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訴訟費用|印紙代や負担の考え方

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この記事の要点

  • 民事訴訟の「訴訟費用」は、民事訴訟費用等に関する法律2条が定める範囲の費用(申立ての手数料、送達などの費用、期日に出頭する旅費・日当、書類の作成・提出の費用など)に限られる。当事者が自分の弁護士に払う着手金・報酬金は、裁判所が弁護士の選任を命じた場合などを除き、訴訟費用に含まれない。
  • 訴訟費用は、原則として敗訴した当事者が負担する(民事訴訟法61条)。一部だけ勝った場合は、裁判所が負担の割合を定める(民事訴訟法64条)。判決で負担が決まっても具体的な額は自動的には決まらず、申立てにより第一審裁判所の裁判所書記官が額を定める(民事訴訟法71条1項)。
  • 2026年5月21日以後に起こす訴えの手数料は、訴訟の目的の価額(訴額)に応じた額に、定額の部分(書面で出すときは2,500円、インターネットで出すときは1,400円。被告が2人以上なら1人増えるごとに2,000円を加算)を足した額になり、送達のための郵便切手を別に予納する必要はなくなった(民事訴訟費用等に関する法律3条2項・11条1項ただし書・別表第二)。手数料は原則として現金(電子納付など)で納め、収入印紙を貼って納められるのは、書面で申し立てる場合でやむを得ない事由があるときに限られる(同法8条1項)。

期限に注意

訴訟費用の手続には期限がある。最初の口頭弁論期日の終了前に訴えを取り下げたときなどに手数料の一部の還付を受ける申立ては、その事由が生じた日から5年以内にしなければならない(民事訴訟費用等に関する法律9条5項)。訴訟費用の負担の額を定めてもらう申立ては、負担の裁判が確定した日から10年以内にしなければならない(民事訴訟法71条2項)。この10年の制限は、2026年5月21日以後に起こされた訴えの事件などに適用され、それより前に起こされた事件には適用されない(令和4年法律第48号附則2条)。この申立期間の制限が適用されない事件でも、訴訟費用の償還を求める権利は時効で消えることがあり、いつまでも請求できるわけではない。裁判所書記官が定めた額に不服があるときの異議は、告知を受けた日から1週間の不変期間内にしなければならない(民事訴訟法71条5項)。期限を過ぎると権利を失ったり手続ができなくなったりすることがあり、いつから数えるか・延ばせるかは事情で変わるので、思い当たる方はできるだけ早く弁護士に確認してほしい。

問題提起

裁判を起こすにはいくらかかるのか、負けたら相手の弁護士費用まで払うのか――裁判を考える人が最初に気にするのが費用である。民事訴訟の費用は、裁判所に納める手数料などの「訴訟費用」と、自分の弁護士に払う報酬とに分けて考える必要がある。この記事は、民事訴訟のIT化の改正(令和4年法律第48号。主な部分は2026年5月21日に施行)の後の規定で説明している。2026年5月21日より前に起こされた訴えの事件の手数料の額と郵便料の扱いは、経過措置により改正前の規定(訴額に応じた額を納め、郵便切手を別に予納する)による(同法附則25条)。手数料の還付や納め方、旅費・日当の額についても、施行日前に起こされた事件には改正前の規定による部分がある(同法附則26条〜28条)。離婚などの人事訴訟には、この記事の説明と扱いが異なる部分がある。

法律の文言(民事訴訟法61条・民事訴訟費用等に関する法律3条1項・2項)

訴訟費用は、敗訴の当事者の負担とする。民事訴訟法61条(e-Gov法令検索で原文確認)
別表第一の上欄に掲げる申立てをするには、申立ての区分に応じ、それぞれ同表の下欄に掲げる額の手数料を納めなければならない。
2 前項の規定にかかわらず、民事訴訟法第百三十二条の十第一項(行政事件訴訟法(昭和三十七年法律第百三十九号)第七条の規定によりその例によることとされる場合を含む。)の規定により電子情報処理組織を使用する方法(以下単に「電子情報処理組織を使用する方法」という。)により行うことができるものとされている申立てであつて、別表第二の上欄に掲げるもの(以下「特定申立て」という。)をする場合には、申立ての区分に応じ、それぞれ同表の下欄に掲げる額の手数料を納めなければならない。民事訴訟費用等に関する法律3条1項・2項(e-Gov法令検索で原文確認)

要件・仕組み

① 訴訟費用に含まれるもの。 民事訴訟費用等に関する法律2条が列挙する費用で、主なものは、申立ての手数料、裁判所が証拠調べや送達をするための費用、当事者が期日に出頭するための旅費・日当・宿泊料(最高裁判所が定める額などで算定)、訴状や準備書面などの書類の作成・提出の費用(最高裁判所が定める額)である。実際に支出した額がそのまま認められるとは限らない。

