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受任通知|弁護士が相手方に連絡を始めるとき

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この記事の要点

  • 受任通知は、弁護士が依頼者から事件を引き受けたことと、今後の連絡を弁護士にしてほしいことを相手方に知らせる書面である。法律で決められた名前の書面ではなく、内容は事件によって異なる。
  • 借金の整理(債務整理)を弁護士に頼み、弁護士から貸金業者に書面で通知があった場合、貸金業者は、正当な理由がないのに、債務者に電話・訪問などで弁済を求め、債務者から直接求めないよう求められたのにさらに要求するなどの取立てをしてはならない(貸金業法21条1項9号)。
  • 受任通知を送っただけでは、時効は当然には止まらない。お金を請求する側が時効の完成を止めるには、催告(民法150条)や訴えの提起(民法147条)など法律が定める手段が問題になる。時効が迫っている場合は、依頼の時点で弁護士に伝える。
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問題提起

弁護士に依頼すると、多くの場合、弁護士はまず相手方に「受任通知」を送る。受任通知が届くと、相手方からの連絡は弁護士に向かうようになる。借金の整理では、督促が止まると聞いたことがある人もいるだろう。受任通知にはどのような意味と限界があるのかを知っておくと、依頼の後の動きが分かりやすくなる。

法律の文言(貸金業法21条1項9号・民法150条・弁護士職務基本規程52条)

貸金業を営む者又は貸金業を営む者の貸付けの契約に基づく債権の取立てについて貸金業を営む者その他の者から委託を受けた者は、貸付けの契約に基づく債権の取立てをするに当たつて、人を威迫し、又は次に掲げる言動その他の人の私生活若しくは業務の平穏を害するような言動をしてはならない。
九 債務者等が、貸付けの契約に基づく債権に係る債務の処理を弁護士、弁護士法人若しくは弁護士・外国法事務弁護士共同法人若しくは司法書士若しくは司法書士法人(以下この号において「弁護士等」という。)に委託し、又はその処理のため必要な裁判所における民事事件に関する手続をとり、弁護士等又は裁判所から書面によりその旨の通知があつた場合において、正当な理由がないのに、債務者等に対し、電話をかけ、電報を送達し、若しくはファクシミリ装置を用いて送信し、又は訪問する方法により、当該債務を弁済することを要求し、これに対し債務者等から直接要求しないよう求められたにもかかわらず、更にこれらの方法で当該債務を弁済することを要求すること。貸金業法21条1項柱書・9号(e-Gov法令検索で原文確認)
催告があったときは、その時から六箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。
2 催告によって時効の完成が猶予されている間にされた再度の催告は、前項の規定による時効の完成猶予の効力を有しない。民法150条(e-Gov法令検索で原文確認)
弁護士は、相手方に法令上の資格を有する代理人が選任されたときは、正当な理由なく、その代理人の承諾を得ないで直接相手方と交渉してはならない。弁護士職務基本規程52条(e-Gov法令検索で原文確認)

要件(受任通知の主な働き)

① 弁護士が窓口になることを知らせる。 受任通知により、相手方は、依頼者に代理人の弁護士がついたことを知る。相手方にも弁護士がついている場合、その弁護士は、正当な理由なく、こちらの弁護士の承諾を得ないで依頼者本人と直接交渉してはならない(弁護士職務基本規程52条)。

② 債務整理では貸金業者の取立てが規制される。 債務者が債務の処理を弁護士などに委託し、弁護士などから貸金業者に書面で通知があった場合、貸金業者は、正当な理由がないのに電話・訪問などで弁済を求め、直接求めないよう求められたのにさらに要求するなどの取立てをしてはならない(貸金業法21条1項9号)。

③ 時効との関係は内容と立場によって違う。 お金を請求する側が送る受任通知が支払の請求を含む場合、民法150条の「催告」に当たれば、催告が相手方に届いた時から6か月を経過するまでの間は時効が完成しない。催告によって本来の時効の完成時期が早まるわけではない。催告によって時効の完成が猶予されている間にもう一度催告しても、完成猶予の効力はない(同条2項)。協議を行う旨の書面の合意によって時効の完成が猶予されている間にした催告にも、完成猶予の効力はない(民法151条3項)。本来の完成時期が迫っていて催告による完成猶予に頼る場合は、催告が届いてから6か月以内に訴えの提起などの手段をとる必要がある。時効が完成した後に催告しても、時効の完成は止められない。

受任通知が送られるまでの流れ(よくある例)

1. 依頼者と弁護士が委任契約を結ぶ。
2. 弁護士が、相手方の氏名・住所(会社であれば担当部署)を確かめる。
3. 弁護士が、受任したこと、今後の連絡は弁護士にしてほしいこと、必要に応じて請求の内容や資料の開示の求めを書いた受任通知を、郵便・FAXなどで相手方に送る。
4. 相手方から弁護士に連絡が来るようになり、弁護士が依頼者に内容を報告する。

