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訴訟上の和解|裁判の途中で話し合うとき

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この記事の要点

  • 裁判所は、訴訟がどの段階にあっても、和解を試みることができる(民事訴訟法89条1項)。判決を待たずに、当事者が譲り合って訴訟の対象全部について合意すれば、訴訟は和解で終わる。一部の請求や一部の当事者についてだけ和解した場合は、残りの訴訟が続くことがある。
  • 和解について裁判所書記官が電子調書を作成してファイルに記録すると、その記録は確定判決と同一の効力を持つ(民事訴訟法267条1項)。金銭の支払や明渡しなど、強制執行できる内容の義務が具体的に定められていれば、約束が守られないときは、和解の調書に基づいて強制執行を申し立てることができる。
  • 弁護士などの訴訟代理人が和解をするには、本人から特別の委任を受けている必要がある(民事訴訟法55条2項2号)。和解の内容はいったん成立すると原則として争えないので、条項を本人がよく確かめてから合意する。
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問題提起

裁判の途中で、裁判官から「和解の話をしてみませんか」と言われた。判決まで争うべきか、和解に応じるべきか。応じた場合、その約束にはどのような効力があるのか――訴訟上の和解の基本を整理する。この記事は、金銭の請求など当事者が自由に処分できる権利をめぐる通常の民事訴訟を中心に、民事訴訟のIT化の改正(令和4年法律第48号。主な部分は2026年5月21日に施行)の後の規定で説明している。2026年5月21日より前に起こされた訴えの事件では、和解調書の効力などについて、経過措置により改正前の規定(紙の和解調書)による(同法附則19条)。離婚などの人事訴訟には和解についての特則がある。

法律の文言(民事訴訟法89条1項、267条1項)

裁判所は、訴訟がいかなる程度にあるかを問わず、和解を試み、又は受命裁判官若しくは受託裁判官に和解を試みさせることができる。民事訴訟法89条1項(e-Gov法令検索で原文確認)
裁判所書記官が、和解又は請求の放棄若しくは認諾について電子調書を作成し、これをファイルに記録したときは、その記録は、確定判決と同一の効力を有する。民事訴訟法267条1項(e-Gov法令検索で原文確認)

要件(和解が成立する場面)

① 期日での合意。 当事者双方が、口頭弁論や和解の期日で和解条項に合意すると和解が成立する。裁判所は、相当と認めるときは、当事者の意見を聴いて、電話会議の方法で和解の期日の手続を行うこともできる(民事訴訟法89条2項)。

② 和解条項案の書面による受諾。 当事者の一方が出頭することが困難な場合に、その当事者が、裁判所から示された和解条項案を受諾する書面を出し、他方の当事者が期日に出頭して受諾すると、和解が調ったものとみなされる(民事訴訟法264条1項)。当事者双方が出頭困難な場合に、双方が受諾の書面を出し、裁判所が定めた日時が経過したときも同様である(同条2項)。

③ 裁判所が定める和解条項。 当事者が共同して、裁判所が定める和解条項に服する旨を書面で申し立てたときは、裁判所は事件の解決のために適当な和解条項を定めることができる。その告知が当事者双方にされると和解が調ったものとみなされる(民事訴訟法265条1項〜5項)。当事者は、和解条項の告知の前に限り申立てを取り下げることができ、取り下げるのに相手方の同意は要らない(同条4項)。いったん告知を受けた和解条項には従うことになるので、この申立てをする前に弁護士に相談する。

④ 代理人の特別の委任。 委任を受けた訴訟代理人が和解をするには、特別の委任が必要である(民事訴訟法55条2項2号。法令により裁判上の行為をすることができる代理人の権限は別。同条4項)。和解の権限を代理人に与えている場合、各条項を本人が個別に承認しなかったというだけで和解が当然に無効になるわけではないので、希望する条件や最終確認の方法を代理人と事前に打ち合わせておく。

和解までの流れ(よくある例)

1. 裁判所が、当事者双方の主張や証拠の状況を踏まえて和解を勧める。
2. 裁判官が当事者から個別に事情や希望を聞き、和解の案を調整する。
3. 当事者は、案を持ち帰って検討することができる。ただし、相手方が同じ案で応じ続けるとは限らない。
4. 合意に至ると、期日で和解が成立し、和解条項が電子調書に記録される。電子調書は当事者に送達される(民事訴訟法267条2項)。
5. 和解条項に従って、支払や明渡しなどを行う。

