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本人訴訟|弁護士をつけずに裁判をするとき

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この記事の要点

  • 民事訴訟は、弁護士をつけずに当事者本人がすることができる(本人訴訟)。ただし、本人以外の人に代理してもらう場合、地方裁判所以上では、法令で裁判上の行為ができる代理人(会社の支配人など)を除き、弁護士しか訴訟代理人になれない(民事訴訟法54条1項本文)。
  • 簡易裁判所では、裁判所の許可を得て弁護士でない人を訴訟代理人にすることができる(民事訴訟法54条1項ただし書)。また、法務大臣の認定を受けた司法書士(認定司法書士)は、訴訟の目的の価額が140万円を超えない簡易裁判所の事件などで代理人になれる(司法書士法3条1項6号・2項・6項、裁判所法33条1項1号)。
  • 本人訴訟では、何を主張し、どの証拠を出すかを自分で判断する。権利の発生や消滅に直接関係する重要な事実は、原則として当事者のどちらかが主張しなければ判決の基礎にされない。相手方が主張した事実を争うことを明らかにしないと、原則としてその事実を自白したものとみなされる(民事訴訟法159条1項)など、手続の決まりを知らないことで不利になることがある。

期限に注意

本人訴訟でも、手続の期間は弁護士がついている場合と同じように進む。訴状が届いたのに、答弁書も出さず最初の期日にも出頭しないと、原告が主張した事実を自白したものとみなされて、原告の請求を認める判決が出ることがある(民事訴訟法159条3項・1項)。最初の期日に出頭できなくても答弁書を出しておけば、その記載を陳述したものとみなされることがある(民事訴訟法158条)が、それで以後の対応が不要になるわけではない。通常の第一審判決に対する控訴は、判決書(電子判決書など)の送達を受けた日から2週間の不変期間内にしなければならない(民事訴訟法285条)。少額訴訟の判決には控訴できず、判決書などの送達を受けた日から2週間の不変期間内に、判決をした簡易裁判所に異議を申し立てる(民事訴訟法377条・378条1項)。異議の後の判決には控訴できない(民事訴訟法380条1項)。法定審理期間訴訟手続の判決も、控訴ではなく異議による(民事訴訟法381条の7)。不変期間は通常の延長ができない。責めに帰することのできない事由で期間を守れなかったときの追完も、その事由がなくなってから1週間以内(外国にいる当事者は2か月以内)に限られる(民事訴訟法97条1項)。期限を過ぎると権利を失ったり手続ができなくなったりすることがあり、いつから数えるか・延ばせるかは事情で変わるので、思い当たる方はできるだけ早く弁護士に確認してほしい。

問題提起

弁護士費用をかけずに自分で裁判をしたい、相手から訴えられたが自分で対応したい――このように、当事者本人が訴訟をすることを本人訴訟という。法律上は認められているが、手続には決まりが多い。この記事は、民事訴訟のIT化の改正(令和4年法律第48号。主な部分は2026年5月21日に施行)の後の規定で説明している。2026年5月21日より前に起こされた訴えの事件は、判決の方式や控訴期間の起算点などについて改正前の規定による部分がある(同法附則)。

法律の文言(民事訴訟法54条1項)

法令により裁判上の行為をすることができる代理人のほか、弁護士でなければ訴訟代理人となることができない。ただし、簡易裁判所においては、その許可を得て、弁護士でない者を訴訟代理人とすることができる。民事訴訟法54条1項(e-Gov法令検索で原文確認)

要件・仕組み

① 本人ができること。 民事訴訟法には、当事者本人に一般的に弁護士をつけることを義務づける規定はない。訴状・答弁書・準備書面の作成と提出、期日への出頭、証拠の提出、和解の協議などを本人がすることができる。ただし、未成年者や成年被後見人は、原則として法定代理人によらなければ訴訟行為ができない(民事訴訟法31条)。被保佐人や、補助人の同意を要するとされた被補助人は、自分から訴えを起こすなどの訴訟行為に保佐人などの同意が要る場合があり、和解や訴えの取下げなどには特別の授権が要る(民事訴訟法32条)。また、訴訟関係を明らかにするために必要な陳述ができない当事者については、裁判所が陳述を禁じ、必要があれば弁護士の付添いを命ずることがある(民事訴訟法155条)。

