問題提起
離婚したいが、相手は絶対に応じないと言う。調停も不成立に終わった。この場合、最後は家庭裁判所の離婚訴訟で、裁判所に離婚を認めてもらうことになる。ただし、判決で離婚が認められるのは、法律が定める離婚原因があるときに限られる。その中身を整理する。
弁護士に相談する前に知っておきたい法律の要点を、分野ごとにスレッド形式でまとめています。
離婚したいが、相手は絶対に応じないと言う。調停も不成立に終わった。この場合、最後は家庭裁判所の離婚訴訟で、裁判所に離婚を認めてもらうことになる。ただし、判決で離婚が認められるのは、法律が定める離婚原因があるときに限られる。その中身を整理する。
夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
2 裁判所は、前項第一号から第三号までに掲げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる。民法770条(e-Gov法令検索で原文確認)
①不貞な行為(1号):配偶者が自由な意思で配偶者以外の者と性的関係を持つことをいうと一般に理解されている。
②悪意の遺棄(2号):正当な理由なく、同居・協力・扶助の義務(民法752条)を果たさないことで、婚姻生活を続けない意思などを伴うものをいうと説明されている。単なる別居や一時的な生活費の不払いだけで直ちに当たるわけではなく、暴力から逃れるための別居など正当な理由がある場合は区別される。
③3年以上の生死不明(3号):生きているか死んでいるか分からない状態が3年以上続くこと。単に連絡が取れないだけで、生存が分かっている場合は当たらない。
④その他婚姻を継続し難い重大な事由(4号):婚姻関係が破綻し、回復の見込みがない状態をいうと理解されている。暴力・暴言、長期の別居、浪費、宗教活動、病気などの事情を総合して判断される。
改正点:2026年4月1日施行の改正前は「強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき」も独立の離婚原因だったが、削除された。病気の事情は、4号の判断の中で考慮される。改正後の規定は施行時に続いている訴訟にも原則として適用されるが、施行日前に、控訴審の口頭弁論が終結していた事件と、第一審の判決に対して上告をする権利を留保して控訴をしない旨の合意をしていた事件は、改正前の規定による(令和6年法律第33号附則5条)。提訴した日だけで決まるわけではない。
実務の視点 判決で離婚を認めてもらうには、離婚原因を原告の側が証拠で示す必要がある。不貞ならメッセージや写真、暴力なら診断書・写真・警察や相談機関への相談記録、別居なら住民票や賃貸借契約書など、日付の分かる資料を集め、時系列の一覧にしておく。ただし、身の危険があるときは、証拠集めより安全の確保を優先する。
①離婚調停(原則として先に必要。家事事件手続法257条1項)→ ②不成立 → ③家庭裁判所に離婚の訴えを起こす → ④書面のやり取りと証拠調べ(本人尋問など)。途中で和解して離婚することも多い → ⑤判決 → ⑥不服があれば控訴(判決の送達を受けた日から2週間以内。民事訴訟法285条)→ ⑦判決離婚は判決の確定で、和解離婚は和解の成立で離婚が成立する。判決離婚では、訴えを起こした側が、確定の日から10日以内に届出をする(戸籍法77条1項・63条1項)。和解離婚は、和解成立の日から10日以内に届け出る(期限の計算と必要書類は届出先で確かめる)。届出が遅れても離婚が無効になるわけではないが、届出の義務は残る。
一緒に決められること:離婚を認める判決の中で、申立てにより、子の監護に関する処分(監護者の指定・養育費・親子交流など)、財産分与、年金分割の割合などについて裁判がされる(附帯処分。人事訴訟法32条1項)。夫婦の間に未成年の子がいるときは、判決で、父母の双方または一方を親権者と定める(民法819条2項)。父または母が子の心身に害悪を及ぼすおそれがあるとき、暴力等のおそれなどで父母が共同して親権を行うことが困難なとき、その他双方を親権者とすると子の利益を害するときは、一方を親権者と定めなければならない(同条7項)。慰謝料も、離婚の訴えと一緒に請求できる(人事訴訟法17条)。親権者の指定や子の監護に関する裁判をするときは、子が15歳以上であれば子の陳述を聴く(同法32条4項)。15歳未満でも、年齢や発達の程度に応じて子の意思が考慮されると説明されている。
①「性格の不一致」だけで離婚できるか。性格の不一致そのものは条文の離婚原因ではない。それによって婚姻関係が破綻し回復の見込みがないと言える事情(長期の別居など)があるかが問われる。
②3号の生死不明と失踪宣告は別。3年以上の生死不明は離婚原因だが、失踪宣告とは要件も効果も違う。失踪宣告は、生死不明が7年間続く場合(普通失踪)のほか、戦争・船舶の沈没などの危難が去った後1年間続く場合(危難失踪)にされ(民法30条)、死亡したものとみなす制度である。
