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簡易裁判所と地方裁判所|扱う事件の違い

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この記事の要点

  • 通常の民事裁判の第一審は、原則として、訴訟の目的の価額(訴額)が140万円を超えない請求は簡易裁判所、それ以外の請求は地方裁判所が担当する(裁判所法33条1項1号・24条1号)。人事訴訟(離婚など)は家庭裁判所が担当するなど、別の定めがあるものは除かれる。ただし、不動産に関する訴訟は、140万円以下でも地方裁判所に出すことができる(裁判所法24条1号)。
  • 簡易裁判所は、簡易な手続で迅速に紛争を解決するとされ(民事訴訟法270条)、口頭での訴えの提起、準備書面の省略、司法委員の関与、和解に代わる決定などの特則がある。60万円以下の金銭の請求には、原則1回の期日で審理を終える少額訴訟もある(民事訴訟法368条以下)。
  • 簡易裁判所の判決への控訴は地方裁判所が、地方裁判所の第一審判決への控訴は高等裁判所が審理する(裁判所法24条3号・16条1号)。控訴状はどちらも第一審の裁判所に出す(民事訴訟法286条1項)。少額訴訟の判決には控訴できず、判決をした簡易裁判所への異議の申立てによる(民事訴訟法377条・378条)。異議の後の判決には、控訴も再度の異議もできない(民事訴訟法380条1項)。

期限に注意

和解に代わる決定に対する異議は、決定の告知を受けた日から2週間の不変期間内にしなければならない(民事訴訟法275条の2第3項)。少額訴訟の判決に対する異議(民事訴訟法378条1項)と、通常の訴訟の判決に対する控訴(民事訴訟法285条)も、判決書などの送達を受けた日から2週間の不変期間内である。不変期間は通常の延長ができない。期限を過ぎると権利を失ったり手続ができなくなったりすることがあり、いつから数えるか・延ばせるかは事情で変わるので、思い当たる方はできるだけ早く弁護士に確認してほしい。

問題提起

裁判を起こしたいが、簡易裁判所と地方裁判所のどちらに出せばよいのか。手続や代理人に違いはあるのか――請求額や事件の種類によって、第一審を担当する裁判所と手続が変わる。

法律の文言(裁判所法33条1項1号)

簡易裁判所は、次の事項について第一審の裁判権を有する。
一 訴訟の目的の価額が百四十万円を超えない請求(行政事件訴訟に係る請求を除く。)裁判所法33条1項(e-Gov法令検索で原文確認)

要件(どちらの裁判所が担当するか)

① 140万円の基準。 訴訟の目的の価額が140万円を超えない請求(行政事件訴訟に係る請求を除く)は簡易裁判所が第一審を担当する(裁判所法33条1項1号)。それ以外の請求は、人事訴訟など他の裁判所の管轄とされているものを除き、地方裁判所が担当する(裁判所法24条1号)。当事者の合意(民事訴訟法11条)や、被告が管轄違いを主張せずに本案について弁論をしたこと(民事訴訟法12条)で管轄が生じる場合もある。

② 価額の算定。 訴訟の目的の価額は、訴えで主張する利益によって算定する(民事訴訟法8条1項)。算定できないときや極めて困難なときは、140万円を超えるものとみなす(同条2項)。一つの訴えで数個の請求をするときは合算するが、各請求で主張する利益が共通である場合は合算しない(民事訴訟法9条1項)。果実・損害賠償・違約金・費用の請求が訴訟の附帯の目的であるときは算入しない(同条2項)。たとえば、貸金の元金とあわせて請求する遅延損害金は算入しないが、利息などを独立して請求する場合は別に考える。

③ 不動産に関する訴訟。 140万円以下でも地方裁判所に出せる(裁判所法24条1号)。簡易裁判所に出された不動産に関する訴訟は、被告が本案について弁論をする前に申し立てれば、その簡易裁判所の所在地を管轄する地方裁判所に移送しなければならない(民事訴訟法19条2項)。

④ 移送。 簡易裁判所は、相当と認めるときは、管轄のある事件でも、その所在地を管轄する地方裁判所に移送できる(民事訴訟法18条)。当事者の申立てと相手方の同意があるときは、原則として移送しなければならないが、著しく訴訟手続を遅滞させることになる場合や、被告が本案について弁論などをした後の申立て(簡易裁判所からその所在地の地方裁判所への移送を除く)は例外とされる(民事訴訟法19条1項)。地方裁判所は、その管轄区域内の簡易裁判所の管轄に属する事件でも、相当と認めれば自ら審理できる(民事訴訟法16条2項。簡易裁判所の専属管轄の場合を除く)。訴訟が法令で定められたその裁判所の専属管轄に属するときは、これらの移送の規定は原則として適用されない(民事訴訟法20条1項)。

