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少額訴訟|一回で終わる手続の向き不向き

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この記事の要点

  • 少額訴訟は、簡易裁判所で、訴訟の目的の価額が60万円以下の金銭の支払の請求について利用できる手続で、同じ簡易裁判所で同じ年に利用できるのは10回までである(民事訴訟法368条1項、民事訴訟規則223条)。少額訴訟を求めることは、訴えを起こすときに申し出る(民事訴訟法368条2項)。
  • 原則として最初の口頭弁論期日で審理を終え、その場で判決が言い渡される(民事訴訟法370条1項・374条1項)。証拠は、その場ですぐに調べられるものに限られる(民事訴訟法371条)。被告は、最初の期日で弁論をする前で、かつその期日が終わる前なら、通常の訴訟に移すよう申し出ることができる(民事訴訟法373条1項)。
  • 少額訴訟の判決には控訴できず、判決をした簡易裁判所に、判決書(電子判決書など)の送達を受けた日から2週間の不変期間内に異議を申し立てる(民事訴訟法377条・378条1項)。異議の後の判決には控訴できない(民事訴訟法380条1項)。請求を認める判決には仮執行宣言が付くので、確定前でも強制執行を受けることがある(民事訴訟法376条1項)。

期限に注意

少額訴訟の判決に対する異議は、判決書(電子判決書または判決の内容を記録した電子調書)の送達を受けた日から2週間の不変期間内にしなければならない(民事訴訟法378条1項)。判決の言渡しの日から数えるのではない。送達を受けた日は、本人が実際に書類を読んだ日と一致するとは限らない(インターネットでの送達は、閲覧しなくても通知から1週間で効力が生じることがある。民事訴訟法109条の3第1項)。期間は原則として送達を受けた日の翌日から数え(インターネットでの送達は効力が生じた日時によって数え方が変わることがあるので、裁判所の記録で確認する)、末日が土日・祝日などの休日や年末年始(12月29日から1月3日)に当たるときは、その翌日(休日が続くときは休日明けの日)に満了する(民事訴訟法95条3項)。不変期間は通常の延長ができず、自分の責めに帰することのできない事由で期間を守れなかった場合の追完も、その事由がなくなってから1週間以内(外国にいる当事者は2か月以内)に限られる(民事訴訟法97条1項)。期間内に異議がなければ判決は確定する。また、請求を認める判決には仮執行宣言が付くので、確定前でも強制執行を受けることがあり、異議を申し立てただけでは執行は止まらない。期限を過ぎると権利を失ったり手続ができなくなったりすることがあり、いつから数えるか・延ばせるかは事情で変わるので、思い当たる方はできるだけ早く弁護士に確認してほしい。

問題提起

貸したお金が返ってこない、敷金が戻らない、少額の代金が払われない――金額が小さいと、時間と費用をかけて裁判をするのはためらわれる。そのような小さなお金の争いを、原則1回の期日で解決するために設けられたのが少額訴訟である。ただ、早く終わる分だけ制約もあり、向かない事件もある。この記事は、民事訴訟のIT化の改正(令和4年法律第48号。主な部分は2026年5月21日に施行)の後の規定で説明している。2026年5月21日より前に起こされた少額訴訟の判決の言渡しの方式と異議の申立ては、改正前の規定(判決書または判決に代わる調書の送達を受けた日から2週間)による(同法附則22条)。

法律の文言(民事訴訟法368条1項・370条1項)

簡易裁判所においては、訴訟の目的の価額が六十万円以下の金銭の支払の請求を目的とする訴えについて、少額訴訟による審理及び裁判を求めることができる。ただし、同一の簡易裁判所において同一の年に最高裁判所規則で定める回数を超えてこれを求めることができない。民事訴訟法368条1項(e-Gov法令検索で原文確認)
少額訴訟においては、特別の事情がある場合を除き、最初にすべき口頭弁論の期日において、審理を完了しなければならない。民事訴訟法370条1項(e-Gov法令検索で原文確認)

