問題提起
法テラスの援助を使いたいとき、「どんな書類が必要なのか」「手元にない書類はどうするのか」が分からず、手続が止まってしまうことがある。無料法律相談と費用の立替えでは、求められる書類が違う。前もって知っておくと、準備がスムーズになる。
弁護士に相談する前に知っておきたい法律の要点を、分野ごとにスレッド形式でまとめています。
法テラスの援助を使いたいとき、「どんな書類が必要なのか」「手元にない書類はどうするのか」が分からず、手続が止まってしまうことがある。無料法律相談と費用の立替えでは、求められる書類が違う。前もって知っておくと、準備がスムーズになる。
第24条の申込みをする者は、所定の申込書(以下「援助申込書」という。)に、住所、氏名、職業、収入、資産及び家族(中略)並びに事件の相手方がいる場合にあっては相手方の住所及び氏名その他必要な事項を記入し、提出しなければならない。(以下略)日本司法支援センター業務方法書25条1項(e-Gov法令検索で原文確認)
地方事務所長は、申込者が次の各号に掲げる要件のいずれかに該当するときは、援助の申込みの取下げがあったものとみなすことができる。
一 事件調書の作成に協力しないとき。
二 提出を求めた書類を提出しないとき。
三 その他申込案件の審査に協力しないとき。日本司法支援センター業務方法書27条2項(e-Gov法令検索で原文確認)
① 無料法律相談では、援助申込書に記入する。 無料法律相談を受けるときは、相談の前に援助申込書に記入する(業務方法書25条1項)。法テラスの公式サイトは、予約のときに収入(平均月収)や資産(現金・預貯金)を聞くと案内し、相談には裁判所や相手方から届いた書類(訴状、調停の呼出状、請求書など)を持参するよう案内している。借金の相談では、借入先(名称・住所)、借入時期、現在の借金の額を一覧にしたメモを持参するよう案内している。
② 費用の立替えの審査では、本人と家族を確かめる書類を出す。 申込者が日本人であるときは、世帯全員の住民票の写し(本籍、筆頭者、続柄の記載のあるもの)を出す(民事法律扶助業務運営細則20条1項1号ア)。外国人であるときは、在留カードまたはこれに代わる書面を出す(同号イ。写しの提出か原本の提示かは、提出先の指示に従う)。法テラスの公式サイトは、住民票について「申込みから3ヶ月以内に発行されたもの」を求めている。どの日を基準に3か月を数えるかは、提出先に確かめる。法テラスの案内は個人番号(マイナンバー)の記載を求めていない。個人番号を含む情報は法律で定められた場合を除いて提供してはならない(番号法19条)ので、住民票は個人番号の記載のないものを取る。
③ 資力申告書と収入の資料を出す。 生活保護を受けていない申込者は、所定の資力申告書を出す(同細則20条1項2号)。資力の確認では、原則として本人だけでなく配偶者の収入・資産も関係し、配偶者が事件の相手方である場合は除かれる(同号は「申込者及び配偶者等(事件の相手方である場合を除く。)」と定める)。世帯全員の住民票を出すことと、同居している家族全員の収入を合計することは別である。ただし、費用の立替えでは、配偶者以外の同居家族が家計に貢献していることが明らかなときは、その貢献の範囲で収入に加えることがある(業務方法書別表1第1の2の一)ので、生活費の負担の状況も申告する。収入を証明する資料として、生活保護受給証明、給与明細書、源泉徴収票、課税証明書または非課税証明書、確定申告書の写し、各種公的年金・手当の受給証・通知などのうち、必要と認められるものを出す(同項3号)。法テラスの公式サイトは、給与生活者なら給与明細(直近2か月分)と賞与明細、または源泉徴収票・課税証明書など、自営業者なら確定申告書の写し(直近1年分)などを例に挙げている。
④ 資産と事件の内容、返済口座の資料を出す。 法テラスの公式サイトは、現金・預貯金以外の資産があるときは固定資産評価証明書など、事件の内容を確かめる資料(債務整理なら債務一覧表、離婚事件なら戸籍謄本、交通事故なら交通事故証明書と診断書など)、立替金の返済に使う口座の資料(口座振替依頼書の写し、通帳やキャッシュカードの写しなど)を挙げている(同細則20条1項4号も参照)。
⑤ 生活保護を受けている人は一部が不要になる。 申込者が生活保護を受けているときは、資力申告書の提出は原則として不要で(同細則20条1項2号。ただし地方事務所長が必要と認めるときは求められる)、返済口座の書類の写しなども要らない(同項柱書ただし書)。生活保護受給証明などを出す。