簡易裁判所の手続の特色

1. 訴えは口頭で起こすことができ(民事訴訟法271条)、請求の原因に代えて紛争の要点を明らかにすれば足りる(民事訴訟法272条)。
2. 口頭弁論は、原則として書面で準備しなくてよい(民事訴訟法276条1項)。
3. 和解を試みるときなどに、民間から選ばれた司法委員が補助をすることがある(民事訴訟法279条)。
4. 金銭の支払を求める訴えで、被告が口頭弁論で原告の主張した事実を争わず、ほかに何の防御の方法も出さない場合に、被告の資力その他の事情を考えて相当と認めるときは、裁判所は、原告の意見を聴いて、異議の期間の経過時から5年を超えない範囲で支払時期や分割払いを定めて支払を命じる「和解に代わる決定」をすることができる(民事訴訟法275条の2第1項)。分割払いを定めるときは、支払を怠った場合の期限の利益の喪失も定める(同条2項)。当事者は、決定の告知を受けた日から2週間の不変期間内に異議を申し立てることができ、異議がなければ裁判上の和解と同一の効力を持つ(同条3項・5項)。
5. 簡易裁判所では、裁判所の許可を得れば、弁護士でない人を訴訟代理人にすることができる(民事訴訟法54条1項ただし書)。

実務の視点 簡易裁判所の訴額140万円以下の事件では、法務大臣の認定を受けた司法書士(認定司法書士)も代理人になることができる(司法書士法3条1項6号イ・2項)。ただし、上訴の提起は自分が代理人として関与した事件の判決などに限られ、地方裁判所での訴訟(簡易裁判所の判決への控訴審を含む)の代理はできない。地方裁判所の訴訟代理人は、法令で裁判上の行為をすることができる代理人を除き、弁護士でなければならない(民事訴訟法54条1項本文)。本人が自分で訴訟をすることはできる。控訴の可能性まで見越して代理人を選ぶとよい。

確認点・よくある誤解

① 少額訴訟は特別な手続。 簡易裁判所では、60万円以下の金銭の支払を求める訴えについて、少額訴訟による審理を求めることができる。求めるのは訴えの提起の際で(民事訴訟法368条2項)、同じ簡易裁判所で同じ年に10回を超えて求めることはできない(同条1項、民事訴訟規則223条)。被告は、通常の手続への移行を求めることができるが、最初にすべき口頭弁論の期日で弁論をした後や、その期日が終了した後はできない(民事訴訟法373条1項)。少額訴訟では反訴はできない(民事訴訟法369条)。少額訴訟の判決には控訴できず、判決書などの送達を受けた日から2週間の不変期間内に、判決をした簡易裁判所に異議を申し立てる(民事訴訟法377条・378条1項)。異議の後の判決には控訴できない(民事訴訟法380条1項)。

② 控訴先が違う。 簡易裁判所の通常の訴訟の判決への控訴は地方裁判所が審理し(裁判所法24条3号)、その控訴審の判決への上告は高等裁判所にする(民事訴訟法311条1項)。地方裁判所の第一審判決への控訴は高等裁判所が審理する(裁判所法16条1号)。控訴状はどちらも第一審の裁判所に出し(民事訴訟法286条1項)、控訴期間は判決書などの送達を受けた日から2週間の不変期間である(民事訴訟法285条)。

③ お金の請求では元金が基準になることが多い。 元金とあわせて請求する遅延損害金などの附帯の請求は価額に算入しないので(民事訴訟法9条2項)、貸金などの請求では元金で140万円を超えるかを考える。複数の請求をする場合や、金銭以外の請求の場合は、別に算定が必要になる。

議論のある点

議論のある点 金額で表せない請求の価額の算定、複数の請求の利益が共通かどうか、移送の申立てが認められるかは、事件ごとに判断が分かれる。複数の請求がある場合などは、代理人が代理できる範囲についても個別の確認が必要になる。一般論だけで判断せず、弁護士に相談してほしい。

特に相談した方がよい場面

・請求額が140万円前後で、どちらの裁判所に出すか迷っている
・不動産に関する争いがある
・簡易裁判所に訴えられたが、地方裁判所での審理を求めたい
・少額訴訟を起こされた、または起こしたい
・和解に代わる決定の告知を受けた(異議は告知を受けた日から2週間の不変期間内。民事訴訟法275条の2第3項)
・判決書が届き、または判決のインターネットでの送達の通知を受け、不服がある(インターネットでの送達は、閲覧しなくても通知から1週間を経過すると効力を生じることがある。民事訴訟法109条の3)

具体的な事案は、法律事務所、弁護士会の法律相談センターや法テラス等にご相談ください。

相談のタイミング

訴えを起こす前、または訴状が届いたらすぐに相談する。移送の申立てや通常の手続への移行の申述には、時期の制限があるものがある(民事訴訟法19条1項ただし書・2項ただし書・373条1項ただし書)。

まとめ

140万円以下の請求は簡易裁判所、それを超える請求は地方裁判所が第一審を担当し、不動産の訴訟は140万円以下でも地方裁判所に出せる。簡易裁判所には口頭での訴え、和解に代わる決定、少額訴訟などの特色がある。控訴先も違うので、事件の見通しに合わせて裁判所と代理人を考えるとよい。

出典

裁判所法16条・24条・33条(e-Gov 法令検索で原文確認・2026-10-20)

民事訴訟法8条・9条・11条・12条・16条・18条・19条・20条・109条の3・54条・270条・271条・272条・275条の2・276条・279条・285条・286条・311条・368条・369条・373条・377条・378条・380条

司法書士法3条

民事訴訟規則223条(裁判所ウェブサイト掲載の2026年5月21日の版で確認)

最終確認日
2026年10月20日
法令の基準時
2026年10月時点の法令による
出典(外部サイト)
e-Gov 法令検索(デジタル庁)〔外部サイト〕/裁判所ウェブサイト〔外部サイト〕
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