弁護士に相談する前に知っておきたい法律の要点を、分野ごとにスレッド形式でまとめています。

このサイトについて:本サイトは、法律の問題を弁護士に相談する前に知っておくと、弁護士の話が理解しやすくなる基礎知識をまとめたサイトです。掲載している情報は、スレッドの形でまとめています(掲示板の体裁ですが投稿は受け付けておりません)。評価や見解が分かれる点は「議論のある点」として示しています。あくまで管理人の便宜のために作成した参考情報ですので、個別のご相談にはお答えできません。ご自身の個別事案については弁護士にご相談ください。なお、条文の原文・判例・公的機関の資料を機械的に照合し、AIによる確認・文書の補充をしておりますが、掲載情報には誤りが含まれることがあります。本サイトで相場観を掴んだうえで、弁護士に相談をしてください。

年金分割|手続の窓口と期限の数え方

このスレッドは、AIが確認した情報を掲載したものです。スレッド形式は見せ方だけで、実際の投稿や利用者の体験談ではありません。
赤い枠の「議論のある点」は、評価や見解が分かれる点です。書き込み・返信はできません。

この記事の要点

  • 年金分割は、婚姻期間中の厚生年金の記録(標準報酬)を夫婦で分ける制度。年金事務所など(実施機関)への請求がなければ分割されない。合意分割では、割合を合意や家庭裁判所の手続で決めたうえで、当事者のどちらかが請求する。3号分割では割合を決める手続はなく、被扶養配偶者だった側が請求する。
  • 請求期限は、離婚が成立した日の翌日から数えて5年(厚生年金保険法78条の2第1項ただし書・同法施行規則78条の3第1項)。ただし、この5年は2026年4月1日以後の離婚のもので、それより前の離婚は改正前の2年のまま(令和7年法律第74号附則10条)。
  • 原則の期限の前に家庭裁判所へ割合を決める調停・審判を申し立てていれば、期限を過ぎてから(または期限の前6か月以内に)調停が成立したり審判が確定したりしても、その翌日から数えて6か月を過ぎるまでは請求できる特例がある(同規則78条の3第2項)。
  • --

問題提起

離婚協議書に「今後、互いに何も請求しない」と書いて離婚した。後になって年金分割のことを知った。あるいは、家庭裁判所で割合が「0.5」と決まったので安心していた。年金分割は、割合を決めることと、年金事務所などに請求することが別の手続で、請求には期限がある。割合が決まっただけでは分割されない点に注意が要る。この記事でいう「離婚」は、法律上の「離婚等」(婚姻の取消しや、一定の事実婚の解消を含む)のうち、主に離婚を想定している。

法律の文言(厚生年金保険法78条の2第1項)

第一号改定者……又は第二号改定者……は、離婚等……をした場合であつて、次の各号のいずれかに該当するときは、実施機関に対し、当該離婚等について対象期間……に係る被保険者期間の標準報酬……の改定又は決定を請求することができる。ただし、当該離婚等をしたときから五年を経過したときその他の厚生労働省令で定める場合に該当するときは、この限りでない。
一 当事者が標準報酬の改定又は決定の請求をすること及び請求すべき按分割合……について合意しているとき。
二 次項の規定により家庭裁判所が請求すべき按分割合を定めたとき。厚生年金保険法78条の2第1項。……は省略(e-Gov法令検索で原文確認)
附則第一条第一項第四号に掲げる規定の施行の日前に……改正前の厚生年金保険法第七十八条の二第一項に規定する離婚等をした場合における同項の規定により標準報酬の改定又は決定を実施機関に請求することができる期間の制限については、なお従前の例による。令和7年法律第74号附則10条。……は省略(e-Gov法令検索で原文確認)

