期限に注意
返済の免除を認めない決定(業務方法書65条5項)に不服があるときは、決定の通知が到達した日から30日以内に、理事長に不服申立てができる(業務方法書65条の3第1項)。期限を過ぎると申立てができなくなることがある。開封した日や相談した日から数えるのではないので、通知が届いた日が分かるもの(封筒など)を残し、決定が届いたら早めに弁護士や法テラスに確認してほしい。
弁護士に相談する前に知っておきたい法律の要点を、分野ごとにスレッド形式でまとめています。
返済の免除を認めない決定(業務方法書65条5項)に不服があるときは、決定の通知が到達した日から30日以内に、理事長に不服申立てができる(業務方法書65条の3第1項)。期限を過ぎると申立てができなくなることがある。開封した日や相談した日から数えるのではないので、通知が届いた日が分かるもの(封筒など)を残し、決定が届いたら早めに弁護士や法テラスに確認してほしい。
生活保護を受けていると、弁護士費用を払う余裕はない。法テラスの立替制度は使えるのか、使ったら保護費から毎月返さなければならないのか――生活保護を受けている人には、返済の猶予と免除の制度が用意されている。ただし、どちらも申請が必要で、事件で受け取ったお金があるときは注意点がある。
地方事務所長は、被援助者から償還の猶予を求める申請を受け、被援助者が次の各号に掲げる要件のいずれかに該当すると認めるときは、援助開始決定において、援助の終結決定までの間における立替金の償還を猶予することができる。
一 生活保護法による保護を受けているとき。日本司法支援センター業務方法書31条1項(e-Gov法令検索で原文確認)
理事長は、被援助者から、終結決定又はその後の決定で定めた立替金の償還の免除を求める申請を受けた場合において、被援助者が次の各号に掲げる要件のいずれかに該当すると認めるときは、立替金の償還未済額の償還の免除を決定することができる。ただし、被援助者が相手方等から金銭等を得、又は得る見込みがあるときは、当該金銭等の価額の100分の25に相当する金額については、扶養料、医療費その他やむを得ない支出を要するなど免除を相当とする特別の事情のない限り、その償還の免除を決定することができない。
一 生活保護法による保護を受けているとき。日本司法支援センター業務方法書65条1項(e-Gov法令検索で原文確認)
① 立替制度を使うこと自体はできる。 法テラスの公式サイトは、生活保護を受給している場合でも立替制度を利用でき、受給中は返済が猶予され、事件がすべて終了した後も受給しているときは返済の免除の申請ができると案内している。援助を受けるための三つの要件(資力・勝訴の見込みがないとはいえないこと・民事法律扶助の趣旨に適すること)は、生活保護を受けている人にも必要である(業務方法書9条)。
② 事件中の返済の猶予。 申請により、生活保護を受けていると認められれば、援助開始決定で、終結決定までの返済が猶予されうる(業務方法書31条1項1号)。ここでいう「終結決定」は、法テラスが援助を終わらせる決定で、裁判そのものが終わる日と同じとは限らない(書類作成援助では、裁判の手続が続いていても援助が終わることがある)。事件の途中で生活保護を受けるようになったときも、申請すれば終結決定までの返済が猶予されうる(業務方法書34条3項)。法テラスの公式サイトは、生活保護の受給が終了した場合は返済を開始してもらうと案内している。受給が終わった後も生活が苦しいときは、生活保護に準ずる程度に生計が困難な場合の猶予(業務方法書31条1項2号・34条3項)に当たるかを相談する。
③ 事件が終わった後の免除の申請。 法テラスで利用した援助事件がすべて終わり終結決定がされた後、生活保護を受けているときは、免除を申請できる(業務方法書65条1項1号)。法テラスの公式サイトは、免除申請書に、免除申請日から3か月以内に発行された(申請の日からさかのぼって3か月以内に発行された)生活保護受給証明書を添えて出すよう案内している。免除の申請だけで返済が当然に止まるわけではないので、審査中の返済の扱いも確かめる(業務方法書65条4項)。生活保護を受けている人は、インターネットで免除を申請できるサービスも案内されている(業務方法書65条3項)。
④ 相手方から得たお金の25%。 事件で相手方などから金銭等を得た、または得る見込みがあるときは、その価額の25%に当たる額については、扶養料・医療費などやむを得ない支出があるなどの特別の事情がない限り、免除されない(業務方法書65条1項ただし書)。これは、まだ返していない立替金を超えて追加で払うという意味ではない。法テラスの公式サイトも、生活保護を受けていることだけを理由に必ず免除になるわけではなく、免除申請の時点の経済状況や事件で得た経済的利益を踏まえて判断すると案内している。
