問題提起
法テラスの費用の立替えは、どんな問題にでも使えるわけではない。対象となる手続が決まっており、さらに審査で要件を満たすかが判断される。自分の問題が対象になりそうかを知っておくと、相談のときに話が早い。
弁護士に相談する前に知っておきたい法律の要点を、分野ごとにスレッド形式でまとめています。
法テラスの費用の立替えは、どんな問題にでも使えるわけではない。対象となる手続が決まっており、さらに審査で要件を満たすかが判断される。自分の問題が対象になりそうかを知っておくと、相談のときに話が早い。
代理援助は、次の各号に掲げる方法とし、それぞれ当該各号に定める手続を対象とする。
一 裁判代理援助 民事訴訟、民事保全、民事執行、破産、非訟、調停、家事審判その他裁判所における民事事件、家事事件及び行政事件に関する手続
二 特定行政不服申立代理援助 理事長が別に定める特定行政不服申立手続
三 裁判前代理援助 民事裁判等手続に先立つ和解の交渉で、これにより迅速かつ効率的な権利実現が期待できるなど案件の内容や申込者の事情などにより弁護士・司法書士等による継続的な代理が特に必要と認められるもの
2 書類等作成援助は、前項第1号又は第2号に定める手続を対象とする。日本司法支援センター業務方法書8条(e-Gov法令検索で原文確認)
① 裁判所での手続。 民事訴訟、民事保全、民事執行、破産、非訟、調停、家事審判その他裁判所における民事事件・家事事件・行政事件に関する手続が対象である(業務方法書8条1項1号)。代理援助と書類作成援助の両方の対象になる。法テラスの公式サイトは、立替制度の費用の目安として自己破産事件・離婚等請求事件などを示している。なお、無料法律相談で相談できることと、費用の立替えの対象になることは別である。
② 裁判の前の和解の交渉。 裁判の前の和解の交渉は、それによって迅速かつ効率的な権利実現が期待できるなど、案件の内容や申込者の事情から、弁護士などによる継続的な代理が特に必要と認められるものに限って、代理援助の対象になる(業務方法書8条1項3号)。交渉ならすべて対象になるわけではなく、書類作成援助の対象にはならない(同条2項)。法テラスの公式サイトは、立替制度の費用の目安として任意整理事件も示している。
③ 特定の行政不服申立て。 認知機能が十分でないために自己の権利の実現が妨げられているおそれがある人(特定援助対象者)が、自立した生活を営むために必要な公的給付について行う一定の行政不服申立ての手続も、代理援助と書類作成援助の対象になる(総合法律支援法30条1項2号イ(1)、業務方法書8条1項2号・2項)。
④ 刑事事件は対象外である。 民事法律扶助の対象は、民事・家事・行政に関する手続である。民事法律扶助による無料法律相談も、刑事に関するものを除いている(総合法律支援法30条1項2号ホ)。刑事事件の弁護は、国選弁護などの別の制度による。犯罪被害者やDV等の被害者のためには、法テラスに別の相談・援助の制度がある。
⑤ 審査の要件。 対象の手続に当たっても、資力の基準を満たすこと、勝訴の見込みがないとはいえないこと、民事法律扶助の趣旨に適することのすべてが必要である(業務方法書9条)。法テラスの公式サイトは、勝訴の見込みには、和解・調停・示談などで紛争を解決する見込みがあるものや、自己破産の免責の見込みがあるものも含まれると説明している。訴えられた側も、勝てそうにないと決めつけずに相談するとよい。要件を満たしても、外国での事件処理が必要なとき、著しく特殊または専門的な能力が必要なときなど、援助することが著しく困難なときは、援助不開始決定をすることができる(業務方法書32条1項)。
1. 解決したい問題が、裁判所の手続(訴訟・調停・破産など)で解決するものか、裁判の前の交渉で解決を目指すものか、公的給付についての行政不服申立てかを整理する。