② 代理人になれる人。 本人以外に手続を任せる場合、地方裁判所・高等裁判所などでは弁護士と、法令で裁判上の行為ができる代理人に限られる(民事訴訟法54条1項本文)。簡易裁判所では、裁判所の許可を得れば弁護士でない人も訴訟代理人になれるが、許可はいつでも取り消されることがある(同項ただし書・同条2項)。

③ 認定司法書士。 法務大臣が指定する研修を修了して法務大臣の認定を受け、司法書士会の会員である司法書士は、簡易裁判所の民事訴訟手続のうち、訴訟の目的の価額が140万円を超えないものなどで代理人になれる(司法書士法3条1項6号・2項・6項、裁判所法33条1項1号)。ただし、上訴の提起(自ら代理人として手続に関与している事件の判決などに対するものを除く)、再審、強制執行に関する事項(少額訴訟債権執行を除く)は代理できない(司法書士法3条1項6号ただし書)。控訴を提起できる場合でも、地方裁判所での控訴審の代理はできない。司法書士は、金額にかかわらず、裁判所に出す書類を作成することもできる(同項4号)。

④ 補佐人。 当事者は、裁判所の許可を得て、補佐人と一緒に出頭することができる(民事訴訟法60条1項)。補佐人の陳述は、当事者が直ちに取り消したり訂正したりしないときは、当事者自身がしたものとみなされる(同条3項)。補佐人は代理人ではないので、本人に代わって一人で期日に出頭することはできない。

⑤ オンライン提出とインターネットでの送達。 2026年5月21日以後、訴状や準備書面などの申立て・申述は、最高裁判所規則で定める裁判所のシステムを使って提出することができる(民事訴訟法132条の10)。委任を受けた訴訟代理人(簡易裁判所の許可を受けた代理人を除く)はシステムでの提出が義務になったが(民事訴訟法132条の11第1項1号)、当事者本人は書面で提出することもできる。裁判所からの書類をシステムで受け取るには届出が必要で(民事訴訟法109条の2第1項ただし書)、届出をした場合、送達は、閲覧した時、記録した時、または通知が発せられてから1週間が経過した時のうち最も早い時に効力を生じる(民事訴訟法109条の3第1項)。閲覧していなくても送達の効力が生じ、控訴期間などが進み始めることがある。責めに帰することのできない事由で閲覧も記録もできなかった期間は、この1週間に算入されない(同条2項)。

本人訴訟の流れ(訴える側の場合)

1. 請求の内容と根拠を整理し、証拠(契約書、領収書、やり取りの記録など)を集める。
2. 訴状を作成し、管轄の裁判所に提出して手数料を納める。訴額140万円以下なら原則として簡易裁判所である(裁判所法33条1項1号)。
3. 裁判所から期日の呼出しがあり、相手方の答弁書が届く。
4. 期日で主張を述べ、相手方の主張に対する認否・反論を準備書面に書いて出す(民事訴訟法161条。簡易裁判所では書面での準備が原則として要らないが、相手方が準備しなければ答えられない事項は書面で準備するなどの必要がある。民事訴訟法276条)。
5. 証拠を出し、必要なら証人や本人の尋問をする。
6. 和解、または判決で終わる。判決に不服があれば、控訴(少額訴訟なら異議)を検討する。

実務の視点 裁判所の窓口では、手続の進め方や書式の説明は受けられるが、裁判所は中立の立場にあるため、どう主張すれば勝てるかといった助言を受けることはできない。途中から弁護士に依頼することもできるが、それまでにした主張や自白、提出しなかった証拠の影響が残ることがあるので、迷ったら早めに相談するのがよい。

確認点・よくある誤解

① 自分に有利な事実は自分で主張する。 裁判所は、当事者が主張した事実と提出された証拠をもとに判断する。権利の発生や消滅に直接関係する重要な事実は、原則としてどちらかの当事者が主張しなければ、裁判所が自ら探して補ってくれるわけではない。相手方が出した主張や証拠が自分に有利に使われることはあり、法律の解釈・適用は裁判所が行う。

