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手続の選び方|調停・ADR・訴訟の比較

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この記事の要点

  • 話し合いの手続(民事調停・あっせん型のADR)は、相手方が応じなければ合意が成立しない。ただし民事調停では、合意がなくても裁判所が「調停に代わる決定」をすることがあり、2週間以内に異議がなければ裁判上の和解と同一の効力を持つ(民事調停法17条・18条)。民事調停で成立した合意は調書に記載されて強制執行の根拠になる(民事調停法16条、民事執行法22条7号)が、ADRの和解は、法務大臣の認証を受けた手続で一定の要件を満たす場合を除き、それだけでは強制執行の根拠にならない。
  • 裁判所を利用して強制執行の根拠を得る手続(支払督促・少額訴訟・通常の訴訟)は、相手方が応じなくても進み、相手方が争わなければ比較的早く強制執行の根拠を得られる。支払督促は相手方が督促異議を出すと通常の訴訟に移る(民事訴訟法395条)。少額訴訟は60万円以下の金銭の請求に限られる(民事訴訟法368条1項)。
  • 時効が近い権利は、手続ごとの時効の扱いを確かめて選ぶ。訴えの提起・支払督促・裁判所での和解の申立て・民事調停は時効の完成を猶予させる(民法147条1項)。ADRについては、法務大臣の認証を受けた手続が和解の見込みがないとして終了した場合に、終了の通知から1か月以内に訴えを起こしたときの特例などがある(裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律25条)。ほかの法律で時効の特例が定められているADRもあるので、利用する手続ごとに確かめる。

期限に注意

手続ごとに期間がある。支払督促を受けた債務者は、督促異議を、仮執行の宣言がされる前であればいつでも出せる。送達を受けた日から2週間を過ぎると、債権者は仮執行の宣言を申し立てることができる(民事訴訟法390条・391条1項)。仮執行宣言付きの支払督促の送達を受けた日から2週間の不変期間を過ぎると、督促異議を出せなくなる(民事訴訟法393条)。仮執行宣言付きの支払督促による強制執行は、督促異議を出しただけでは当然には止まらない。債権者は、仮執行の宣言を申し立てることができる時から30日以内に申し立てないと、支払督促は効力を失う(民事訴訟法392条)。民事調停では、調停に代わる決定への異議は告知を受けた日から2週間以内にする(民事調停法18条1項)。調停が不成立で終わったときなどは、申立人が通知を受けた日から2週間以内に訴えを起こせば、調停の申立ての時に訴えを起こしたものとみなされる(民事調停法19条)。認証紛争解決手続の終了の通知を受けた日から1か月以内の訴え提起にも特例がある(裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律25条1項。認証が効力を失ったり取り消されたりした場合も、同条2項・3項の特例がある)。仮執行宣言付きの支払督促や少額訴訟の判決の異議の期間を守れなかったときの追完は、責めに帰することのできない事由がなくなってから1週間以内(外国にいる当事者は2か月以内)に限られる(民事訴訟法97条1項)。少額訴訟の判決には控訴できず、判決書などの送達から2週間の不変期間内に異議を申し立てる(民事訴訟法377条・378条1項)。2020年4月1日より前に生じた債権(それより前の契約などに基づいてその後に生じた債権を含む)の時効期間は改正前の民法により、それより前に生じた時効の中断・停止の事由の効力も改正前の民法による(平成29年法律第44号附則10条2項・4項)。期限を過ぎると権利を失ったり手続ができなくなったりすることがあり、いつから数えるか・延ばせるかは事情で変わるので、思い当たる方はできるだけ早く弁護士に確認してほしい。

問題提起

お金を払ってもらえない、約束を守ってもらえない――民事の争いを解決する手続は、訴訟だけではない。話し合いで解決を目指す手続と、裁判所が判断する手続があり、それぞれ費用、期間、相手方が応じる必要があるか、強制執行ができるかが違う。この記事は、2026年10月21日現在の法律で、主な手続を比べる。ここでいうADRは、第三者が話し合いを仲介する「あっせん・調停型」の手続を指し、仲裁人が判断する仲裁は扱わない。民事訴訟のIT化の改正(令和4年法律第48号。主な部分は2026年5月21日に施行)より前に起こされた事件や申し立てられた支払督促には、改正前の規定による部分がある(同法附則)。

法律の文言(民法147条1項)

次に掲げる事由がある場合には、その事由が終了する(確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって権利が確定することなくその事由が終了した場合にあっては、その終了の時から六箇月を経過する)までの間は、時効は、完成しない。
一 裁判上の請求
二 支払督促
三 民事訴訟法第二百七十五条第一項の和解又は民事調停法(昭和二十六年法律第二百二十二号)若しくは家事事件手続法(平成二十三年法律第五十二号)による調停
四 破産手続参加、再生手続参加又は更生手続参加民法147条1項(e-Gov法令検索で原文確認)