実務の視点 和解条項には、支払の金額・期限・方法(振込先、分割の回数)、期限の利益の喪失(分割払いを怠ったときに残額を一括で払う約束)、訴訟費用の負担、「本件に関し、本和解条項に定めるもののほか何らの債権債務がないことを相互に確認する」という清算条項などが入るのが一般的である。清算条項を入れると、条項に書かなかった請求ができなくなる可能性があるので、漏れがないかを確かめる。和解の内容を口外しない約束(口外禁止条項)を入れることもある。

確認点・よくある誤解

① 和解は判決と同じ効力。 和解調書は確定判決と同一の効力を持つ(民事訴訟法267条1項)。支払が約束どおりされないときは、強制執行の手続に進むことができる。ただし、強制執行できるのは、執行できる内容の義務が具体的に定められている条項についてであり、相手方に差し押さえる財産がなければ現実に回収できるとは限らない。分割払いの残額を一括して請求できるかは、まず期限の利益の喪失の条項の文言とその条件に当たる事実があるかで判断され、法律が定める期限の利益の喪失の事由もある(民法137条)。

② 訴訟費用の定めがなければ各自負担。 和解で和解の費用や訴訟費用の負担を特に定めなかったときは、その費用は各自が負担する(民事訴訟法68条)。ここでいう訴訟費用は、手数料など法律で定められた費用(民事訴訟費用等に関する法律2条)のことで、自分が依頼した弁護士の報酬は通常含まれない。弁護士費用の負担を和解で取り決めるときは、額などを別に明確に定める。

③ 誤記は更正できる。 和解の電子調書に計算違いや誤記などの明白な誤りがあるときは、裁判所は申立てまたは職権で、いつでも更正決定をすることができる(民事訴訟法267条の2第1項)。

④ 成立後に気が変わっても撤回できない。 期日で合意した後に、条件が不満だからといって撤回することはできず、判決のように控訴で争うこともできない。

議論のある点

議論のある点 和解に無効や取消しの原因(錯誤・詐欺など)がある場合には、その効力を争う余地があり、同じ訴訟の期日の指定を求めて元の訴訟の続行を求める方法や、別の訴えを起こす方法がとられる。どの方法が適切か、主張が認められるかは事案によって違う。和解に判決と同じような蒸し返しを禁じる効力(既判力)があるかについては、学説の考え方が分かれている。和解に応じるかどうか、どのような条項にするかも、判決の見通しや相手の資力によって判断が変わる。一般論だけで判断せず、弁護士に相談してほしい。

特に相談した方がよい場面

・裁判所から和解を勧められ、応じるべきか迷っている
・和解条項の内容(清算条項・期限の利益の喪失など)の意味が分からない
・相手が和解の約束を守らない
・和解の内容に誤りや問題があったと思う
・裁判所が定める和解条項に服する共同の申立てを考えている

具体的な事案は、法律事務所、弁護士会の法律相談センターや法テラス等にご相談ください。

相談のタイミング

和解の案が示されたら、合意する前に弁護士に相談する。和解は成立すると撤回できず、調書の記録によって確定判決と同一の効力を持つので、期日の前に条項を確かめることが大切である。

まとめ

訴訟上の和解は、裁判の途中で当事者が合意して訴訟を終える方法で、調書に記録されると確定判決と同一の効力を持つ。出頭が難しいときの書面による受諾などの方法もある。代理人が和解するには特別の委任が必要で、清算条項などの意味をよく確かめてから合意する。

出典

民事訴訟法55条・68条・89条・264条・265条・267条・267条の2(e-Gov 法令検索で原文確認・2026-10-20)

民法137条

民事訴訟費用等に関する法律2条

民事訴訟法等の一部を改正する法律(令和4年法律第48号)附則19条

最終確認日
2026年10月20日
法令の基準時
2026年10月時点の法令による
出典(外部サイト)
e-Gov 法令検索(デジタル庁)〔外部サイト〕/裁判所ウェブサイト〔外部サイト〕
ご相談
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