この改正で、78条の2第1項ただし書の「二年」が「五年」に改められ、2026年4月1日に施行された(e-Gov 法令API の改正履歴・時点指定で確認)。

二つの分割の違い

|合意分割(78条の2)|3号分割(78条の14)
対象|婚姻期間中(対象期間)の厚生年金の記録|2008年4月以後で、相手の被扶養配偶者(国民年金の第3号被保険者)だった期間(特定期間)の記録
割合|当事者の合意か、家庭裁判所が定める。標準報酬の総額の少ない側(第2号改定者)の分割前の割合を超え、2分の1以下の範囲(78条の3第1項)|2分の1(合意は不要=78条の14第2項・3項)
請求する人|当事者のどちらか(代理人による請求もある)|被扶養配偶者だった側
割合の証明|公正証書・公証人の認証を受けた私署証書・調停調書・審判書など(同法施行規則78条の4)|不要
できない場合|—|被扶養配偶者を扶養していた側(特定被保険者)が障害厚生年金の受給権者で、特定期間がその年金額の計算の基礎になっているときなど(78条の14第1項ただし書・同規則78条の17第1項1号)

分割されるのは厚生年金(報酬比例部分)の記録で、国民年金(基礎年金)は分割の対象ではない。また、分割されるのは「記録」で、相手の年金から毎月お金が振り込まれる仕組みではない。割合の「0.5」は、対象期間の二人の標準報酬の総額が分割後に等しくなる割合で、相手の年金額の半分を受け取るという意味ではない。

同じ離婚について両方が関係することも多い。3号分割だけでは、第3号被保険者でなかった期間の記録は分割されない。3号分割の対象期間を含めて合意分割の請求をしたときは、3号分割の請求もあったものとみなされる(78条の20第1項。ただし、被扶養配偶者を扶養していた側〔特定被保険者〕が障害厚生年金の受給権者であるときを除く)。

手続の流れ

1. 年金事務所などに「年金分割のための情報通知書」を請求する(厚生年金保険法78条の4)。分割の対象となる期間、標準報酬の総額、割合の範囲が分かる。
2. 合意分割では、相手と割合を話し合う。合意できたら、公正証書や公証人の認証を受けた私署証書にするか、当事者双方(または代理人)が年金事務所に出向いて合意書を出す(同法施行規則78条の4第1項)。
3. 合意できないとき、または話し合えないときは、家庭裁判所に割合を定める調停か審判を申し立てる(78条の2第2項)。離婚の裁判の中で求めることもできる(人事訴訟法32条1項)。
4. 割合が決まったら、期限内に年金事務所など(実施機関)に「標準報酬改定請求」をする。調停で決まった場合は調停調書の謄本など、審判や判決で決まった場合は、確定した後に審判書・判決書の謄本などと確定を証明する書類を用意する。具体的な必要書類は年金事務所に確かめる。
5. 3号分割だけの場合は、合意や家庭裁判所の手続なしに、被扶養配偶者だった側が請求する。

実務の視点 情報通知書は早めに取る。離婚協議書や調停の合意に「年金分割の割合」と「請求すること」を明記し、どちらが年金事務所に請求するかを決めておく。家庭裁判所で割合が決まったら、請求できる状態になり次第すぐに請求する。手元に「離婚の日」「期限の終わり」「請求した日」を記録しておくと安心である。

期限の数え方

① 原則。 離婚が成立した日の翌日から数えて5年を経過すると請求できない(同法施行規則78条の3第1項)。2026年3月31日以前に離婚した場合は、改正前の2年(令和7年法律第74号附則10条)。

② 家庭裁判所の手続が長引いた場合。 原則の期限が過ぎた後、または期限の前6か月以内に、割合を定める審判が確定したり調停が成立したりした場合(審判・調停は原則の期限の前に申し立てていたときに限る)、その翌日から数えて6か月を経過するまで請求できる(同規則78条の3第2項)。離婚の判決や和解で割合が定まった場合も同じ扱いがある(同項3号・4号)。

③ 相手が亡くなった場合(合意分割)。 当事者の一方が亡くなった日から数えて1か月以内に、割合の合意や家庭裁判所の決定を証明する方法で他方が請求すれば、亡くなった日の前日に請求があったものとみなされる(厚生年金保険法施行令3条の12の7)。死亡を「知った日」からではない。生前に合意や家庭裁判所の決定ができていたことが前提で、亡くなった後に割合を決めればよいという制度ではなく、すでに期限を過ぎていた権利が復活するものでもない。

