金の額を決める。報酬金の額を決めるときは、相手方から将来の養育費の支払を受ける債権について債務名義(調停調書や、執行認諾文言のある公正証書〔執行証書。民事執行法22条5号〕など、強制執行の根拠となる文書)を得た場合も、金銭給付がある場合とみなされる(業務方法書57条2項)。
⑤ お金を受け取ったときの報酬金と返済。 事件の結果、相手方などから金銭等を得た場合は、報酬金の全部または一部を、立替えではなく本人が直接受任者に支払う(業務方法書57条3項)。ただし、将来の養育費について債務名義を得た場合などは、細則で定める132,000円を上限として、養育費に係る報酬金を立て替えることができる(業務方法書57条4項、民事法律扶助業務運営細則18条の2第1項)。
⑥ 養育費などを受け取ったときの返済の特例。 事件で得た金銭が養育費など子の監護に要する費用であるときは、その額から細則で定める99万円を差し引いた残額を、立替金の額に達するまで返済に充てる(業務方法書60条の2第1項、細則18条の2第4項)。即時に全額を返すことが相当でない事情があれば、返済に充てる額がさらに減らされることがある(業務方法書60条の2第2項)。この特例は、受け取った養育費などから返済に充てる額を調整するもので、立替金そのものを99万円分免除する制度ではない。残る立替金は、決められた方法で返すのが原則である。
⑦ ひとり親の返済免除の特例。 養育費を請求する事件と、その関連事件(離婚、婚姻費用、親権者の指定・変更、親子交流、保護命令などで、養育費の事件と同じ相手方とするもの)の立替金については、次のすべてを満たし、かつ生活保護を受けているかそれに準ずる程度に生計が困難な人は、終結決定の後に返済の免除を申請できる(業務方法書65条の2第1項、細則32条の3)。
・「償還の免除を求める申請をする援助案件において養育費の支払を請求したこと」(業務方法書65条の2第1項1号イの文言)
・申請のときに法律上の婚姻関係がないこと
・申請のときに義務教育対象年齢までの子と同居し、その子を扶養していること
申請すれば必ず免除されるわけではなく、業務方法書60条・60条の2により決められた額の返済をしていないときは免除されない(同項ただし書)。年齢などの要件は申請のときを基準に判断されるので、子の年齢が境目に近いときは、事件が終わる前から弁護士や法テラスに確かめておく。この文言と、関連事件(保護命令など、その手続の中で養育費を請求しない事件を含む)が免除の対象に含まれることとの関係、つまりどの援助案件について申請できるかは、細則とあわせて法テラスに確認する。この特例の要件に当たらない人も、一般の免除の制度(業務方法書65条)の要件を満たせば、免除を申請できる。
1. 弁護士に相談し、離婚・婚姻費用・養育費のどの手続を、どの順番で進めるかを確かめる。
2. 弁護士などを通じて援助を申し込む。配偶者が相手方であることを申告し、本人の収入・資産の資料を出す。
3. 法テラスの審査を経て援助開始決定が出たら、決定書・契約書を確かめて署名し、返済を始める。生活保護を受けている人などは、返済の猶予を申請できる(業務方法書31条)。
4. 弁護士が示談交渉・調停・訴訟などを進める。
5. 事件が終わったら、終結決定で報酬金と、受け取った金銭からの返済の額・方法が決まる(業務方法書57条・59条・60条の2)。
6. 要件を満たすひとり親などは、終結決定の後に返済の免除を申請する。
実務の視点 相手方から養育費や解決金が支払われるときは、受任した弁護士が受け取り、法テラスに報告したうえで精算することが多い(業務方法書48条2項・49条)。直接受け取ってしまうと精算が難しくなることがあるので、支払先は弁護士と相談して決める。DV被害を受けているときは、住所を相手方に知られないための手当てを、依頼の最初の段階で弁護士に伝えておく。
① 離婚と婚姻費用は別々の援助になることがある。 それぞれに着手金・実費がかかる場合があるので、全体の費用の見込みを最初に確かめる。
② 養育費を受け取っても全部を返済に回すわけではない。 養育費などは99万円を差し引いた残額を返済に充てる特例がある(業務方法書60条の2第1項)。
③ ひとり親の免除は申請が必要で、審査がある。 要件を満たさないとき、または相当でないと認められるときは、免除を認めない決定がされる(業務方法書65条の2第7項)。
議論のある点 着手金の増額・減額、関連する事件をまとめて援助するときの調整、受け取った金銭から返済に充てる額の減額、免除の可否は、事件ごとに法テラスの審査で判断される。DV事案など処理が難しい事件の扱いも事情による。一般論だけで判断せず、弁護士や法テラスに相談してほしい。
・離婚・婚姻費用・養育費を一度に請求したいが、費用の全体像が分からない
・相手方から暴力を受けていて、住所を知られたくない
・相手方から養育費や解決金を受け取る見込みがあり、返済との関係が気になる
・ひとり親で、事件が終わった後の返済が難しい
具体的な事案は、法律事務所、弁護士会の法律相談センターや法テラス等にご相談ください。
婚姻費用は、請求した時期などによって受け取れる範囲が変わることがあるので、別居した後はできるだけ早く相談するとよい。法テラスの公式サイトは、立替制度の審査には通常2週間程度かかると案内している。相談や援助の申込みだけでは、調停や裁判所の期限は止まらない。
離婚・婚姻費用・養育費の事件でも法テラスの代理援助を使え、配偶者が相手方であれば配偶者の資力は合算しない。着手金・実費は手続ごとの立替基準で決まり、事件の結果お金を受け取ったときは報酬金と返済の精算がある。養育費を受け取ったときの返済の特例や、ひとり親の免除の特例もある。
出典
民法766条、民事執行法22条、総合法律支援法30条・34条(e-Gov 法令検索で原文確認・2026-10-20)
日本司法支援センター業務方法書9条・31条・48条・49条・57条・59条・60条・60条の2・65条・65条の2・別表1・別表3(令和8年3月25日法務大臣認可の版)
民事法律扶助業務運営細則18条の2・32条の3
日本司法支援センター(法テラス)公式サイト「離婚等請求事件 費用の目安」「無料法律相談に関するよくあるご質問」(2026-10-20確認)