要件・仕組み

① 対象。 簡易裁判所に起こす訴えで、訴訟の目的の価額が60万円以下の金銭の支払の請求に限られる(民事訴訟法368条1項)。物の引渡しや建物の明渡しの請求は対象にならない。

② 回数の制限と届出。 同じ簡易裁判所で同じ年に少額訴訟を求められるのは10回まで(民事訴訟規則223条)。訴えを起こすときに、その年にその簡易裁判所で少額訴訟を求めた回数を届け出なければならず(民事訴訟法368条3項)、虚偽の届出は10万円以下の過料の対象になる(民事訴訟法381条1項)。

③ 一期日審理と証拠の制限。 当事者は、原則として最初の期日の前またはその期日に、すべての主張と証拠を出さなければならない。口頭弁論が続行されたときはこの限りでないが、続行されるとは限らない(民事訴訟法370条2項)。証拠調べは、即時に取り調べることができる証拠に限られる(民事訴訟法371条)。証人は、期日に連れてくるなど、その場で尋問できる状態にしておく必要がある。少額訴訟では反訴を起こすことはできない(民事訴訟法369条)。

④ 通常の訴訟への移行。 被告は、通常の手続に移すよう申し出ることができ、申し出た時点で通常の訴訟に移る(民事訴訟法373条1項・2項)。ただし、被告が最初の期日で弁論をした後や、その期日が終わった後は申し出られない(同条1項ただし書)。欠席して弁論をしていなくても、期日が終われば申し出られない。裁判所も、相手方に公示送達でしか呼出しができないときや、少額訴訟で審理するのが相当でないと認めるときなどは、通常の手続で審理する決定をする(同条3項)。

⑤ 分割払などの判決。 裁判所は、請求を認める判決をする場合、被告の資力などを考えて特に必要があると認めるときは、判決の言渡しの日から3年を超えない範囲で、支払の時期を定めたり分割払を定めたりできる。あわせて、その定めに従って払えば訴え提起後の遅延損害金を免除するという定めをすることもできる(民事訴訟法375条1項)。分割払を定めるときは、支払を怠った場合に期限の利益を失う(残額をまとめて払わなければならなくなる)ことについての定めもしなければならず(同条2項)、どのような不払で期限の利益を失うかは判決の記載で確認する。この定めについては不服を申し立てられない(同条3項)。

⑥ 仮執行宣言。 請求を認める判決には、裁判所が職権で仮執行の宣言を付けなければならない(民事訴訟法376条1項)。

少額訴訟の流れ

1. 訴状に少額訴訟を求める旨とその年の利用回数を書き、簡易裁判所に提出する。
2. 裁判所から期日の呼出しがあり、少額訴訟の手続を説明した書面が送られる(民事訴訟規則222条1項)。
3. 期日の冒頭で裁判官が手続の説明をし(民事訴訟規則222条2項)、当事者の言い分と証拠を調べる。話し合いで和解することもある。
4. 審理が終わると、原則としてその場で判決が言い渡される(民事訴訟法374条1項)。
5. 不服があれば2週間以内に異議を申し立てる(民事訴訟法378条1項)。適法な異議があると、同じ簡易裁判所で通常の手続により審理し直す(民事訴訟法379条1項)。
6. 相手方が払わなければ強制執行をする。少額訴訟の確定判決や仮執行宣言付きの少額訴訟の判決など法律に定めるものに基づいて、相手方が持つ預金や給料などの債権を差し押さえるときは、判決をした簡易裁判所の裁判所書記官に申し立てる「少額訴訟債権執行」を利用することもできる(民事執行法167条の2第1項・3項)。

実務の視点 少額訴訟は「1回で終わる」ことが最大の利点だが、その1回に向けて、契約書・領収書・やり取りの記録・写真などの証拠を整理し、請求額の計算を説明できるようにしておくことが欠かせない。相手方が通常の訴訟への移行を申し出ることもあるので、移行した場合の見通しも考えておくとよい。

確認点・よくある誤解

① 向く事件。 争点が比較的少なく、契約書や領収書などの書類で事実を示しやすい事件(少額の貸金、売掛金、敷金の返還、少額の損害賠償など)は向いている。争いがある事件でも利用できるが、1回の期日で調べられる証拠で判断できるかが分かれ目になる。

