問題提起
遠方に住んでいる、体調や仕事の都合で外出しにくい――オンライン相談は、移動の負担をなくしてくれる。一方で、画面越しでは書類の細かい文字が読み取りにくく、通信が途切れることもある。オンライン相談を対面に近い質で受けるための工夫を知っておきたい。
弁護士に相談する前に知っておきたい法律の要点を、分野ごとにスレッド形式でまとめています。
遠方に住んでいる、体調や仕事の都合で外出しにくい――オンライン相談は、移動の負担をなくしてくれる。一方で、画面越しでは書類の細かい文字が読み取りにくく、通信が途切れることもある。オンライン相談を対面に近い質で受けるための工夫を知っておきたい。
弁護士又は弁護士であつた者は、その職務上知り得た秘密を保持する権利を有し、義務を負う。但し、法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。弁護士法23条(e-Gov法令検索で原文確認)
弁護士は、正当な理由なく、依頼者について職務上知り得た秘密を他に漏らし、又は利用してはならない。弁護士職務基本規程23条(e-Gov法令検索で原文確認)
① 資料の送り方。 詳しい相談内容や他人に知られたくない情報を含む資料を送る前に、相談者と相手方の名前、事件のあらましを相談先に伝え、相手方から先に相談を受けているなどの理由で相談に応じられない事情がないかを確かめてもらう。そのうえで、相談先が指定する期限と方法で、事前に資料の写しを送る。送る資料は、相談に必要なものを選び、ファイルの名前に日付と内容を付けておくと、弁護士が探しやすい。マイナンバー(個人番号)が書かれた部分は隠して送る(番号法20条は、法律で認められた場合を除き、他人の個人番号を含む特定個人情報を収集・保管することを禁じている)。資料を送っても、追加の資料や原本の確認が必要になることがある。
② 画面での見せ方。 書類をカメラに映すときは、明るい場所で、書類を平らにし、1枚ずつ映す。画面共有を使うときは、見せる資料だけを開いておき、関係のない情報が映り込まないようにする。
③ 相談の場所と連絡の手段。 家族や同僚に聞かれない場所で相談する。家族などに相談を知られると危険がある場合は、共有している端末やアカウントの履歴・通知からも知られることがあるので、安全に使える端末やアカウントを選び、折り返しの電話・メール・郵便の可否と連絡できる時間を、予約のときに相談先と決めておく。カフェなど人の多い場所は避ける。同席者がいるときは、相談の冒頭で弁護士に伝える。
④ 録音・録画。 相談の内容を記録したいときは、事前に弁護士に伝えて了解を得る。相談先の方針で録音・録画を断られることもある。了解が得られないときは、メモを取る。
⑤ 通信が途切れたとき。 途切れたときの連絡方法(電話番号、再接続の手順)を相談の前に決めておく。
1. 相談の予約のときに、使うアプリ、資料の送り方と期限、事前にどこまで読んでもらえるか、相談の時間と費用を確かめる。
2. 相談先が指定した期限までに、資料の写しと時系列メモを送る。
3. 相談の直前に、通信の状態、カメラ・マイク、充電を確かめる。
4. 相談の冒頭で、本人であること、同席者の有無、相談したいこと、期限の有無を伝える。
5. 相談の後、説明の要点をメモし、追加の資料が必要なら送る。
実務の視点 事前に資料を送っておくと、弁護士は相談の前に目を通して論点を整理できることが多く、相談時間を質問と回答に使いやすい。資料が多いときは、「とくに見てほしい資料」を1〜2点に絞って伝えるとよい。
① オンラインに向かない相談もある。 大量の書類の確認が必要な相談、原本を確かめる必要がある相談、本人の意思や判断能力を慎重に確かめる必要がある相談などは、対面の方が適していることがある。たとえば、借金の整理(債務整理事件)を受任する弁護士は、あらかじめ、受任する予定の弁護士が債務者と自ら面談をして、債務の内容や生活状況などを聴取しなければならないとされている(日本弁護士連合会「債務整理事件処理の規律を定める規程」3条1項。面談することに困難な特段の事情があるときの例外がある)。オンラインで法律相談ができることと、その方法だけで債務整理を依頼できることは別である。ビデオ通話だけで受任してもらえると考えず、この「面談」の方法と、面談することに困難な特段の事情があるときの扱いは、受任する予定の弁護士に確かめる。
② 依頼のときの本人確認。 事件を依頼するときは、依頼者本人であることや依頼の意思が確かめられる。これとは別に、日本弁護士連合会の「依頼者の本人特定事項等の確認及び記録保存等に関する規程」は、依頼者の金融機関の口座を管理するときや、依頼者のために合計200万円以上の金銭などの資産を預かる・管理するとき、不動産の売買などの取引の準備・実行をするときなどに、依頼者の本人特定事項などの確認を求めている(裁判所の手続での和解金の受領などの例外がある)。オンラインでの確認の方法は、相談先の案内に従う。
③ 送ったデータの扱い。 相談のために送った資料は、弁護士が職務上知り得た秘密として扱う(弁護士法23条)。相談者の側でも、送信先を間違えないよう、送る前に宛先を確かめる。
・届いた書類に期限があり、オンラインで早く相談したい
・書類が多く、画面越しで足りるか分からない
・家族などに知られずに相談したい
具体的な事案は、法律事務所、弁護士会の法律相談センターや法テラス等にご相談ください。
オンライン相談の準備に時間をかけすぎない。相談の予約、法律相談、資料の送信だけでは、時効や裁判の期限は止まらない。期限が近い、または期限が分からない書類が届いたときは、書類の名前、受け取った日、書かれた期限を相談先に電話などで直ちに伝え、期限の前に相談と対応ができるかを確かめる。弁護士が依頼を引き受け、必要な対応をすることが確かめられるまでは、予約や資料の送信だけで期限への対応が済んだと考えない。
オンライン相談では、相談先の指定に従って資料を事前に送るか画面で見せ、聞かれない場所で相談し、録音・録画は事前に了解を得る。通信が途切れたときの連絡方法も決めておく。弁護士には秘密を保持する義務がある(弁護士法23条)。書類の多い相談や原本の確認が必要な相談、債務整理の依頼などは、対面も検討する。
出典
弁護士法23条、行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律20条(e-Gov 法令検索で原文確認・2026-10-20)
弁護士職務基本規程23条(平成16年日本弁護士連合会会規第70号)
依頼者の本人特定事項等の確認及び記録保存等に関する規程2条(日本弁護士連合会会規第95号)・同規則2条
債務整理事件処理の規律を定める規程3条(日本弁護士連合会会規第93号)