主な手続の比べ方

① 民事調停(簡易裁判所など)。 調停委員会を交えた話し合いの手続。呼出しに正当な事由なく応じないと過料があるが(民事調停法34条)、合意は強制されない。手数料は、訴えの手数料のうち訴額に応じた部分の約半分の水準(民事訴訟費用等に関する法律別表第一の14の項)。成立すれば調書は裁判上の和解と同一の効力を持ち(民事調停法16条)、給付条項は強制執行の根拠になる。合意がなくても調停に代わる決定がされることがある(民事調停法17条)。

② 弁護士会などのADR(あっせん・調停型の裁判外紛争解決手続)。 弁護士などのあっせん人を交えた話し合いの手続。相手方が応じなければ進まない。費用は運営する機関の規則による。和解は原則として契約の効力にとどまり、強制執行の根拠になるのは、認証紛争解決手続で民事執行ができる旨の合意をした特定和解について、裁判所の執行決定が確定した場合などに限られる(裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律27条の2、民事執行法22条6号の5)。消費者と事業者の間の契約に関する紛争や個別労働関係紛争などの特定和解は、執行決定の対象にならない(同法27条の3)。

③ 支払督促(簡易裁判所の裁判所書記官)。 金銭その他の代替物または有価証券の一定の数量の給付を求める請求について、債務者の住所地などの簡易裁判所の裁判所書記官に申し立て、債務者を審尋せずに発せられる(民事訴訟法382条・383条・386条1項)。債務者が督促異議を出すと通常の訴訟に移る(民事訴訟法395条)。異議が出なければ、債権者が仮執行の宣言を申し立て、仮執行宣言付きの支払督促に異議がないまま期間が過ぎると、確定判決と同一の効力を持つ(民事訴訟法391条・393条・396条)。手数料は、訴えの手数料の訴額に応じた部分の2分の1に定額の部分を加えた額である(民事訴訟費用等に関する法律別表第二の11の項)。日本において公示送達によらずに送達できる場合に限られ、公示送達が必要な場合や外国での送達が必要な場合には使えない(民事訴訟法382条ただし書)。支払督促は、債務者を審尋せずに発せられるので、請求が正しいと裁判所が審理して確かめたことを意味しない。

④ 少額訴訟(簡易裁判所)。 60万円以下の金銭の請求について原則1回の期日で審理する。同じ簡易裁判所で同じ年に10回までの制限があり、被告は、最初の期日で弁論をする前で、かつその期日が終わる前なら、通常の訴訟への移行を申し出られる(民事訴訟法368条・373条、民事訴訟規則223条)。判決には控訴できず、異議による(民事訴訟法377条・378条)。裁判所が3年以内の分割払などを定めることがある(民事訴訟法375条)。

⑤ 通常の訴訟。 少額訴訟のような金額の制限はなく、争いがあっても裁判所が判断する(離婚など家庭に関する事件は、別の手続による)。時間と費用は最もかかりやすいが、事実関係に争いがある事件の最終的な解決手段になる。訴額140万円以下は原則として簡易裁判所、それを超えると地方裁判所が第一審となる(裁判所法33条1項1号・24条1号。不動産に関する訴訟などの例外がある)。

⑥ 訴え提起前の和解(即決和解)。 当事者間でほぼ合意ができているときに、簡易裁判所に和解の申立てをして和解を調書にしてもらう手続(民事訴訟法275条1項)。成立した和解は確定判決と同一の効力を持ち、金銭の支払に限らず建物の明渡しなどについても強制執行の根拠になる。手数料は2,700円(インターネットで申し立てる場合は2,400円)である(民事訴訟費用等に関する法律別表第二の10の項)。

選ぶときの考え方(流れ)

1. 相手方が請求自体を争っているか、単に払わないだけかを見極める。争っていないなら支払督促や少額訴訟が候補になる。少額訴訟は争いがある事件でも使えるが、1回の期日で調べられる証拠で足りるかが分かれ目になる。
2. 相手方と関係を続けたいか、話し合いに応じる見込みがあるかを考える。見込みがあれば調停やADRが候補になる。
3. 強制執行が必要になりそうかを考える。必要なら、強制執行の根拠が得られる手続(調停・支払督促・訴訟・訴え提起前の和解など)を選ぶ。
4. 相手方が財産を処分しそうなら、解決の手続を待たずに仮差押えなどの民事保全を検討する。
5. 時効が近いかを確かめ、時効の完成猶予が確実に得られる手続を選ぶ。
6. 費用(手数料・弁護士費用)と期間の見通しを比べる。

