弁護士に相談する前に知っておきたい法律の要点を、分野ごとにスレッド形式でまとめています。

このサイトについて:本サイトは、法律の問題を弁護士に相談する前に知っておくと、弁護士の話が理解しやすくなる基礎知識をまとめたサイトです。掲載している情報は、スレッドの形でまとめています(掲示板の体裁ですが投稿は受け付けておりません)。評価や見解が分かれる点は「議論のある点」として示しています。あくまで管理人の便宜のために作成した参考情報ですので、個別のご相談にはお答えできません。ご自身の個別事案については弁護士にご相談ください。なお、条文の原文・判例・公的機関の資料を機械的に照合し、AIによる確認・文書の補充をしておりますが、掲載情報には誤りが含まれることがあります。本サイトで相場観を掴んだうえで、弁護士に相談をしてください。

婚約破棄|慰謝料と結婚準備費用の請求範囲

このスレッドは、AIが確認した情報を掲載したものです。スレッド形式は見せ方だけで、実際の投稿や利用者の体験談ではありません。
赤い枠の「議論のある点」は、評価や見解が分かれる点です。書き込み・返信はできません。

この記事の要点

  • 婚約は、将来結婚するという当事者の合意で成立し、書面・結納・指輪などの形式は法律上の要件ではない。ただし、真剣で確実な合意だったかは、指輪の交換、両家の顔合わせ、式場の予約などの事情から判断される。
  • 正当な理由なく婚約を破棄した側は、相手に損害賠償の責任を負う。最高裁も、真に夫婦として共同生活を営む意思で結婚を約束していた事案で、正当な理由のない破棄に慰謝料を認めた(最高裁昭和38年9月5日判決)。
  • 請求できる損害には、慰謝料のほか、結婚式場のキャンセル料、新居の準備費用など、婚約を信じて支出した費用が含まれうる。結婚のために仕事を辞めた場合の収入の減少が問題になることもあるが、どこまで認められるかは事案による。
  • --

問題提起

結婚の約束をして、式場を予約し、両家の顔合わせも済ませたのに、相手から突然「結婚できない」と言われる。気持ちの傷だけでなく、キャンセル料や新居の費用、仕事を辞めたことによる収入の減少も残る。法律は、婚約の破棄をどこまで責任の問題として扱うのかを整理する。

法律の文言(民法415条1項・709条)

債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。(後略)民法415条1項(e-Gov法令検索で原文確認)
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。民法709条(e-Gov法令検索で原文確認)

婚約そのものを定めた条文はない。婚約の不当な破棄の責任は、婚約という合意の不履行(415条)、または不法行為(709条・710条)として構成されると説明されている。一方を自由に選ぶというより、それぞれの要件を満たすかを検討し、両方が成り立つこともある。

要件 — 責任が認められるには

① 婚約が成立していること。 将来結婚するという真剣で確実な合意があったこと。口約束でも成立しうるが、単なる交際中の言葉では足りないとされる。結納、婚約指輪、両家への紹介、式場の予約、同居や新居の準備などは、成立を示す事情になる。

② 破棄に正当な理由がないこと。 相手の不貞、暴力、重大な事情(多額の借金、既婚であることなど)の隠匿、ひどい侮辱などは、破棄の正当な理由と認められやすいとされる。反対に、単に気持ちが冷めた、親が反対した、年回りや出身による差別的な理由などは、正当な理由とされにくい。

③ 損害。 精神的苦痛(慰謝料)と、婚約を前提に支出した費用など。

実務の視点 婚約の成立を示すために、指輪の購入の記録、式場の予約書・キャンセル料の請求書、顔合わせの写真、結婚の話をしたメッセージなどを残しておく。費用は領収書で一つずつ示せるようにする。