2. 刑事事件ではないことを確かめる。
3. 資力の基準を満たしそうかを確かめる。
4. 弁護士・司法書士に相談し、見通し(勝訴の見込みがないとはいえないか)と、どの方法(代理援助・書類作成援助)が合うかを聞く。
5. 費用の立替えを申し込み、法テラスの審査を受ける。
実務の視点 自己破産や民事再生の申立てについて援助を申し込んだ人や援助開始決定を受けた人が、破産手続や再生手続の開始の決定の前に、ほかの事件について援助を申し込んだ場合などには、そのほかの事件について原則として援助不開始決定をする扱いがある(民事法律扶助業務運営細則9条の5。理事長が別に定める事件を除く)。複数の問題を抱えているときは、最初の相談でまとめて伝え、どう進めるかを弁護士に相談する。自分で判断して、ほかの問題の相談を後回しにしない。
① 交渉だけの事件も対象になりうるが、限られる。 裁判の前の和解の交渉は、継続的な代理が特に必要と認められる場合に限って対象になる(業務方法書8条1項3号)。任意整理なども、この要件のもとで扱われる。
② 会社などの法人は使えない。 民事法律扶助の対象は、国民または日本に住所があり適法に在留する個人(国民等)である(総合法律支援法30条1項2号)。法テラスの公式サイトも、法人・組合等の団体は対象者に含まれないと案内している。
③ お金の回収を目的とする事件では、回収の見通しも確かめられる。 法テラスの公式サイトは、回収の可能性がない場合や、極端に訴額が少ない訴訟は、費用対効果の観点から援助できないと案内している。ただし、相手方の今の収入が少ないことだけで、すべての事件が対象外になるわけではない。
議論のある点 裁判の前の交渉が「継続的な代理が特に必要」に当たるか、「勝訴の見込みがないとはいえない」「民事法律扶助の趣旨に適する」に当たるかは、事件の内容や証拠の状況などによって、法テラスの審査で判断が分かれる。一般論だけで判断せず、弁護士・司法書士に相談してほしい。
・借金、離婚、相続、労働などの問題で、弁護士に依頼する費用を払えるか不安がある
・交渉で解決したいが、代理援助の対象になるか分からない
・同時に複数の問題を抱えている
・刑事事件と民事の問題が両方ある(例:交通事故の加害者として刑事手続と損害賠償の両方がある)
具体的な事案は、法律事務所、弁護士会の法律相談センターや法テラス等にご相談ください。
費用の立替えを使えるかは、依頼する前に確かめる。援助を使う事件は、原則として法テラスと契約している弁護士・司法書士が担当するので、自分で選んだ相談先には、法テラスの援助を扱っているかを契約の前に確かめる。援助の申込みや法律相談をしただけでは、時効や裁判所・行政機関の手続の期限は止まらない。審査には時間がかかるので、裁判所や行政機関から書類が届いているとき、権利を行使する期限が近いとき、差押えなど急ぎの問題があるときは、相談の冒頭で伝え、期限への対応と申込みを並行して進める。
法テラスの費用の立替えの対象は、裁判所での民事・家事・行政事件の手続、特定援助対象者の一定の行政不服申立て、継続的な代理が特に必要と認められる裁判前の和解の交渉である(業務方法書8条)。刑事事件は対象外である。対象の手続に当たっても、資力・勝訴の見込み・扶助の趣旨の要件と審査があるので、まず弁護士・司法書士に相談する。
出典
総合法律支援法30条(e-Gov 法令検索で原文確認・2026-10-20)
日本司法支援センター業務方法書8条・9条・32条(令和8年3月25日法務大臣認可の版)
民事法律扶助業務運営細則9条の5(日本司法支援センター。令和8年細則第9号による改正後)
日本司法支援センター(法テラス)公式サイト「無料法律相談のご利用の流れ」「弁護士・司法書士費用等の立替制度のご利用の流れ」「無料法律相談に関するよくあるご質問」(2026-10-20確認)