③裁量による棄却は1〜3号だけ。改正後の770条2項は、1号から3号の事由がある場合についての規定である。
④判決と和解の違い。法定の離婚原因の認定が必要なのは、判決で離婚を認めてもらう場合である。訴訟の途中で双方が合意すれば、和解で離婚することもできる。
⑤年金分割は判決だけでは終わらない。判決や和解で割合が決まっても、年金事務所などへの請求が別に必要で、期限がある。
議論のある点 次の点は、事情によって結論が大きく分かれる。一般論だけで判断せず、弁護士に相談してほしい。
①別居が何年続けば「破綻」か。法律に年数の定めはない。婚姻期間の長さ、別居の経緯、別居中のやり取り、子の有無などと合わせて判断され、一律の目安で決まるものではない。
②有責配偶者からの離婚請求。最高裁昭和62年9月2日大法廷判決は、有責配偶者からの請求であっても、夫婦の別居が両当事者の年齢と同居期間に比べて相当の長期間に及び、未成熟の子がいない場合には、相手方が離婚によって精神的・社会的・経済的に極めて苛酷な状態に置かれるなど、請求を認めることが著しく社会正義に反する特段の事情がない限り、有責配偶者からの請求であることだけを理由に許されないとはいえないとした。その後、最高裁平成6年2月8日判決は、未成熟の子がいる事案で、別居の期間、子が間もなく高校を卒業する年齢であること、別居後も送金を続けていたことなどから請求を認めた。どの程度の別居なら「相当の長期間」か、未成熟の子や相手方の経済状況をどう評価するかは事案ごとに異なる。なお、「未成熟の子」は未成年の子と同じ意味ではなく、経済的に自立しているかなどで判断されると説明されている。
③どちらが「有責」か。双方に原因がある場合や、破綻した後の不貞などは評価が分かれる。
・相手が離婚に応じず、調停も不成立になった(なりそう)
・自分にも離婚の原因があると言われている
・別居期間が短い、または離婚原因の証拠が少ない
・親権や財産分与で大きく対立している
・相手から離婚訴訟を起こされた、または判決を受け取った
・暴力や脅しがあり、自分や子の安全に不安がある(調停や訴訟を待たずに、警察・配偶者暴力相談支援センター・弁護士に相談する)
・別居中の生活費(婚姻費用)が払われない
訴訟を考え始めた段階(調停の前や調停中)で相談すると、証拠の集め方や調停の進め方を訴訟の見通しに合わせられる。次の期間にも注意する。
・控訴:判決の送達を受けた日から2週間以内(民事訴訟法285条)。
・不成立後の訴え:調停不成立の通知を受けた日から2週間以内に訴えを起こすと、調停申立ての時に訴えを起こしたものとみなされる(家事事件手続法272条3項)。2週間を過ぎても訴えは起こせる。
・財産分与:離婚の時から5年以内に家庭裁判所に申し立てる(2026年4月1日より前の離婚は2年)(民法768条2項、令和6年法律第33号附則4条)。附帯処分として離婚訴訟の中で求めることもできる。
・慰謝料:誰に、何を理由に請求するかで期限が違う。不貞や暴力など個々の行為による損害は、損害と加害者を知った時から3年(身体を害された場合は5年)、不法行為の時から20年で時効にかかる(民法724条・724条の2)。古い不法行為には2020年4月1日施行の改正の経過措置があり、同日の時点で改正前の3年の時効が完成していた場合は5年の規定は適用されず、改正前の20年の期間が過ぎていた場合はなお改正前の規定による(平成29年法律第44号附則35条)。配偶者に対する、離婚そのものによる慰謝料は、離婚が成立した時から数える(最高裁昭和46年7月23日判決)。夫婦間の権利は、婚姻の解消の時から6か月を経過するまで時効が完成しない(民法159条)が、不貞の相手方など第三者への請求には当てはまらない。また、不貞の相手方に離婚そのものの慰謝料を請求できるのは、夫婦を離婚させることを意図して不当に干渉したなどの特段の事情がある場合に限られる(最高裁平成31年2月19日判決)。
判決で離婚が認められるのは、不貞・悪意の遺棄・3年以上の生死不明・その他婚姻を継続し難い重大な事由の4つの場合に限られる。改正で精神病の条項は外れ、病気の事情は4号の中で考慮される。別居の長さや有責性の評価は事案ごとに分かれ、和解で離婚する道もある。証拠を時系列で整理し、控訴などの期限を意識して、早めに見通しを相談することが大切である。
出典
民法30条・159条・724条・724条の2・752条・768条2項・770条・819条2項・7項/家事事件手続法257条1項・272条3項/人事訴訟法17条・32条/民事訴訟法285条/戸籍法63条1項・77条1項/令和6年法律第33号附則4条・5条/平成29年法律第44号附則35条(いずれも e-Gov 法令検索で原文確認・2026-10-18〜19)/最高裁昭和46年7月23日判決(民集25巻5号805頁)/最高裁昭和62年9月2日大法廷判決(民集41巻6号1423頁)/最高裁平成6年2月8日判決(家月46巻9号59頁)/最高裁平成31年2月19日判決(民集73巻2号187頁)