請求できる損害の範囲

1. 慰謝料。 婚約の期間、破棄の理由と態様、交際の経緯、妊娠の有無などを考慮して決められる。結婚後の離婚の慰謝料との釣り合いも考慮されることがある。
2. 結婚の準備費用。 結婚式場・披露宴のキャンセル料、新婚旅行のキャンセル料、新居の契約費用、家具・家電の購入費など。ただし、不当な破棄との因果関係、支出の必要性、返金や転売・転用ができるか、誰が実際に負担したか(親が払った費用が当然に本人の損害になるわけではない)などで、認められる範囲は限られる。契約上の請求では、通常生ずべき損害などに限られる(民法416条)。式場などとの契約上の支払義務は、婚約者どうしで誰が最終的に負担するかとは別の問題である。
3. 仕事を辞めたことによる損失。 結婚のために退職した場合の収入の減少が損害として認められることがあるが、退職の経緯、相手が知っていたか、再就職の見込みなどにより、期間や額は限られる。
4. 弁護士費用の一部。 不法行為として訴訟で請求する場合に、認められた額の一部が加えられることがある。

手続の流れ

1. 婚約の成立と破棄の経緯、支出した費用を整理し、証拠をそろえる。
2. 相手に書面で請求する。
3. 交渉で金額・支払方法を話し合う。結納・指輪の扱いも合わせて決める。
4. 合意できなければ、婚約者どうしの争いは家庭に関する事件として、原則としてまず家庭裁判所に家事調停を申し立てる(家事事件手続法244条・257条1項)。調停を経ずに訴えると、原則として調停に付される(同条2項)。調停が成立しなければ、請求額などに応じて地方裁判所・簡易裁判所に訴えを起こす。第三者への請求など、内容によって扱いが違うこともある。

確認点・よくある誤解

① 結婚を強制することはできない。 婚約していても、裁判で「結婚せよ」と命じてもらうことはできない。問題になるのは、損害賠償や結納などの返還といった、お金・財産の請求である。

② 先に「別れよう」と言った側が必ず責任を負うわけではない。 破棄に至った原因がどちらにあるか、双方の言動を総合して判断される。相手の行為が原因で破棄を申し出た場合は、申し出た側に責任がないとされることがある。

③ 結納や指輪の返還。 結納は、結婚の成立を前提とする贈与と解されており、婚約が解消されれば返還が問題になる。ただし、婚姻届がなくても実質的な夫婦の共同生活に入っていれば目的を達したとされることがあり、破棄に責任のある側から返還を求めることは制限されることがあると説明されている。婚約指輪は、贈った趣旨や返す約束の有無で扱いが争われる。損害賠償の責任がないことと、返す義務がないことは同じではない。

④ 相手が既婚者だった場合。 配偶者のいる人との婚約は、一般に法的な保護が制限されるとされる(既存の婚姻が実質的に破綻していた場合などは評価が異なりうる)。それとは別に、独身だと偽った行為などについて、不法行為として損害賠償を求められることがある。

⑤ 第三者の責任。 婚約者の一方と交際・関係を持ったというだけで、当然に第三者の責任が生じるわけではない。婚約を知っていたか、行為の態様、婚約関係の状況、破棄や損害との因果関係などから、婚約を不当に妨害したといえる場合に責任を問われることがある。

議論のある点

議論のある点 婚約の不当な破棄に責任が生じること自体は確立しているが、婚約が成立していたか(特に指輪や顔合わせなどの外形が乏しい場合)、破棄に正当な理由があったか、どこまでの費用・収入の減少を損害とみるか、慰謝料の額は、いずれも事案ごとの判断で、裁判例にも幅がある。また、請求を契約の不履行と不法行為のどちらで構成するかで、時効などの扱いが変わりうる。一般論だけで判断せず、弁護士に相談してほしい。