② 弁護士の着手金・報酬金は原則として含まれない。 当事者が自分で選んだ弁護士に払う着手金・報酬金は訴訟費用に含まれず、勝訴しても訴訟費用として相手方に請求することはできない。弁護士の報酬・費用が訴訟費用に含まれるのは、法令により裁判所が弁護士の選任を命じた場合などに限られる(民事訴訟費用等に関する法律2条10号)。なお、代理人が期日に出頭したときの旅費・日当・宿泊料は、当事者が出頭した場合の額として裁判所が相当と認める額の範囲で、訴訟費用に含まれることがある(同条5号)。

③ 訴えの手数料(2026年5月21日以後に起こす訴え)。 訴えの提起は、インターネットで申し立てることができる申立てとして特定申立てに当たり、書面で出す場合も含めて、手数料は次の合計額になる(民事訴訟費用等に関する法律3条2項・別表第二の1の項)。

・訴額に応じた部分:訴額100万円までは10万円までごとに1,000円、100万円を超え500万円までの部分は20万円までごとに1,000円、500万円を超え1,000万円までの部分は50万円までごとに2,000円、1,000万円を超え10億円までの部分は100万円までごとに3,000円(さらに高額の部分にも定めがある)。
・定額の部分:2,500円(インターネットで申し立てる場合は1,400円)。被告が2人以上のときは、被告の数から1を引いた数に2,000円を掛けた額を加える。
・例えば訴額100万円の訴えを被告1人に対して起こすときは、訴額に応じた部分が1万円で、書面で出せば合計1万2,500円、インターネットで出せば合計1万1,400円になる。
・訴額は訴えで主張する利益によって算定し(民事訴訟法8条1項)、財産権上の請求でないものや算定が極めて困難なものは160万円とみなす(民事訴訟費用等に関する法律4条2項)。

④ 郵便料の予納。 2026年5月21日以後に起こす訴えでは、送達に使う郵便料に充てる費用を別に納める必要はなくなった(民事訴訟費用等に関する法律11条1項ただし書、令和4年法律第48号附則25条)。証人の旅費・日当など、ほかの費用の予納が必要になることはある(同法11条・12条)。

⑤ 納め方。 特定申立ての手数料は、最高裁判所規則で定めるところにより現金で納める(民事訴訟費用等に関する法律8条1項本文)。書面で申し立てる場合でやむを得ない事由があるときは、訴状に収入印紙を貼って納めることもできる(同項ただし書)。

費用が決まり、払われるまでの流れ

1. 訴えを起こすときに手数料を納める。足りないと、裁判長から補正を命じられ、補正しなければ訴状が却下される(民事訴訟法137条)。
2. 判決(または事件を終わらせる裁判)で、裁判所が職権で訴訟費用の負担を定める(民事訴訟法67条1項)。原則は敗訴者の負担である(民事訴訟法61条)。一部敗訴なら裁判所が割合を定め、事情により一方に全部を負担させることもある(民事訴訟法64条)。勝った側にも、必要でない行為で生じた費用を負担させることがある(民事訴訟法62条)。
3. 負担の裁判が執行力を生じた後、申立てにより、第一審裁判所の裁判所書記官が具体的な額を定める(民事訴訟法71条1項)。当事者双方が負担するときは、原則として対当額で相殺したものとみなされる(同条3項)。
4. 裁判所書記官の処分に不服があれば、告知を受けた日から1週間以内に異議を申し立てられる(民事訴訟法71条5項)。
5. 訴訟上の和解で費用の負担を定めなかったときは、各自の負担になる(民事訴訟法68条)。和解で負担を定めて額を定めなかったときは、申立てにより裁判所書記官が額を定める(民事訴訟法72条)。訴えの取下げなど、裁判や和解によらずに訴訟が終わったときも、申立てにより裁判所が費用の負担を命じ、裁判所書記官が額を定める(民事訴訟法73条1項)。取り下げた側が、相手方の申立てで訴訟費用の負担を命じられることもある。

実務の視点 訴訟費用の額の確定まで申し立てても、実際に回収できる額は手数料や郵便料などに限られ、弁護士費用に比べると小さいことが多い。和解では「訴訟費用は各自の負担とする」と定めることが多いので、費用の扱いも和解の条件の一つとして確かめておくとよい。

確認点・よくある誤解

① 負けても相手の弁護士費用を払うとは限らない。 訴訟費用に弁護士の着手金・報酬金は原則として含まれない。ただし、不法行為の被害者が訴えを起こさざるを得ず弁護士に依頼した場合には、事案の難易、請求額、認容額などから相当と認められる額の弁護士費用が、不法行為と相当因果関係のある損害として認められる(最判昭和44年2月27日・民集23巻2号441頁)。これは訴訟費用としてではなく、損害賠償の請求の一部として主張するものである。

