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調停成立|調書の効力の考え方

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この記事の要点

  • 調停で当事者の合意が成立し、調書に記載されると、その記載は裁判上の和解と同一の効力を持つ(民事調停法16条)。裁判上の和解の調書は確定判決と同一の効力を持つ(民事訴訟法267条1項)。有効に成立した調停は、後から気が変わったというだけで一方的に撤回することはできない。
  • 調停調書のうち、金銭の支払や物の引渡しなどを約束する条項(給付条項)は、強制執行の根拠(債務名義)になる(民事執行法22条7号)。一方、権利関係を確認するだけの条項や、努力を約束するだけの条項では、強制執行はできない。
  • 調停調書で確定した権利のうち、消滅時効にかかり、もとの時効期間が10年より短いものは、時効期間が10年になる(民法169条1項)。ただし、確定の時に弁済期が来ていない債権には、この規定は適用されない(同条2項)。成立した調停の内容は後から簡単には争えないので、成立前に条項を十分に確かめることが大切である。

期限に注意

調停で合意が成立しなくても、裁判所が調停に代わる決定(民事調停法17条)をすることがある。この決定には、当事者が決定の告知を受けた日から2週間以内に異議を申し立てることができ、適法な異議がなければ、決定は裁判上の和解と同一の効力を持つ(民事調停法18条1項・5項)。合意によって成立した調停には、このような異議の期間はない。調停調書に基づいて強制執行を受けた側が争う場合も、手続によっては期間や要件がある。期限を過ぎると権利を失ったり手続ができなくなったりすることがあり、いつから数えるか・延ばせるかは事情で変わるので、思い当たる方はできるだけ早く弁護士に確認してほしい。

問題提起

調停で話し合いがまとまった。調停委員から「調書を作ります」と言われたが、この調書にはどんな力があるのか。相手が約束を守らなかったらどうなるのか。後から「やはり納得できない」と思ったら覆せるのか――調停の成立は紛争の終わりであると同時に、その後の権利の土台になる。この記事は、2026年10月21日現在の民事調停法などで説明している。

法律の文言(民事調停法16条・民事執行法22条7号)

調停において当事者間に合意が成立し、これを調書に記載したときは、調停が成立したものとし、その記載は、裁判上の和解と同一の効力を有する。民事調停法16条(e-Gov法令検索で原文確認)
強制執行は、次に掲げるもの(以下「債務名義」という。)により行う。
七 確定判決と同一の効力を有するもの(第三号に掲げる裁判を除く。)民事執行法22条柱書・7号(e-Gov法令検索で原文確認)

要件・仕組み

① 成立の要件。 当事者間に合意が成立し、それが調書に記載されたときに調停が成立する(民事調停法16条)。合意しただけで調書に記載される前は、調停は成立していない。

② 強制執行できる条項。 「相手方は申立人に対し、○年○月○日限り、金○円を支払う」のように、誰が誰に何をいつまでにするかが具体的に書かれた給付条項は、債務名義として強制執行に使える(民事執行法22条7号)。強制執行をするには、原則として執行文の付与を受ける必要があり(民事執行法25条・26条)、調書の正本などが、強制執行の開始の前か開始と同時に相手方に送達されていなければならない(民事執行法29条)。期限の到来に係る請求は、期限が来た後でなければ強制執行を始められない(民事執行法30条1項)。条件付きの条項などでは、執行文を受けるために追加の証明が必要になることがある(民事執行法27条1項)。

③ 強制執行できない条項。 「申立人と相手方は、本件建物の所有権が申立人にあることを確認する」のような確認条項や、「誠実に協議する」「努める」のような条項は、それだけでは強制執行に使えない。金額や期限があいまいな条項も、執行の場面で問題になりやすい。

④ 時効。 調停の成立で権利が確定すると、時効は新たに進行を始める(民法147条2項)。消滅時効にかかる権利で、もとの時効期間が10年より短いものは、時効期間が10年になる(民法169条1項)。ただし、確定の時に弁済期が来ていない債権には、この10年の規定は適用されない(同条2項)。調停で決めた支払がこれに当たるかどうか、時効がいつから進むか(それぞれの支払期限や期限の利益の喪失の定めによる)は、債権の内容によって判断が必要になる。

⑤ 調停に代わる決定。 調停に代わる決定(民事調停法17条)に対して2週間以内に異議がないときも、その決定は裁判上の和解と同一の効力を持つ(民事調停法18条5項)。

成立から履行までの流れ

1. 調停委員会が、合意の内容を調停条項の形にまとめ、当事者に読み上げて確認する。
2. 当事者が同意すると、調書に記載されて調停が成立する。
3. その後、調書の正本などの交付や送達を裁判所に申請する。記載に明らかな誤りがあれば、裁判所に申し出て正してもらう手続がある。必要な申請の方法は裁判所に確認する。
4. 相手方が約束どおりに支払わないときは、給付条項に基づいて、預金や給料の差押えなどの強制執行を申し立てる。
5. 支払が終われば、紛争は終わる。清算条項(「本件に関し、本調停条項に定めるもののほか、何らの債権債務がないことを相互に確認する」など)があれば、ほかの請求も原則としてできなくなる。