以下は一般的な例である。国籍、生活保護を受けているかどうか、書類を取れない事情などによって、必要な書類は違うので、取る前に確かめる。
1. 相談した弁護士・司法書士に、立替えを申し込みたいと伝え、必要な書類の一覧をもらう。
2. 市区町村の窓口で、世帯全員の住民票の写し(本籍・筆頭者・続柄の記載のあるもの)と、必要なら課税証明書などを取る。
3. 給与明細、源泉徴収票、年金の通知など、収入の資料を集める。
4. 提出が必要な場合は、資力申告書に記入する。
5. 事件の資料と、必要な場合は返済に使う口座の資料をそろえ、提出の方法を確かめて、弁護士・司法書士を通じて出す。
実務の視点 書類が足りないと、追加の提出を求められ、援助するかどうかの判断が遅れることがある。すべての書類がそろうまで相談を待つ必要はない。手元にない書類があるときは、「何がいつまでにそろうか」を弁護士・司法書士に伝える。住民票や課税証明書は、取得の日付が古いと出し直しを求められることがあるので、提出の直前に取るとよい。
① 無料法律相談では、証明書を持っていかなくてよいことが多い。 無料法律相談の資力は、予約のときの聞き取りと援助申込書への記入で確かめるのが通常である。ただし、相談の内容に関する書類(届いた書類など)は持参する。
② 書類を出せない特別の事情があるときは代わりの方法がある。 住民票の写しを出すことが困難な特別の事情があるときは、住所・居所と本籍を確認できる書面で代えることができる(同細則20条1項1号ア)。収入の資料を出すことが困難な特別の事情があるときは、受任・受託しようとする弁護士などの報告書や、資力を確認できるほかの書面で代えることができる(同項3号)。DVなどで住民票を取れない事情があるときは、早めに伝える。
③ 事実と違う申告をしない。 援助の開始が決まった後でも、資力の基準などの援助の要件を欠くことが明らかになったときは、地方事務所長は援助開始決定を取り消すことができる(業務方法書40条1項)。収入や資産は、事実どおりに申告する。
議論のある点 どの書類が「必要と認められるもの」に当たるか、書類を出すことが困難な「特別の事情」に当たるか、書類が遅れたときにどの時点で申込みの取下げとみなされるかは、規程に基づき、個別の事情によって判断される。自分で「出さなくてよい」と判断しない。一般論だけで判断せず、弁護士・司法書士や法テラスの地方事務所に確かめてほしい。
・住民票を取ると相手方に住所を知られるおそれがある
・自営業や日雇いで、収入を証明する書類がそろわない
・生活保護を受けていて、どの書類が必要か分からない
・書類を出すよう求められたが、期限までにそろわない
具体的な事案は、法律事務所、弁護士会の法律相談センターや法テラス等にご相談ください。
費用の立替えを申し込むと決めたら、すぐに書類の準備を始める。法テラスへの予約や援助の申込みをしただけで、時効や裁判所の期限が止まったり延びたりするわけではない。期限が迫っているときは、書類がそろうのを待たずに弁護士に相談し、書類の準備と並行して期限への対応を決める。法テラスから書類の提出期限を示されたときは、間に合わないと分かった段階で連絡する。
必要な書類は事情によって違う。無料法律相談では援助申込書に収入・資産などを記入し、相談には届いた書類を持参する。費用の立替えの審査では、住民票の写し、資力申告書、収入の資料、事件の資料、返済口座の資料を出す(民事法律扶助業務運営細則20条)。書類を出さないと申込みの取下げとみなされることがある(業務方法書27条2項)ので、そろわないときは事情を伝える。
出典
行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律19条(e-Gov 法令検索で原文確認・2026-10-20)
日本司法支援センター業務方法書25条・27条・40条・別表1(令和8年3月25日法務大臣認可の版)
民事法律扶助業務運営細則20条(日本司法支援センター。令和8年細則第9号による改正後)
日本司法支援センター(法テラス)公式サイト「無料法律相談のご利用の流れ」「無料法律相談に関するよくあるご質問」「審査に必要な書類について」(2026-10-20確認)