問題提起
法律事務所の広告やウェブサイトで「初回相談無料」という表示をよく見かける。無料なら気軽に相談できるが、どこまでが無料なのか、相談の後に費用を請求されないか、その場で依頼しなければならないのか、と不安になることもある。無料相談を上手に使うために、確かめておきたい点を整理する。
弁護士に相談する前に知っておきたい法律の要点を、分野ごとにスレッド形式でまとめています。
法律事務所の広告やウェブサイトで「初回相談無料」という表示をよく見かける。無料なら気軽に相談できるが、どこまでが無料なのか、相談の後に費用を請求されないか、その場で依頼しなければならないのか、と不安になることもある。無料相談を上手に使うために、確かめておきたい点を整理する。
弁護士等は、弁護士等の報酬に関する基準を作成し、事務所に備え置かなければならない。
2 前項の基準には、報酬の種類、金額、算定方法、支払時期その他弁護士等の報酬を算定するために必要な事項を明示しなければならない。弁護士の報酬に関する規程3条(e-Gov法令検索で原文確認)
弁護士等は、法律事務を受任するに際し、弁護士等の報酬及びその他の費用について説明しなければならない。弁護士の報酬に関する規程5条1項(e-Gov法令検索で原文確認)
弁護士は、事件を受任するに当たり、依頼者から得た情報に基づき、事件の見通し、処理の方法並びに弁護士報酬及び費用について、適切な説明をしなければならない。弁護士職務基本規程29条1項(e-Gov法令検索で原文確認)
① 無料の範囲。 時間の上限、回数(初回だけか)、対象の分野(特定の分野だけか)、相談の方法(来所・電話・オンライン)を確かめる。時間を超えた場合に費用がかかるかも確かめる。
② 相談の後にかかる費用。 2回目以降の相談、書面の作成や確認、調査、事件の依頼をすると、費用がかかるのが通常である。弁護士は報酬に関する基準を事務所に備え置かなければならないので(弁護士の報酬に関する規程3条1項)、基準を見せてもらうよう求めることもできる。ただし、基準があることだけで支払う額が一方的に決まるわけではなく、どの業務を頼んだか、どのような合意をしたかが大切である。追加の相談や作業が有料になるときは、進める前に、料金、計算方法、費用がかかり始める時点を確かめる。
③ 受任時の説明と委任契約書。 弁護士の報酬に関する規程は、弁護士が法律事務を受任するに際し、報酬およびその他の費用について説明しなければならないと定めている(同規程5条1項)。事件を依頼するときは、弁護士は、事件の見通し、処理の方法、弁護士報酬および費用について適切な説明をしなければならず(弁護士職務基本規程29条1項)、原則として弁護士報酬に関する事項を含む委任契約書を作成しなければならない(同規程30条1項)。法律相談などは、委任契約書の作成を要しないとされている(同条2項)。
④ 法テラスの無料法律相談。 法テラスは、民事法律扶助の業務として、刑事に関するものを除く法律相談を無料で行っている(総合法律支援法30条1項2号ホ)。民事法律扶助の対象は、費用を支払う資力がない国民、または日本に住所を有し適法に在留する者などである(同号)。法テラスの公式サイトは、相談時間は1回30分、同一の問題につき3回まで無料で相談できると案内している(2026年10月20日確認)。利用できるかどうかは、収入(手取りの平均月収)と資産(現金・預貯金)などで決まり、家族の人数や住んでいる地域などによって基準が違う。自分で利用できないと決めつけず、法テラスに確かめる。
⑤ 無料相談と、依頼の費用の立替えは別である。 法テラスで無料になるのは対象となる法律相談である。その後に弁護士などに事件を依頼する費用については、別の審査を経て、法テラスが費用を立て替える制度(代理援助・書類作成援助)を利用できる場合があり、立て替えてもらった費用は原則として返済する(総合法律支援法30条1項2号イ・ハ)。生活保護を受けている場合など、一定の要件を満たすときは、申請により返済の猶予や免除を受けられることがある。自動的に免除されるわけではないので、法テラスに確かめる。
1. 申し込むときに、無料の範囲(時間・回数・分野・方法)を確かめる。
2. 時系列メモ、資料、聞きたいことを用意して相談に行く。
3. 相談の中で、依頼した場合の費用の種類と額、支払時期を確かめる。
4. その場で決めず、説明の内容や費用を持ち帰って検討してよい。複数の弁護士に相談して比べることもできる。
5. 依頼すると決めたら、委任契約書の内容を確かめてから署名する。
実務の視点 無料相談の時間は短いことが多いので、相談の目的を一文で伝え、期限に関わる質問を最初にする。依頼の費用については、「依頼した場合、最初に払うお金と、終わったときに払うお金、実費はそれぞれ何に対して、どのように計算されるか」と具体的に聞くと、答えを得やすい。
① 無料でも説明の質が下がるわけではない。 ただし、時間が限られるので、資料を見る範囲や説明の深さに限りがあることはある。
② 広告の表示と実際の条件。 弁護士の業務広告は、事実に合致しない広告や、誤導・誤認のおそれのある広告をしてはならないとされている(弁護士等の業務広告に関する規程3条)。表示と実際の条件が違うと感じたら、相談の場で確かめる。
③ その場で依頼を求められても決めなくてよい。 依頼するかどうかは相談者が決めることで、その場で決める必要はない。ただし、期限が迫っている事件では、検討に時間をかけすぎない。
議論のある点 依頼したときの弁護士費用の額は、事件の内容や難しさ、事務所の基準によって変わり、一律の相場があるわけではない。費用が適正かどうかは事案ごとの判断になる。一般論だけで判断せず、弁護士に相談してほしい。
・無料相談の後に、思っていなかった費用を請求された(どの業務に対する請求か、料金の説明と合意の内容、計算の根拠を確かめる)
・依頼した場合の費用の説明がはっきりしない
・収入や資産が少なく、費用を払えるか不安だ(法テラスの制度を使えるか確かめる)
具体的な事案は、法律事務所、弁護士会の法律相談センターや法テラス等にご相談ください。
無料の範囲や費用を確かめることに時間をかけすぎない。相談の予約や法律相談をしただけでは、時効や裁判の期限は止まらない。期限がありそうなときは、無料か有料かにかかわらず、早めに相談する。
「初回無料」の範囲(時間・回数・分野・方法)は事務所ごとに違うので、申し込むときに確かめる。相談の後の相談・書面作成・調査・依頼には費用がかかるのが通常で、弁護士は報酬の基準を備え置き、受任に際して報酬と費用を説明する(弁護士の報酬に関する規程3条・5条、弁護士職務基本規程29条1項)。その場で依頼を決める必要はなく、法テラスの無料法律相談は対象となる相談だけが無料である。
出典
総合法律支援法30条(e-Gov 法令検索で原文確認・2026-10-20)
弁護士の報酬に関する規程3条・5条(平成16年日本弁護士連合会会規第68号)
弁護士職務基本規程29条・30条(平成16年日本弁護士連合会会規第70号)
弁護士等の業務広告に関する規程3条(日本弁護士連合会会規第44号)
日本司法支援センター(法テラス)公式サイト「無料法律相談のご利用の流れ」(2026-10-20確認)