実務の視点 調停の席では、条項の言葉を一つずつ確かめることが大切である。支払の方法(振込先・振込手数料の負担)、分割払を怠ったときに残額を一括で払う定め(期限の利益の喪失)、遅延損害金、清算条項の範囲(どの請求まで終わらせるのか)を確認しないと、後で執行できない、または請求できない事態になりやすい。

確認点・よくある誤解

① 「調停で決まった」だけでは差押えができない場合がある。 強制執行に使えるのは給付条項であり、確認条項や協議条項だけでは執行できない。払ってもらう約束は、給付条項として書いてもらう必要がある。

② 後から覆すのは難しい。 成立した調停について、錯誤や詐欺・強迫による取消し(民法95条・96条)や、合意の無効を主張する余地はあるが、単に後悔した、予想と違ったというだけでは争えず、認められる場面は限られる。2020年4月1日より前にされた意思表示には、錯誤を無効とする改正前の民法が適用される(平成29年法律第44号附則6条1項)。取消権は、追認をすることができる時から5年、行為の時から20年で時効によって消滅する(民法126条)。

③ 請求異議の訴えだけでは執行は止まらない。 調書に基づく強制執行を許さないよう求める方法として、請求異議の訴えがある(民事執行法35条1項。裁判以外の債務名義の成立について異議がある場合を含む)。ただし、訴えを起こしただけでは強制執行は止まらず、止めるには、別に強制執行の停止などを求める申立てをし、裁判所の命令を得る必要がある(民事執行法36条)。担保を立てるよう求められることもある。

④ 相手方の財産が分からないとき。 強制執行をするには、相手方の財産(勤務先、預金口座のある金融機関と支店など)を特定する必要がある。財産が分からないときは、要件を満たせば、財産開示手続や、金融機関などから情報を取得する手続を利用できることがある(民事執行法197条・207条)。調停調書があっても、差し押さえられる財産がなければ回収できない。

⑤ 清算条項で終わるのは調停の対象だけとは限らない。 清算条項の書き方によっては、調停の対象にしていなかった請求まで放棄したことになることがある。

議論のある点

議論のある点 調停調書に既判力(同じ争いを蒸し返せない効力)があるか、あるとしてどの範囲かは、学説が分かれている。成立した調停の効力を争う場合に、どの手続(合意の無効を前提とする別の訴え、請求異議の訴えなど)を使うかも、争う理由と強制執行の有無によって異なる。和解として争いをやめた事項そのものについての錯誤と、和解の前提とした事項についての錯誤とで扱いが分かれること、すでに弁済期が来ている債務を調停で分割払にした場合に10年の時効期間が当てはまるかも、解釈が問題になる。成立した調停を争いたい場合は、早めに弁護士に相談してほしい。

法改正の予定

民事調停法には、2026年10月21日現在、施行前の改正がある(e-Gov 法令検索で未施行の版として掲載。施行日は改正法の附則と政令で定められるので、手続をする時点で確認が必要)。調書の作り方や送達の方法が変わることがある。民事執行法にも施行前の改正があるので、手続をする時点の規定を確認してほしい。

特に相談した方がよい場面

・調停の成立直前で、条項の内容に不安がある
・調停で決まった支払がされない
・調停調書で強制執行ができるか分からない、または相手方の財産が分からない
・成立した調停の内容に納得できない、または錯誤などがあったと思う
・調停調書に基づいて強制執行を受けた、または受けそうだ
・清算条項で何が終わったのか分からない

具体的な事案は、法律事務所、弁護士会の法律相談センターや法テラス等にご相談ください。

相談のタイミング

調停が成立する前、条項案が示された段階で相談するのが最も効果的である。成立後に支払がされないときは、相手方の財産が散逸する前に早めに強制執行を検討する。時効の期間も、債権の内容によって異なるので確認しておく。

まとめ

調停調書の記載は裁判上の和解と同一の効力を持ち、給付条項は強制執行の根拠になるが、確認条項などだけでは執行できない。調停で確定した権利の時効期間は、10年より短いものは原則として10年になるが、確定の時に弁済期が来ていない債権は別である。成立後に内容を争うのは難しく、請求異議の訴えを起こしただけでは執行は止まらないので、条項は成立前に十分確かめる。

出典

民事調停法16条・17条・18条(e-Gov 法令検索で原文確認・2026-10-21)

民事訴訟法267条

民事執行法22条・25条・26条・27条・29条・30条・35条・36条・197条・207条

民法95条・96条・126条・147条・169条

民法の一部を改正する法律(平成29年法律第44号)附則6条

最終確認日
2026年10月21日
法令の基準時
2026年10月時点の法令による
出典(外部サイト)
e-Gov 法令検索(デジタル庁)〔外部サイト〕/裁判所ウェブサイト〔外部サイト〕
ご相談
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