実務の視点 受任通知を送った後に相手方から依頼者本人に直接連絡が来たときは、その場で約束や支払をせず、「弁護士に依頼しているので、弁護士に連絡してほしい」と伝え、連絡の日時と内容をメモして弁護士に報告するとよい。

確認点・よくある誤解

① 受任通知に法的な強制力があるわけではない。 受任通知は、相手方に弁護士がついたことを知らせる書面であり、相手方が依頼者に連絡すること自体を一般的に禁止するものではない。貸金業法21条1項の取立ての規制は、貸金業を営む者と、その債権の取立てを委託された者などに適用され、保証人も保護の対象に含まれる(同法2条5項の「債務者等」)。銀行の貸付け、家賃、個人間の貸し借りなどに同じ規制がそのまま当てはまるわけではない。

② 借金そのものがなくなるわけではない。 債務整理の受任通知で督促が止まっても、債務がなくなるわけではない。自己破産・個人再生・任意整理などの手続を進める必要がある。受任通知を送っても、債権者が訴えを起こしたり、支払督促を申し立てたり、差押えをしたりすることが当然に禁止されるわけではない。裁判所から本人宛てに書類が届いたら、すぐに弁護士に知らせる。

③ 受任通知の後に勝手に返済しない。 債務整理を依頼した後に、一部の債権者にだけ返済すると、手続の中で問題になることがある。返済してよいかは弁護士に確かめる。

④ 債務整理では受任通知の前に確かめることがある。 借入れのある銀行に受任通知が届くと、その銀行の預金が借入れと相殺されたり、口座が使えなくなって生活費の引き出しや公共料金の引落しに支障が出たりすることがある。給与・年金の振込先などを事前に確かめておく。保証人がいる借入れでは、保証人に請求が向かうことも確かめておく。また、債務整理の受任通知は、内容や事情によって、破産手続で問題になる「支払の停止」に当たると評価されることがある。受任通知を送る時期や内容は弁護士と相談して決める。

⑤ 時効が完成した後の承認に注意する。 時効が完成した後に債務を承認する行為(返済の約束・一部の返済・支払の猶予の依頼など)をすると、時効が完成していたことを知らなかった場合でも、原則として、その時効を援用することは信義則上許されないと解されている。受任通知の後に債権者と直接やり取りしない理由の一つである。

⑥ 時効が近い場合は早めに伝える。 請求する側の事件で時効が迫っているときは、受任通知だけでなく訴えの提起などの手段を急ぐ必要がある。

議論のある点

議論のある点 受任通知の書き方によっては、債務者の側からの受任通知が債務の「承認」(民法152条)に当たり、時効が新たに進行を始める(時効の更新)と評価されるかが問題になることがある。どのような記載がどのように評価されるかは、通知の文言や状況によって判断が分かれる。請求する側の受任通知が「催告」に当たるかも、記載内容による。一般論だけで判断せず、弁護士に相談してほしい。

特に相談した方がよい場面

・受任通知の後も、貸金業者から本人に電話や訪問による督促が続く
・相手方から本人に直接、示談や支払の約束を求める連絡が来た
・請求したい権利の時効が迫っている

具体的な事案は、法律事務所、弁護士会の法律相談センターや法テラス等にご相談ください。

相談のタイミング

請求する側で時効が迫っている場合は、受任通知を送る前の依頼の段階で弁護士に伝える。長く返済していない借入れや古い請求がある場合は、受任通知の発送、返済の約束、一部の返済の前に弁護士に伝え、時効の完成と援用の可否、通知の内容を確かめてもらう。依頼の前に自分で催告をしたことや、相手方と協議の合意をしたことがあれば、その日付と内容も伝える。受任通知の後に相手方から直接連絡が来たら、その日のうちに弁護士に報告する。

まとめ

受任通知は、弁護士が受任したことと今後の連絡先を相手方に知らせる書面である。債務整理では、弁護士などからの書面の通知の後、貸金業者の一定の取立てが規制される(貸金業法21条1項9号)。受任通知だけでは時効は当然には止まらないため、時効が迫っている場合は早めに弁護士に伝える。

出典

貸金業法2条・21条1項、民法147条・150条・151条・152条(e-Gov 法令検索で原文確認・2026-10-19)

弁護士職務基本規程52条(平成16年日本弁護士連合会会規第70号)

最終確認日
2026年10月19日
法令の基準時
2026年10月時点の法令による
出典(外部サイト)
e-Gov 法令検索(デジタル庁)〔外部サイト〕/裁判所ウェブサイト〔外部サイト〕
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