期限に注意
地方事務所長が猶予を認めない決定(一部だけ認める決定を含む)に不服があるときは、決定の通知が到達した日から30日以内に、地方事務所長に不服申立書を出して不服申立てができる(業務方法書69条1項・2項)。期限を過ぎると申立てができなくなることがある。開封した日や相談した日から数えるのではないので、通知が届いた日が分かるもの(封筒など)を残し、決定が届いたら早めに弁護士や法テラスに確認してほしい。
弁護士に相談する前に知っておきたい法律の要点を、分野ごとにスレッド形式でまとめています。
地方事務所長が猶予を認めない決定(一部だけ認める決定を含む)に不服があるときは、決定の通知が到達した日から30日以内に、地方事務所長に不服申立書を出して不服申立てができる(業務方法書69条1項・2項)。期限を過ぎると申立てができなくなることがある。開封した日や相談した日から数えるのではないので、通知が届いた日が分かるもの(封筒など)を残し、決定が届いたら早めに弁護士や法テラスに確認してほしい。
法テラスに立て替えてもらった弁護士費用を毎月返しているが、失業や病気で払えなくなった――そのようなときに、返済を待ってもらう「猶予」の制度がある。ただし、新たに猶予を受けるには原則として申請が必要で、事件の途中か終わった後かで要件が違う。また、申請しただけで返済が止まるわけではない。
地方事務所長は、被援助者から償還の猶予を求める申請を受け、被援助者が次の各号に掲げる要件のいずれかに該当すると認めるときは、援助開始決定において、援助の終結決定までの間における立替金の償還を猶予することができる。
一 生活保護法による保護を受けているとき。
二 前号に該当する者に準ずる程度に生計が困難であるとき。日本司法支援センター業務方法書31条1項(e-Gov法令検索で原文確認)
地方事務所長は、被援助者から、終結決定又はその後の決定で定めた立替金の償還の猶予を求める申請を受けた場合において、被援助者が即時償還又は割賦償還により償還をすることが著しく困難であると認めるときは、3年を超えない期間を定めて、立替金の償還を猶予する決定をすることができる。日本司法支援センター業務方法書64条2項(e-Gov法令検索で原文確認)
① 援助開始のときの猶予(事件の途中まで)。 利用者が申請し、生活保護を受けているか、それに準ずる程度に生計が困難であると地方事務所長が認めるときは、援助開始決定で、終結決定までの間の返済を猶予することができる(業務方法書31条1項)。要件に当たらないとき、または当たっても猶予が相当でないときは、申請の全部または一部を認めない決定がされる(同条2項)。
② 事件の途中で事情が変わったときの猶予。 援助開始決定の後、終結決定までの間でも、利用者が申請し、生活保護を受けるようになったときなど上の①と同じ要件に当たると認められれば、終結決定までの返済を猶予する決定をすることができる(業務方法書34条3項)。法テラスの公式サイトは、生活保護を受給することになった場合は返済を猶予することができ、受給が終了した場合は返済を開始してもらうと案内している。受給が終わった後も生活保護に準ずる程度に生計が困難なときは、①の要件に当たるかを法テラスに相談する。受給の終了だけで猶予の対象外と自己判断しない。
③ 「生活保護に準ずる程度に生計が困難」の意味。 民事法律扶助業務運営細則は、本人と配偶者の手取り月収の合計が、資力基準の基本の額を70%に減じたうえで計算した額以下であることと、本人と配偶者の不動産・預貯金などの資産を返済に充てられない合理的な事情があること、の両方を満たすときをいうとしている(細則31条)。児童手当・児童扶養手当などは収入から控除することができる(細則31条の2)。配偶者の収入の扱い(終結決定後に配偶者と別に住み扶養を受けられない場合など)や資産の扱いには細かな定めがあるので、自分で対象外と判断せず、法テラスに確認する。
④ 事件が終わったときの猶予。 終結決定のときに、利用者が申請し、一括でも分割でも返すことが著しく困難であると認められるときは、終結決定で、3年を超えない期間を定めて返済の猶予を定めることができる(業務方法書59条の2第1項)。申請は所定の申請書を地方事務所長に出して行う(同条2項)。猶予の期間が満了したときは、地方事務所長が資力などを考えて、返済を再開させるか、さらに猶予するかを決める(同条4項)。