② 争う事実ははっきり争う。 相手方の主張した事実を争うことを明らかにしないと、その事実を自白したものとみなされる(民事訴訟法159条1項本文)。ただし、弁論の全体から争ったものと認められるときは、この限りでない(同項ただし書)。「知らない」と述べた事実は、争ったものと推定される(同条2項)。期日に欠席した場合も同じ扱いになりうるが、公示送達による呼出しを受けた場合は別である(同条3項)。

③ 後から出せばよいとは限らない。 故意または重大な過失によって時機に後れて出した主張や証拠は、訴訟の完結を遅らせると認められると、却下されることがある(民事訴訟法157条1項)。言いたいことは早めに整理して出す必要がある。

④ 費用は弁護士費用以外もかかる。 本人訴訟でも、訴えの手数料などの訴訟費用はかかり、負ければ原則として法律で定める範囲の相手方の訴訟費用も負担する(民事訴訟法61条)。相手方が自分の弁護士に払った着手金・報酬金がそのまま訴訟費用になるわけではない。

⑤ 法人の場合。 会社などの法人は、代表者が法人を代表して訴訟をする。通常の従業員を訴訟代理人にする場合、簡易裁判所では裁判所の許可が必要で、地方裁判所以上では認められない。弁護士や、支配人など法令により裁判上の行為ができる代理人は別である(民事訴訟法54条1項)。

議論のある点

議論のある点 事件のどの段階で弁護士に依頼すべきか、本人訴訟で足りる事件かどうか(争点の数、証拠の量、相手方に弁護士がついているかなど)は、事件ごとに判断が分かれる。簡易裁判所でどのような人に代理の許可が出るかも、裁判所の運用と事情による。どの事実を主張する必要があるか(主張しなければならない事実の範囲)も、請求の内容によって異なる。一般論だけで判断せず、弁護士に相談してほしい。

法改正の予定

民事訴訟法54条・60条・132条の10・132条の11・159条には、2026年10月21日現在、施行前の改正は見当たらない(e-Gov 法令検索で確認)。

特に相談した方がよい場面

・相手方に弁護士がついている
・請求額が大きい、または争点が多く証拠が複雑である
・訴状が届いたが、どう答えればよいか分からない
・すでに期日を欠席した、答弁書を出していない、または不利な事実を認めてしまった
・時効が近い、または期限を過ぎたかもしれない
・古い債務の支払を請求された(時効は期間が過ぎただけでは当然には適用されず、援用が必要である。民法145条)
・判決に不服があり、控訴(少額訴訟なら異議)を検討したい
・仮執行宣言付きの判決を受け、強制執行をされそう
・費用を理由に本人訴訟を選ぼうとしており、法テラスの立替えや訴訟上の救助を利用できるか確かめたい

具体的な事案は、法律事務所、弁護士会の法律相談センターや法テラス等にご相談ください。

相談のタイミング

訴えを起こす前、または訴状が届いたらすぐに、本人で進められる事件かどうかを一度相談しておくとよい。本人で進める場合も、答弁書や重要な準備書面を出す前、和解に応じる前、判決を受けた直後は、専門家に確認する価値が大きい。

まとめ

民事訴訟は本人でもできるが、代理人を立てるなら、地方裁判所以上では法令上の代理人を除き弁護士に限られ、簡易裁判所では許可代理や認定司法書士の代理もある。本人訴訟では、重要な事実は原則として当事者のどちらかが主張しなければ判断の基礎にされず、必要な主張や証拠を適時に出さないと、欠席や時機に後れた主張とあわせて不利になることがある。判決への不服申立ての方法と期間は、手続の種類によって異なる。

出典

民事訴訟法31条・54条・60条・61条・109条の2・109条の3・132条の10・132条の11・155条・157条〜159条・161条・276条・285条・377条・378条(e-Gov 法令検索で原文確認・2026-10-21)

民事訴訟法32条・97条・380条・381条の7

民法145条

司法書士法3条

裁判所法33条

最終確認日
2026年10月21日
法令の基準時
2026年10月時点の法令による
出典(外部サイト)
e-Gov 法令検索(デジタル庁)〔外部サイト〕/裁判所ウェブサイト〔外部サイト〕
ご相談
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