④ 3号分割の期限。 3号分割にも、離婚が成立した日の翌日から数えて5年などの期限が定められている(同法施行規則78条の17第1項2号)。2026年4月1日より前の期限の制限については、「なお従前の例による」とする経過措置が設けられている(令和8年厚生労働省令第38号附則2項)。合意分割の特例(②③)が3号分割だけの請求にもそのまま当てはまるとは限らないので、年金事務所に確かめる。

確認点・よくある誤解

① 割合が決まっても、請求しなければ分割されない。 審判書や調停調書があるだけでは記録は変わらない。期限内の請求が必要。

② 「清算条項」と年金分割。 離婚協議書の「互いに何も請求しない」という一般的な条項があるだけで、当然に年金分割ができなくなるわけではないと説明されている。ただし、年金分割について明示した合意がある場合などは、その効力を別に検討する必要がある。自分で「もう請求できない」と判断せず、書面を持って相談する。

③ 割合は「0.5」になることが多い。 家庭裁判所が割合を定めるときは、特段の事情がない限り0.5(2分の1)とする扱いが一般的と説明されている。これは条文が一律に定めているのではなく、裁判の実務による。

④ 分割を受けても、すぐに年金が出るとは限らない。 分割された記録は、自分が老齢年金を受け取る年齢や資格を満たしてから年金額に反映される。すでに老齢厚生年金を受けている人は、請求のあった日の属する月の翌月から年金額が改定され(厚生年金保険法78条の10第1項)、離婚時までさかのぼって増えるわけではない。請求を遅らせると、その分の不利益がある。

⑤ 期限を延ばしてもらう制度ではない。 相手が協力しないことは、期限が延びる理由にならない。情報通知書を請求しただけでは、分割の請求をしたことにはならない。協力が得られないときは、期限内に家庭裁判所に申し立てる。

議論のある点

議論のある点 割合を0.5と異なる割合にすべき「特段の事情」に当たるかどうかは、家庭裁判所が個別に判断し、一般論では決まらない。別居期間が長いことや、一方が保険料を直接負担していないことだけで、当然に0.5未満になるわけではないと説明されている。また、すでに作った離婚協議書や合意書の文言が年金分割の請求に影響するかは、書き方次第で争いになりうる。一般論だけで判断せず、弁護士に相談してほしい。

特に相談した方がよい場面

・離婚の際に年金分割を決めなかった、または決めたか分からない
・相手が割合の話し合いや年金事務所への同行に応じない
・家庭裁判所の手続が長引いており、期限が近い、または過ぎた
・相手が亡くなった、または重い病気である
・相手が障害厚生年金を受けている
・すでに年金を受け取っている
・離婚協議書に「何も請求しない」と書いてしまった
・離婚した日が2026年4月1日の前か後か、はっきりしない

相談のタイミング

年金分割は、離婚の話し合いの段階で割合と請求の段取りを決めておくのがよい。離婚後に気づいた場合は、期限(2026年3月31日以前の離婚は2年)が過ぎる前に、すぐに年金事務所か弁護士に相談してほしい。すでに原則の期限を過ぎていても、家庭裁判所の手続後の特例が使える場合がある。

まとめ

年金分割は、合意分割では割合を決める手続と年金事務所などへの請求の二段階、3号分割では請求だけで、どちらも請求には期限がある。2026年4月1日以後の離婚は5年、それより前の離婚は2年が原則で、家庭裁判所の手続が長引いた場合の6か月、相手が亡くなった場合の1か月という特別な期間もある。割合が決まったら、すぐに請求する。

出典

厚生年金保険法78条の2・78条の3第1項・78条の4・78条の10第1項・78条の14・78条の20第1項/厚生年金保険法施行令3条の12の7/厚生年金保険法施行規則78条の3・78条の4・78条の17/令和7年法律第74号附則10条/令和8年厚生労働省令第38号附則2項/人事訴訟法32条1項(いずれも e-Gov 法令検索で原文確認・2026-10-18)

最終確認日
2026年10月18日
法令の基準時
2026年10月時点の法令による
出典(外部サイト)
e-Gov 法令検索(デジタル庁)〔外部サイト〕/裁判所ウェブサイト〔外部サイト〕
ご相談
個別の相談には応じません。具体的な事案は、法律事務所、弁護士会の法律相談センターや法テラス等にご相談ください。