② 取り下げると手数料の一部が戻ることがある。 訴えが口頭弁論を経ないで却下されて確定したとき、または最初の口頭弁論期日の終了前に取り下げたときは、申立てにより、納めた手数料から納めるべき手数料の2分の1(4,000円に満たないときは4,000円)を差し引いた額が還付される(民事訴訟費用等に関する法律9条2項1号)。最初の期日が終わった後の取下げや、訴訟上の和解による終了には、この還付の定めはない。多く納めすぎた分は、申立てにより還付される(同条1項)。

③ 訴訟上の救助は、手数料などの支払を「猶予」する制度。 訴訟の準備・追行に必要な費用を払う資力がない人や、払うと生活に著しい支障を生ずる人は、勝訴の見込みがないとはいえない場合に限り、申立てにより訴訟上の救助を受けられる(民事訴訟法82条1項)。救助の決定で定められた範囲で、手数料などの裁判費用の支払が猶予され、訴訟費用の担保が免除される(民事訴訟法83条1項)。支払が免除されるわけではなく、資力があることが判明したり資力を回復したりしたときは、救助の決定が取り消され、猶予された費用の支払を命じられることがある(民事訴訟法84条)。救助を受けていても、敗訴して相手方の訴訟費用の負担を命じられれば、その負担は免れない。救助は審級ごとに決定される(民事訴訟法82条2項)。

④ 調停の手数料は訴えより低い。 民事調停の申立ての手数料は、調停を求める事項の価額に応じて定められ(民事訴訟費用等に関する法律別表第一の14の項)、訴えの手数料のうち訴額に応じた部分の約半分の水準である。2026年5月21日以後の訴えの手数料には定額の部分が加わるので、手数料の総額の半分という意味ではない。民事調停では、郵便料などの予納が別に必要になることがある。調停の申立人が、調停の不成立や、調停に代わる決定が異議で効力を失ったことの通知を受けた日から2週間以内に、調停の目的となった請求について訴えを起こしたときは、調停で納めた手数料の額は訴えの手数料を納めたものとみなされる(民事訴訟費用等に関する法律5条1項、民事調停法19条)。

議論のある点

議論のある点 訴額をどう算定するか(土地・建物の明渡し、複数の請求、確認の訴えなど)、どの費用が「必要な費用」として訴訟費用に算入されるか、一部敗訴の場合の負担割合などは、事件ごとに判断が分かれる。不法行為以外(契約違反など)で弁護士費用を損害として請求できるかも、請求の種類や事情によって扱いが異なる。具体的な額は弁護士や裁判所の案内で確認してほしい。

法改正の予定

民事訴訟費用等に関する法律には、2026年10月21日現在、施行前の改正がある(e-Gov 法令検索で未施行の版として掲載。施行日は改正法の附則と政令で定められるので、手続をする時点で確認が必要)。手数料の額や納め方の細かな点が変わることがあるので、申立ての時点の規定を裁判所の案内で確認してほしい。民事訴訟法61条・64条・71条・82条には、施行前の改正は見当たらない。

特に相談した方がよい場面

・訴えを起こしたいが、訴額や手数料の計算が分からない
・費用を払う余裕がなく、訴訟上の救助や法テラスの立替えを考えたい
・判決で訴訟費用の負担を命じられた、または相手方に負担させたい
・相手方の弁護士費用まで請求されている、または請求したい
・訴えを取り下げるかどうか迷っている

具体的な事案は、法律事務所、弁護士会の法律相談センターや法テラス等にご相談ください。

相談のタイミング

訴えを起こす前に、訴額・手数料・弁護士費用の見通しを確認するのがよい。判決や和解の後は、費用額の確定の申立てや還付の申立てに期限があるので、手続が終わったらすぐに確認する。

まとめ

訴訟費用は法律が定める範囲の費用に限られ、原則として敗訴者が負担するが、自分の弁護士の着手金・報酬金は原則として含まれない。2026年5月21日以後に起こす訴えの手数料は、訴額に応じた額に定額の部分を足した額で、送達のための郵便切手の予納は不要になった。取下げ時の還付には5年、費用額の確定には(2026年5月21日以後に起こされた事件で)10年の期限がある。

出典

民事訴訟法8条・61条・62条・64条・67条・68条・71条〜73条・82条・83条・84条・137条(e-Gov 法令検索で原文確認・2026-10-21)

民事訴訟費用等に関する法律2条・3条・4条・5条・8条・9条・11条・12条・別表第一・別表第二

民事訴訟法等の一部を改正する法律(令和4年法律第48号)附則2条・25条〜28条

民事調停法19条

最判昭和44年2月27日・民集23巻2号441頁

最終確認日
2026年10月21日
法令の基準時
2026年10月時点の法令による
出典(外部サイト)
e-Gov 法令検索(デジタル庁)〔外部サイト〕/裁判所ウェブサイト〔外部サイト〕
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