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辞任|弁護士から依頼を終えられる場合

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この記事の要点

  • 委任は各当事者がいつでも解除できる(民法651条1項)。弁護士も委任契約を解除して辞任できる。ただし、依頼者に不利な時期に解除したときは、やむを得ない事由があった場合を除き、弁護士が依頼者の損害を賠償しなければならない(同条2項)。
  • 弁護士職務基本規程は、依頼者との信頼関係が失われて回復が困難なとき(43条)、利害対立のおそれのある複数の依頼者の事件を受任した後に、依頼者どうしの利害が現実に対立したとき(42条)などに、弁護士がその事情を説明し、辞任その他の適切な措置をとらなければならないと定めている。
  • 弁護士が辞任しても、訴訟の期日や控訴期限、時効などの期限は止まらない。辞任を告げられた依頼者は、次の期日・期限を確かめ、すぐに次の相談先を探す。
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問題提起

依頼していた弁護士から「辞任します」と告げられることがある。依頼者からすれば、事件の途中で代理人がいなくなるのは大きな不安である。弁護士はどのような場合に辞任できるのか、辞任されたときに依頼者は何をすべきなのか。決まりを知っておくと、次の行動を落ち着いて考えられる。この記事は、民事事件などで依頼者が自分で弁護士と委任契約を結んでいる場合を説明する。刑事事件の弁護人(私選・国選)の辞任はこの記事の対象外である。国選弁護人は裁判所(裁判官)が選任・解任する仕組みであり、弁護人がいなければ開廷できない刑事事件もある。

法律の文言(民法651条、弁護士職務基本規程42条・43条・44条・45条)

委任は、各当事者がいつでもその解除をすることができる。
2 前項の規定により委任の解除をした者は、次に掲げる場合には、相手方の損害を賠償しなければならない。ただし、やむを得ない事由があったときは、この限りでない。
一 相手方に不利な時期に委任を解除したとき。民法651条1項・2項1号(e-Gov法令検索で原文確認)
弁護士は、受任した事件について、依頼者との間に信頼関係が失われ、かつ、その回復が困難なときは、その旨を説明し、辞任その他の事案に応じた適切な措置を採らなければならない。弁護士職務基本規程43条(e-Gov法令検索で原文確認)
弁護士は、複数の依頼者があって、その相互間に利害の対立が生じるおそれのある事件を受任した後、依頼者相互間に現実に利害の対立が生じたときは、依頼者それぞれに対し、速やかに、その事情を告げて、辞任その他の事案に応じた適切な措置を採らなければならない。弁護士職務基本規程42条(e-Gov法令検索で原文確認)
弁護士は、委任の終了に当たり、事件処理の状況又はその結果に関し、必要に応じ法的助言を付して、依頼者に説明しなければならない。弁護士職務基本規程44条(e-Gov法令検索で原文確認)

要件(弁護士が辞任する主な場面)

① 信頼関係が失われ、回復が困難なとき。 弁護士は、その旨を説明し、辞任その他の適切な措置をとらなければならない(弁護士職務基本規程43条)。

② 依頼者どうしの利害が現実に対立したとき。 複数の依頼者がいて、その間に利害の対立が生じるおそれのある事件を受任した後、依頼者どうしの利害が現実に対立したときは、弁護士は依頼者それぞれに速やかに事情を告げて、辞任その他の適切な措置をとらなければならない(同規程42条)。

③ 受任後に職務を行えない事情が分かったとき。 共同事務所の他の弁護士との関係で職務を行い得ない事件に当たると受任後に分かったときなども、弁護士は依頼者に事情を告げて辞任その他の適切な措置をとらなければならない(同規程58条)。

④ 依頼の目的が違法と分かったとき。 弁護士は、依頼の目的や事件処理の方法が明らかに不当な事件を受任してはならない(同規程31条)。日本弁護士連合会の「依頼者の本人特定事項等の確認及び記録保存等に関する規程」は、依頼を受けた後にその目的が犯罪収益の移転に関わると知り、依頼者が説得に応じない場合には、弁護士は辞任しなければならないと定めている(同規程7条2項)。

⑤ 辞任のときの説明と返還。 弁護士は、委任の終了に当たり、事件処理の状況や結果を説明し(弁護士職務基本規程44条)、委任契約に従って金銭を清算し、預り金と預り品を遅滞なく返さなければならない(同規程45条)。

辞任を告げられてからの流れ(よくある例)