同じ小分類(お金)のスレッド

  1. 財産分与|分ける財産と分けない財産の線引き
  2. 財産分与|離婚後いつまで求められるか
  3. 婚姻費用|別居中の生活費の決め方と算定表
  4. 年金分割|手続の窓口と期限の数え方
  5. 財産分与|住宅ローンが残る自宅をどう分けるか
  6. 財産分与|退職金や将来の年金をどう扱うか
  7. 財産分与|相手が財産を隠しているときの調べ方
  8. 財産分与|結婚前の貯金や親からの援助の扱い
  9. 財産分与|自営業や会社名義の財産が絡む場合
  10. 婚姻費用|払わない相手への請求の始め方
  11. 婚姻費用|別居の原因を作った側でも請求できるか
  12. 年金分割|合意による分割と被扶養配偶者の分割の違い
  13. 離婚とお金|財産を処分されそうなときの仮差押え
  14. 離婚と税金|財産分与で課税が生じる場面
  15. 離婚と住まい|自宅に住み続ける側とローンの名義
  16. 婚姻費用|収入が上がった・下がったときの見直し
  17. 婚姻費用|住宅ローンを払っている側の負担の考え方
  18. 婚姻費用|請求できるのはいつからの分か
  19. 婚姻費用|調停中に先に支払を求める手段
  20. 婚姻費用|未払い分を財産分与で清算できるか
  21. 財産分与|分ける割合の考え方と例外
  22. 財産分与|基準時はいつの時点の財産か
  23. 財産分与|株式・投資信託・暗号資産の評価
  24. 財産分与|生命保険の解約返戻金の扱い
  25. 財産分与|夫婦の共同の借金はどう分けるか
  26. 財産分与|車や家財道具の分け方
  27. 財産分与|扶養的財産分与が認められる場面
  28. 財産分与|調停での財産目録の作り方
  29. 財産分与|子ども名義の預金は分ける対象か
  30. 財産分与|別居後に増えた財産と減った財産
  31. 年金分割|情報通知書の取り寄せ方と読み方
  32. 離婚とお金|取り決めた金銭が払われないときの強制執行
  33. 離婚と住まい|賃貸住宅の名義と退去の話合い
  34. 離婚とお金|離婚時に交わす合意書の清算条項
  35. 離婚と税金|養育費や慰謝料を受け取る側の税の扱い

大分類暮らし・家族の他の板 中分類 4

中分類子ども・親権

  1. 共同親権|改正民法で変わる点・変わらない点
  2. 養育費|取り決めを書面に残す方法
  3. 親権者の指定|決め方と判断で重視される事情
  4. 養育費|支払いが途絶えたときの回収手段
  5. 面会交流|頻度・方法の決め方と調停
  6. 面会交流|約束が守られない場合の手続
  7. 認知|父子関係を法的に確定させる手続
  8. 嫡出否認|誰が・いつまでに申し立てられるか
  9. 普通養子縁組|縁組届の要件と証人
  10. 普通養子縁組|配偶者のいる人が養子をとるとき
  11. 児童相談所|通告を受けて家庭訪問されたとき
  12. 一時保護|子が突然保護されたときの初動

中分類高齢者・成年後見・終活

  1. 後見・保佐・補助|判断能力に応じた3つの類型
  2. 成年後見人|家族と専門職、選ばれ方
  3. 家族信託|財産管理を家族に託す仕組み
  4. 死後事務委任|葬儀・解約手続を任せる契約
  5. 介護事故|施設側の責任が問われる場面
  6. 介護施設の契約|入居一時金・退去をめぐる争い

中分類近隣・日常トラブル

  1. 生活騒音|我慢の限度と法的な対応
  2. 越境した枝・境界|改正民法での切取りルール
  3. いじめ|記録の残し方と学校への申入れ
  4. 学校事故|授業・部活動中のけがと責任の所在
  5. 内容証明郵便|送る意味と効果的な場面
  6. 少額訴訟|小さな金額の請求を簡単に争う手続