② 向かない事件。 事実関係に大きな争いがある事件、証拠が多い事件、専門的な鑑定が必要な事件、相手方の住所が分からない事件は向かない。相手方が支払能力に乏しい場合は、判決を得ても回収できないことがある。

③ 60万円を超える債権の扱い。 債権の全体が60万円を超えるとき、その一部であることを明らかにして60万円以下の部分だけを少額訴訟で請求することが考えられる。ただし、残りの部分を後で請求できるか、残りの部分の時効がどうなるか、同じ債権を分けて繰り返し訴えることが許されるかといった問題があり、回数の制限もある。60万円を超える債権は、通常の訴訟や支払督促、調停なども含めて事前に検討する。

④ 控訴はできない。 少額訴訟の判決への不服は異議によるのであって、地方裁判所への控訴はできない(民事訴訟法377条)。異議の後の判決にも控訴はできない(民事訴訟法380条1項)。

⑤ 通常の手続に移った後の判決。 被告の申出などで通常の手続に移った後の判決は、少額訴訟の判決ではないので、通常の訴訟と同じく控訴の対象になる。少額訴訟債権執行も、法律に定める少額訴訟の債務名義に限って利用できる(民事執行法167条の2第1項)。

議論のある点

議論のある点 どの程度の争いがあれば少額訴訟が「相当でない」として通常の手続に移されるか、どのような証拠が「即時に取り調べることができる」といえるか、分割払の定めがどの程度認められるかは、事件と裁判所の判断による。債権の一部だけを少額訴訟で請求した場合の残りの扱いも、事情によって判断が分かれる。少額訴訟を選ぶか、支払督促や通常の訴訟、調停にするかも、相手方の対応の見込みによって変わる。

法改正の予定

民事訴訟法368条から381条には、2026年10月21日現在、施行前の改正は見当たらない(e-Gov 法令検索で確認)。民事執行法には施行前の改正がある(e-Gov 法令検索で未施行の版として掲載。施行日は改正法の附則と政令で定められるので、手続をする時点で確認が必要)。

特に相談した方がよい場面

・少額訴訟と通常の訴訟・支払督促のどれを選ぶか迷っている
・少額訴訟を起こされたが、言い分が多く1回では足りない
・判決に不服があり、異議を出すか考えている
・判決に基づいて強制執行をされそう、または判決を得たが相手方が払わない
・請求額が60万円に近い、または請求が複数ある

具体的な事案は、法律事務所、弁護士会の法律相談センターや法テラス等にご相談ください。

相談のタイミング

訴状を出す前に、証拠がそろっているか、少額訴訟が向く事件かを確認するのがよい。訴えられた側は、最初の期日で弁論をする前(期日当日でも、弁論前でその期日が終わる前なら申し出られる)に通常の訴訟への移行を申し出るかどうかを決める必要があるので、呼出状が届いたらすぐに相談する。

まとめ

少額訴訟は、60万円以下の金銭の請求を原則1回の期日で審理する簡易裁判所の手続で、同じ簡易裁判所で年10回までの制限がある。証拠はその場で調べられるものに限られ、被告は通常の訴訟への移行を申し出られる。判決には控訴できず、送達から2週間以内の異議によって同じ裁判所で審理し直す。請求を認める判決には仮執行宣言が付き、確定前でも強制執行を受けることがある。

出典

民事訴訟法95条・97条・109条の3・368条〜381条(e-Gov 法令検索で原文確認・2026-10-21)

民事訴訟法等の一部を改正する法律(令和4年法律第48号)附則22条

民事執行法167条の2

民事訴訟規則222条・223条(裁判所ウェブサイト掲載の2026年5月21日の版で確認)

最終確認日
2026年10月21日
法令の基準時
2026年10月時点の法令による
出典(外部サイト)
e-Gov 法令検索(デジタル庁)〔外部サイト〕/裁判所ウェブサイト〔外部サイト〕
ご相談
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