⑤ 事件が終わった後の猶予と延長。 終結決定の後でも、利用者が申請し、返すことが著しく困難であると認められるときは、3年を超えない期間を定めて返済を猶予する決定をすることができる(業務方法書64条2項)。利用者の申請により、特別の事情があると認められるときは、猶予の期間を延長する決定をすることができる(同条3項)。
⑥ 免除の申請中の猶予。 返済の免除を申請したときは、理事長が必要と認めれば、免除についての決定があるまで返済を猶予することができる(業務方法書65条4項)。
1. 返済が難しくなったら、できるだけ早く、利用している法テラスの地方事務所に連絡する。すでに支払日を過ぎているときも放置しない。
2. 事件の途中であれば、受任している弁護士などにも事情を伝える。
3. 地方事務所の案内に従って、申請書と、生活保護受給証明書や収入・資産の資料など事情を示す資料を出す。
4. 地方事務所長が要件に当たるかを判断し、猶予するか、返し方を変更するか、認めないかを決める(業務方法書31条2項・34条・59条の2・64条)。決定が出るまでの返済や引落しの扱い、猶予が始まる日と終わる日は、法テラスに確かめる。
5. 認めない決定に不服があるときは、通知が到達した日から30日以内に不服申立てをする(業務方法書69条)。
6. 猶予の期間が終わる時期に、返済の再開やさらに猶予するかを確かめる。
実務の視点 猶予は申請してはじめて検討されるので、払えない月が続いても黙っていると督促の対象になる(業務方法書61条)。返済額を下げれば払えるという場合は、猶予ではなく返し方の変更(業務方法書34条1項・64条1項)で足りることもある。収入が減ったことを示す資料(離職票・給与明細・診断書など)を早めにそろえておくとよい。
① 猶予は免除ではない。 猶予の期間が終われば、原則として返済を再開する。返済の義務そのものを免れるには、免除の要件を満たして免除の決定を受ける必要がある(業務方法書65条)。
② 自動的には猶予されない。 生活保護を受けていても、猶予を受けるには申請が必要である(業務方法書31条1項・34条3項)。
③ 事件でお金を受け取ったときは別に精算がある。 生活保護を受けていても、事件で相手方から金銭等を得たときは、その金銭等から返済に充てることが必要になる(業務方法書60条)。受け取ったお金を使う前に、受任した弁護士と法テラスに精算と猶予の扱いを確かめる。
④ 猶予が認められないこともある。 要件に当たらないとき、要件に当たっても猶予が相当でないときは、認めない決定がされる(業務方法書31条2項・59条の2第5項)。
議論のある点 「準ずる程度に生計が困難」「償還をすることが著しく困難」に当たるか、猶予が相当か、どれくらいの期間猶予するか、延長の「特別の事情」があるかは、利用者の収入・資産・家族の状況などを踏まえて法テラスが判断する。一般論だけで判断せず、弁護士や法テラスに相談してほしい。
・生活保護を受けるようになった、または受けることになりそうだ
・失業・病気・介護などで収入が大きく減った
・猶予の期間が終わるが、まだ返済できる見込みがない
・督促が届いたが、払えない事情がある
・猶予を認めない、または一部だけ認める決定が届いた
具体的な事案は、法律事務所、弁護士会の法律相談センターや法テラス等にご相談ください。
払えないと分かった時点で、できるだけ早く連絡するのがよい。生活保護を受けるようになったときは、受給が決まった時点で法テラスに知らせる。
法テラスの立替金の返済は、申請により猶予されることがある。事件の途中は、生活保護を受けているかそれに準ずる場合に、終結決定までの間の返済が猶予されうる。事件の終結のとき・その後は、返すことが著しく困難な場合に、3年を超えない期間で猶予されうる(特別の事情があれば延長の制度もある)。猶予は免除とは違うので、期間が終わった後の見通しも含めて法テラスに相談する。
出典
日本司法支援センター業務方法書31条・34条・59条の2・60条・61条・64条・65条・69条(令和8年3月25日法務大臣認可の版)
民事法律扶助業務運営細則31条・31条の2
日本司法支援センター(法テラス)公式サイト「法テラスをご利用中の方」(2026-10-20確認)