次の手順は順番に終えるのではなく、並行して進める。後任の弁護士が見つかるまで期限への対応を待たない。

1. 弁護士が依頼者に、辞任の理由(説明できる範囲で)と辞任の時期を伝える。
2. 依頼者が、次の期日・控訴期限・時効などの期限と、事件の現状について説明を受ける。
3. 依頼者が、次に依頼する弁護士を探して相談する。
4. 依頼者が、預けた書類・預り金の返還と、着手金などの清算について説明を受ける。
5. 民事訴訟の途中であれば、辞任した弁護士は裁判所に辞任を届け出る。訴訟代理権の消滅は、本人または代理人から相手方に通知しなければ効力を生じない(民事訴訟法59条・36条1項)。通知をした者は、その旨を裁判所に書面で届け出なければならない(民事訴訟規則23条4項)。判決などが代理人に送達されていれば、その送達の日から控訴期間が進んでいることがあり、依頼者が辞任や判決を知った日から数え直すわけではない。依頼者に辞任を告げた後でも、相手方への代理権消滅の通知がされる前であれば、前の代理人への送達が有効になることがある。判決の送達の有無と日付、相手方への通知と裁判所への届出の状況、後で届く書類の連絡方法を確かめる。
6. 次の弁護士が委任状を出して事件を引き継ぐ。次の弁護士が決まらない間は、依頼者本人が期日に出頭するなどの対応が必要になる。

実務の視点 辞任を告げられたら、①次の期日と期限、②事件記録の受け取り方、③着手金などの清算の3点を、その場で書面やメールで確かめておくとよい。次の弁護士は、事件の記録を見なければ引き受けられるかどうかを判断できないため、記録の受け取りを急ぐ。

確認点・よくある誤解

① 弁護士が辞任しても期限は止まらない。 期日・控訴期限などは、代理人がいなくなっても進む。代理人がいない間は、依頼者本人が対応する必要がある。なお、すでに訴えの提起などで時効の完成が猶予されている場合に、辞任によってその効力が当然に失われるわけではない。

② 辞任の理由がすべて説明されるとは限らない。 利益相反など他の依頼者の秘密に関わる理由の場合、弁護士は詳しい理由を述べないことがある。

③ 不利な時期の辞任には損害賠償の問題がある。 期限の直前に辞任されて依頼者が損害を受けた場合、弁護士の責任が問題になることがある(民法651条2項)。

④ 急ぎの事情があるときの処分。 委任が終了した場合でも、急迫の事情があるときは、弁護士は、依頼者の側で委任事務を処理できるようになるまで、必要な処分をしなければならない(民法654条)。

⑤ 清算の説明を受ける。 報酬を支払う合意がある場合、辞任で委任が途中で終わったときも、事務の処理に対する報酬は、すでにした履行の割合に応じて請求できるのが原則である(民法648条3項)。有効な清算の条項があればその内容も検討する。着手金のうちどれだけが返るかは、委任契約書の清算方法と事情による。成功報酬など成果に対する報酬には民法648条の2の定めもある。2020年4月1日より前に結ばれた委任契約には、改正前の民法が適用される(平成29年法律第44号附則34条1項)。改正前の民法648条3項は、受任者の責めに帰することができない事由で委任が途中で終わった場合について定めていた。

議論のある点

議論のある点 辞任が依頼者にとって「不利な時期」に当たるか、「やむを得ない事由」があったか、辞任の際に弁護士が次の弁護士への引継ぎや期限の管理についてどこまで配慮すべきか、辞任の場合に着手金をどれだけ返すべきかは、辞任の理由(依頼者側の事情か、弁護士側の事情か)や事件の段階によって判断が分かれる。一般論だけで判断せず、弁護士に相談してほしい。

特に相談した方がよい場面

・期日や控訴期限の直前に、弁護士から辞任を告げられた
・辞任の際に、着手金の清算や預り金の返還についての説明がない
・辞任された後、次の弁護士が見つからない
・法テラスの民事法律扶助を利用している(法テラスへの連絡と手続が必要になることがある)

具体的な事案は、法律事務所、弁護士会の法律相談センターや法テラス等にご相談ください。

相談のタイミング

辞任を告げられたら、その日のうちに次の期日・期限を確かめ、すぐに次の相談先を探す。期限が近い場合は、相談の申込みのときに期限が迫っていることを伝える。

まとめ

弁護士も委任契約を解除して辞任できる(民法651条1項)が、不利な時期の辞任には損害賠償の問題がある(同条2項)。信頼関係の喪失や依頼者どうしの利害対立などの場面では、弁護士職務基本規程が辞任などの措置を求めている(42条・43条)。辞任されても期限は止まらないため、次の期日・期限を確かめ、すぐに次の相談先を探す。

出典

民法648条・648条の2・651条・654条、民事訴訟法36条・59条、民法の一部を改正する法律(平成29年法律第44号)附則34条(e-Gov 法令検索で原文確認・2026-10-19)

弁護士職務基本規程31条・42条・43条・44条・45条・58条(平成16年日本弁護士連合会会規第70号)

依頼者の本人特定事項等の確認及び記録保存等に関する規程7条(平成24年日本弁護士連合会会規第95号)

民事訴訟規則23条(最高裁判所規則・裁判所ウェブサイト掲載の版で確認)

最終確認日
2026年10月19日
法令の基準時
2026年10月時点の法令による
出典(外部サイト)
e-Gov 法令検索(デジタル庁)〔外部サイト〕/裁判所ウェブサイト〔外部サイト〕
ご相談
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