実務の視点 最初に選んだ手続でうまくいかないと、別の手続をやり直すことになり、時間がかかる。相手方の態度(連絡がつくか、争っている点はどこか)、証拠の量、相手方の財産の有無を最初に整理すると、手続を選びやすい。強制執行の根拠を得ても自動的に入金されるわけではなく、差し押さえられる財産がなければ回収できない。

確認点・よくある誤解

① 話し合いの手続でも出頭の負担はある。 調停では呼び出された当事者が正当な事由なく出頭しないと過料の対象になる(民事調停法34条)。ただし、出頭しても合意する義務はない。

② 支払督促は相手方の住所地の裁判所。 支払督促は原則として債務者の住所地などの簡易裁判所の裁判所書記官に申し立てる(民事訴訟法383条1項)。督促異議が出ると、その簡易裁判所または所在地の地方裁判所の訴訟に移る(民事訴訟法395条)。遠方の相手方に使うと、訴訟がその地で行われることがある。

③ 協議の合意で時効の完成を猶予させる方法もある。 権利について協議を行う旨の合意を書面(電磁的記録を含む)ですると、合意から1年、1年未満の協議期間を定めたときはその期間、協議の続行を拒絶する旨の書面による通知から6か月のいずれか早い時まで、時効の完成が猶予される(民法151条1項・4項)。再度の合意による猶予は、合意がなかったとすれば時効が完成すべき時から通じて5年を超えられない(同条2項)。催告で完成が猶予されている間にした合意にも、合意で猶予されている間にした催告にも、猶予の効力はない(同条3項)。単に話し合いを続けるだけでは足りない。

④ 手続の途中で切り替わることがある。 訴訟の途中で調停に付されたり(民事調停法20条1項)、支払督促が訴訟に移ったりすることがある。

議論のある点

議論のある点 どの手続が適切かは、請求の内容、相手方の態度、証拠、時効、費用、相手方の財産の状況を総合して判断するもので、決まった正解はない。手続ごとの期間の目安も、事件の内容や裁判所・運営機関の運用によって大きく異なる。一般論だけで判断せず、弁護士に相談してほしい。

法改正の予定

民事訴訟費用等に関する法律・民事調停法・裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律・民事執行法には、2026年10月21日現在、施行前の改正がある(e-Gov 法令検索で未施行の版として掲載。施行日は改正法の附則と政令で定められるので、手続をする時点で確認が必要)。民事訴訟法382条〜396条・275条には、施行前の改正は見当たらない。

特に相談した方がよい場面

・どの手続を使えばよいか分からない
・相手方が請求を争っているか、単に払わないだけか判断できない
・時効が近い
・相手方が遠方に住んでいる、外国にいる、または住所が分からない
・相手方が財産を処分しそうで、解決を待つと回収できなくなるおそれがある
・訴状、支払督促、調停に代わる決定、判決、差押命令などが届いた
・和解で分割払、請求の放棄、清算条項などを提案されている

具体的な事案は、法律事務所、弁護士会の法律相談センターや法テラス等にご相談ください。

相談のタイミング

手続を申し立てる前、相手方とのやり取りが行き詰まった段階で相談するのがよい。時効が近い場合や、支払督促・調停に代わる決定などの書類が届いた場合は、期間が短いのですぐに相談する。

まとめ

民事の争いの解決手続には、話し合いの手続(民事調停・ADR)と、裁判所が判断する手続(支払督促・少額訴訟・通常の訴訟)、合意を調書にする訴え提起前の和解がある。相手方が応じる見込み、強制執行の必要、財産の散逸のおそれ、時効、費用と期間を比べて選ぶ。2週間・1か月・30日など、手続ごとの期間とその条件に注意する。

出典

民事訴訟法97条・275条・368条・373条・375条・377条・378条・382条・383条・386条・390条〜393条・395条・396条(e-Gov 法令検索で原文確認・2026-10-21)

民事調停法16条〜20条・34条

裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律25条・27条の2・27条の3

民事訴訟費用等に関する法律別表第一・別表第二

民事執行法22条

民法147条・151条

民法の一部を改正する法律(平成29年法律第44号)附則10条

裁判所法24条・33条

民事訴訟規則223条(裁判所ウェブサイト掲載の2026年5月21日の版で確認)

最終確認日
2026年10月21日
法令の基準時
2026年10月時点の法令による
出典(外部サイト)
e-Gov 法令検索(デジタル庁)〔外部サイト〕/裁判所ウェブサイト〔外部サイト〕
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