期限に注意
期限を過ぎると、権利を失ったり、手続ができなくなったりすることがあります。いつから数えるか、延ばせるかどうかは事情によって変わります。思い当たる方は、できるだけ早く弁護士に確認してください。
弁護士に相談する前に知っておきたい法律の要点を、分野ごとにスレッド形式でまとめています。
期限を過ぎると、権利を失ったり、手続ができなくなったりすることがあります。いつから数えるか、延ばせるかどうかは事情によって変わります。思い当たる方は、できるだけ早く弁護士に確認してください。
相談を終えてほっとしたものの、「依頼するかどうかは来週考えよう」としているうちに、控訴の期限や時効が過ぎてしまうことがある。期限が迫っているときは、相談はゴールではなくスタートである。どのような期限があり、相談の後に何をすべきかを知っておくとよい。
控訴は、電子判決書又は第二百五十四条第二項の規定により当事者及び法定代理人、主文、請求並びに理由の要旨が記録された電子調書の送達を受けた日から二週間の不変期間内に提起しなければならない。ただし、その期間前に提起した控訴の効力を妨げない。民事訴訟法285条(e-Gov法令検索で原文確認)
仮執行の宣言を付した電子支払督促の送達を受けた日から二週間の不変期間を経過したときは、債務者は、その支払督促に対し、督促異議の申立てをすることができない。民事訴訟法393条(e-Gov法令検索で原文確認)
相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。民法915条1項(e-Gov法令検索で原文確認)
催告があったときは、その時から六箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。
2 催告によって時効の完成が猶予されている間にされた再度の催告は、前項の規定による時効の完成猶予の効力を有しない。民法150条(e-Gov法令検索で原文確認)
① 判決に対する控訴。 通常の民事訴訟の第一審判決に不服がある当事者は、判決書等(電子判決書など)の送達を受けた日から2週間の不変期間内に控訴を提起しなければならない(民事訴訟法285条)。控訴状は、判決をした第一審裁判所に提出する(同法286条1項)。不変期間は、裁判所が通常の期間のように伸長することはできない。少額訴訟の終局判決には控訴ができず(同法377条)、判決書等の送達を受けた日から2週間の不変期間内に、判決をした裁判所に異議を申し立てることができる(同法378条1項)。仮執行の宣言が付いた判決では、控訴とは別に、強制執行を止める手続が問題になることもある。
② 支払督促に対する督促異議。 裁判所書記官から支払督促が送達された債務者は、督促異議を申し立てることができる。債務者が支払督促の送達を受けた日から2週間以内に督促異議を申し立てないと、債権者の申立てにより仮執行の宣言がされる(民事訴訟法391条1項本文)。ただし、仮執行の宣言の前に督促異議の申立てがあったときは、仮執行の宣言はされない(同項ただし書)。つまり、最初の2週間を過ぎても、仮執行の宣言の前であれば督促異議を申し立てることができる。仮執行の宣言を付した支払督促の送達を受けた日から2週間の不変期間を過ぎると、債務者は督促異議を申し立てることができなくなる(同法393条)。仮執行の宣言の後に督促異議を申し立てても、それだけで強制執行が止まるわけではない。
③ 訴状が届いたとき。 裁判所から訴状と期日の呼出状が届いたら、指定された期限までに答弁書を出し、口頭弁論の期日に対応する必要がある。被告が答弁書などを出さずに期日に欠席し、相手方の主張する事実を争うことを明らかにしないと、その事実を自白したものとみなされることがある(民事訴訟法159条1項・3項)。
④ 相続の承認・放棄。 相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、単純承認・限定承認・相続放棄のいずれかをしなければならない(民法915条1項本文)。相続放棄と限定承認は、家庭裁判所への申述が必要である。相続人が数人いるときは、限定承認は共同相続人の全員が共同してしなければならない(民法923条)。この期間内に限定承認も相続放棄もしなかったときは、単純承認をしたものとみなされる(民法921条2号)。期間内であっても、相続人が相続財産の全部または一部を処分したときは、単純承認をしたものとみなされる(同条1号。保存行為などの例外がある)。利害関係人または検察官が請求すれば、家庭裁判所はこの3か月の期間を伸長することができる(民法915条1項ただし書)。伸長の請求は、3か月の期間が過ぎる前にする必要があると考えておく。伸長するかどうか、どれだけ伸長するかは家庭裁判所が判断する。借金がありそうなときは、遺産に手をつける前に相談する。
⑤ 消滅時効。 債権などの権利は、一定の期間行使しないと時効によって消滅する。ただし、時効の期間が過ぎても、当事者が時効を援用しなければ、裁判所は時効によって裁判をすることができない(民法145条)。古い借金を請求されたときも、放置せずに相談する。時効期間の長さは権利の種類によって違い、2020年4月1日に施行された民法改正の経過措置により、改正前の期間が当てはまる債権もある。裁判上の請求などの手続をすると、その手続が終わるまで時効は完成せず、確定判決などで権利が確定せずに手続が終わったときは、終わった時から6か月を経過するまで時効は完成しない(民法147条1項)。確定判決などで権利が確定したときは、時効は、裁判上の請求などの手続が終わった時から新たに進行を始める(同条2項)。