⑤ 自己破産の予納金の例外。 自己破産事件の予納金は、原則として本人の直接負担で立替えの対象にならないが、生活保護を受けている人は、裁判所の決定に基づく予納金を追加して支出できる(業務方法書別表3の1・3の2の備考)。代理援助では、官報公告の費用を除く予納金の追加支出の限度額は20万円とされ(別表3の1(注)5)、細則は、破産手続開始の決定日に生活保護を受けている場合に、官報公告の費用をこの限度額とは別に支出できるとしている(民事法律扶助業務運営細則14条の5第1項)。追加支出には審査があり、受給していれば必要な額の全部が自動的に支出されるわけではないので、申立て前に弁護士に確かめる。
⑥ 生活保護の制度上の届出と返還。 生活保護を受けている人は、収入などに変動があったときは、すみやかに保護の実施機関(福祉事務所など)に届け出なければならない(生活保護法61条)。急迫の場合などに、資力があるにもかかわらず保護を受けたときは、受けた保護金品に相当する額の範囲で、保護の実施機関が定める額を返還しなければならない(生活保護法63条)。事件で受け取ったお金は、法テラスへの返済の問題とは別に、この届出や、収入としての扱い・返還の問題にも関わる。受け取ったお金の全部が当然に返還の対象になるわけではなく、お金の性質や、資力がいつ生じたかなどによって扱いが変わる。生活保護が終わった後に受け取ったお金でも、受給中の事故や紛争に関するものであれば、返還が問題になることがある。
1. 弁護士・司法書士に相談するときに、生活保護を受けていることを伝える。
2. 援助の申込みで、生活保護受給証明書などを出し、事件中の返済の猶予を申請する。
3. 援助開始決定で、終結決定までの返済が猶予される(認められた場合)。
4. 事件の結果お金を受け取る見込みがあるときは、受任した弁護士と、法テラスへの精算と福祉事務所への届出の進め方を相談する。
5. 事件がすべて終わり終結決定がされたら、生活保護受給証明書を付けて免除を申請する。
6. 免除を認めない決定が届いたら、理由を確かめ、必要なら30日以内に不服申立てをする(業務方法書65条の3第1項)。
実務の視点 生活保護を受けている人が事件で慰謝料や解決金を受け取ると、法テラスへの精算、福祉事務所への届出、保護費の返還などが重なり、手元に残る額が想定より少なくなることがある。お金を受け取る前に、弁護士とケースワーカーの双方に見通しを確かめておくとよい。生活保護が終わったときは、法テラスにも知らせる。
① 生活保護を受けていれば自動的に返済がなくなるわけではない。 猶予も免除も申請が必要で、免除は事件がすべて終わってから申請する。
② 事件中に生活保護が終わったら返済が始まる。 猶予の要件がなくなれば、返済を始めることになる。
③ 受け取る予定のお金を、精算の確認前に使わない。 法テラスの公式サイトは、取得した金銭等の25%に当たる額(まだ返していない額が上限)を返済に充てていなければ、原則として免除できないと案内している。それ以外の残りの額の免除も、申請に基づいて審査される。受け取ったお金を使う前に、受任した弁護士と法テラスに精算の方法を確かめる。
議論のある点 事件で受け取ったお金のうち、法テラスへの返済に充てる額と、生活保護法63条により福祉事務所に返還する額の関係、25%の例外となる「特別の事情」があるか、福祉事務所が返還額をどう定めるかは、受け取ったお金の性質(損害賠償・慰謝料・養育費など)や事情によって判断が分かれうる。一般論だけで判断せず、弁護士・福祉事務所・法テラスに相談してほしい。
・生活保護を受けていて、弁護士に依頼したい事件がある
・事件の途中で生活保護を受けるようになった、または終わった
・事件で慰謝料や解決金を受け取る見込みがある
・生活保護を受けていて自己破産を考えている
・福祉事務所から返還を求める決定を受けた
・免除を認めない決定が届いた
具体的な事案は、法律事務所、弁護士会の法律相談センターや法テラス等にご相談ください。
援助を申し込むときに、生活保護を受けていることを必ず伝え、猶予の申請を一緒にする。事件の終結決定の通知が届いたら、早めに免除の申請を準備する。
生活保護を受けている人も法テラスの立替制度を使え、申請により事件中の返済が猶予され、事件の終結後も受給していれば免除を申請できる。自己破産の予納金にも例外がある。ただし、事件で受け取ったお金があるときは、25%の扱いや福祉事務所への届出・返還があるので、弁護士・福祉事務所と相談して進める。
出典
生活保護法61条・63条(e-Gov 法令検索で原文確認・2026-10-20)
日本司法支援センター業務方法書9条・31条・34条・65条・65条の3・別表3(令和8年3月25日法務大臣認可の版)
民事法律扶助業務運営細則14条の5
日本司法支援センター(法テラス)公式サイト「立替制度に関するよくあるご質問」「法テラスをご利用中の方」「立替金の償還免除申請に関するよくあるお問合せ」(2026-10-20確認)