⑥ 催告による猶予の間にもう一度催告しても延びない。 時効が完成する前に催告(裁判外の請求)をすると、その時から6か月を経過するまでは時効は完成しない(民法150条1項)。催告は、相手方に届いて効力を生じるのが原則なので、発送しただけでは足りない。時効期間が最初から数え直されるわけではなく、本来の完成の時期がそれより後であれば、その時期が早まるわけでもない。催告による猶予の間にもう一度催告しても、猶予は延びない(同条2項)。猶予を使うときは、猶予が切れる前に訴えの提起などの手続をする必要がある。権利について協議を行う旨の合意を書面ですると、一定の期間、時効は完成しない(民法151条1項)が、単に交渉を続けているだけではこの効果は生じない。また、催告による猶予の間に協議の合意をしても、協議の合意による猶予の間に催告をしても、新たな猶予の効力は生じない(同条3項)。
1. 相談の冒頭で、届いた書類(封筒を含む)を示し、誰が・いつ・どのように受け取ったかを伝える。本人が開封した日と、法律上の送達の日は一致しないことがある。
2. 相談の中で、期限がいつか、どの手続が必要か、弁護士がその手続を引き受けられるか、いつまでに誰が何をするかを確かめ、メモに書く。当日や翌日が期限のこともあるので、「後で連絡すればよい」と考えない。
3. 弁護士に依頼するなら、依頼の範囲(どの手続を誰が期限までに出すか)をはっきりさせる。依頼する意思を伝えただけで、手続を任せたことになるとは限らない。
4. 自分で手続をするなら、提出先・提出方法・必要な書類を確かめ、余裕をもって出す。郵送するときは、期限までに提出先に届く必要があり、期限の当日に投函しただけでは間に合わない。
5. 依頼した後も、期限の前に手続が済んだかを弁護士に確かめる。
実務の視点 裁判所から届いた書類の封筒は捨てずに取っておき、受け取った日をメモしておく。期限の数え方は、書類に書かれた日付ではなく送達を受けた日が基準になることが多い。また、弁護士が受任すると、弁護士は速やかに着手し、遅滞なく処理しなければならない(弁護士職務基本規程35条)が、依頼が遅れれば、準備できる時間はそれだけ短くなる。
① 相談の予約や相談だけでは期限は止まらない。 期限を守るには、期限の内に控訴状や督促異議の申立書などを提出先に届ける必要がある。
② 「催告」で時効期間が延びるわけではない。 催告による猶予は、催告から6か月の間に時効が完成しないというもので、その間に裁判上の請求などをしなければ、時効の完成は止まらない(民法150条1項)。
③ 期限の数え方は自分で判断しない。 期間の長さや計算のしかたの多くは法律で決まっている(たとえば民事訴訟の期間は、末日が土曜日・日曜日・祝日などに当たるときは翌日に満了する=民事訴訟法95条3項。時効などほかの期限には別の規定がある)。しかし、どの規定が当てはまるか、法律上の送達の日がいつかは、事実関係を確かめなければ決まらない。
④ 期限を過ぎても、すぐにあきらめない。 当事者の責めに帰することができない事由によって不変期間を守れなかったときは、その事由が消滅した後1週間以内(外国にいる当事者は2か月以内)に限り、訴訟行為の追完ができる(民事訴訟法97条1項)。単なる失念で救済されるわけではないが、期限を過ぎたと思ったときも、直ちに弁護士に相談する。
議論のある点 時効の起算点(いつから数えるか)と、どの時効期間が当てはまるか(改正前の規定が適用されるか)、相続の熟慮期間の「自己のために相続の開始があったことを知った時」がいつか(借金を後から知った場合など)、相続財産のどのような扱いが「処分」に当たるか、期限を過ぎた後に追完などで救済されるかは、事実関係や判例によって判断が分かれる。一般論だけで判断せず、弁護士に相談してほしい。
・判決、支払督促、訴状、調停の呼出状などが届いた
・請求したいお金があるが、最後のやり取りから長い時間がたっている
・古い借金の返済を求められた(返済の約束や一部の支払をする前に相談する)
・親族が亡くなり、借金があるかもしれない
・相手方から「〇日までに回答しなければ法的手続をとる」という書面が届いた
具体的な事案は、法律事務所、弁護士会の法律相談センターや法テラス等にご相談ください。
書類が届いたら、その日のうちに相談先を探す。控訴や督促異議の期限は2週間と短い。相談の予約が取りにくいときは、予約の電話で期限が迫っていることを伝え、早く相談できる窓口を尋ねる。
相談しただけでは期限は止まらず、弁護士が手続を引き受けたことにもならない。控訴(判決書等の送達から2週間の不変期間)、支払督促への督促異議(仮執行宣言付支払督促の送達から2週間の不変期間が過ぎるまで。仮執行の宣言を防ぐには、最初の送達から2週間以内)、相続の承認・放棄(知った時から3か月以内)、時効など、期限の内に提出先に届くよう手続をすることが必要である。期限がありそうなときは、相談の最初に書類を示し、相談の中で誰が何をするかを決める。
出典
民法145条・147条・150条・151条・915条・921条・923条、民事訴訟法95条・97条・159条・285条・286条・377条・378条・391条・393条(e-Gov 法令検索で原文確認・2026-10-20)
弁護士職務基本規程35条(平成16年日本弁護士連合会会規第70号)