特に相談した方がよい場面

・式場の予約や新居の契約後に、一方的に婚約を破棄された
・結婚のために仕事を辞めた、または転居した
・相手が既婚者だったと分かった
・自分から婚約を解消したいが、相手から慰謝料を求められている
・結納や指輪の返還でもめている
・暴力・脅し・つきまといがあり、安全に別れ話ができない(直接伝える前に、警察・相談機関・弁護士に安全の確保を相談する)
・すでに夫婦同様の共同生活をしている(内縁の解消として扱う場合がある=「内縁の解消|財産分与を求められるか」)
・妊娠・出産など子どもが関係している(認知・養育費などを別に考える)

相談のタイミング

破棄を告げられたら、証拠が手元にあるうちに相談する。時効の期間も意識する。自分から解消を考えている場合は、伝える前に、理由と伝え方を相談しておくとよい。

まとめ

婚約は合意で成立し、正当な理由なく破棄すれば、慰謝料や結婚準備の費用などの損害賠償の責任が生じうる。婚約の成立、破棄の理由、損害の範囲は事案ごとに判断されるので、証拠をそろえて早めに相談する。

出典

民法150条・166条1項・167条・415条・416条・709条・710条・724条・724条の2(e-Gov 法令検索で原文確認・2026-10-19)/平成29年法律第44号附則10条/家事事件手続法244条・257条/最高裁昭和38年9月5日判決(民集17巻8号942頁)

最終確認日
2026年10月19日
法令の基準時
2026年10月時点の法令による
出典(外部サイト)
e-Gov 法令検索(デジタル庁)〔外部サイト〕/裁判所ウェブサイト〔外部サイト〕
ご相談
個別の相談には応じません。具体的な事案は、法律事務所、弁護士会の法律相談センターや法テラス等にご相談ください。

同じ小分類(婚姻の成立・婚約・内縁)のスレッド

  1. 婚約|口約束だけでも婚約は成立するか
  2. 婚約の成立|指輪や結納、両親への挨拶の意味
  3. 婚約破棄|正当な理由と認められる事情
  4. 婚約破棄|慰謝料と結婚準備費用の請求範囲
  5. 婚約破棄|結納や婚約指輪の返還
  6. 婚約破棄|相手が既婚者だったと分かったとき
  7. 結婚詐欺|交際中に渡したお金を取り戻せるか
  8. 婚約と同居|同棲解消で生じるお金の精算
  9. 婚姻の成立|婚姻届の受理と効力が生じる時点
  10. 婚姻届|勝手に出された婚姻届の無効を争う
  11. 婚姻の無効|婚姻意思がなかった場合の手続
  12. 婚姻の取消し|重婚や詐欺・強迫による婚姻
  13. 偽装結婚|在留資格目的の婚姻の効力と危険
  14. 内縁|事実婚と認められるための事情
  15. 内縁|住民票や健康保険での扱い
  16. 内縁の解消|財産分与を求められるか
  17. 内縁の解消|不当な破棄への慰謝料
  18. 内縁の解消|生活費の分担を求められるか
  19. 内縁の配偶者の死亡|相続権と遺族年金
  20. 内縁の配偶者の死亡|借家に住み続けられるか
  21. 内縁と子ども|認知と親権・氏の扱い
  22. 重婚的内縁|法律上の配偶者がいる相手との関係
  23. 事実婚の契約|合意書に定めておく項目
  24. 同性カップル|パートナーシップ制度と法的な保護

大分類暮らし・家族の他の板 中分類 4

中分類子ども・親権

  1. 共同親権|改正民法で変わる点・変わらない点
  2. 養育費|取り決めを書面に残す方法
  3. 親権者の指定|決め方と判断で重視される事情
  4. 養育費|支払いが途絶えたときの回収手段
  5. 面会交流|頻度・方法の決め方と調停
  6. 面会交流|約束が守られない場合の手続
  7. 認知|父子関係を法的に確定させる手続
  8. 嫡出否認|誰が・いつまでに申し立てられるか
  9. 普通養子縁組|縁組届の要件と証人
  10. 普通養子縁組|配偶者のいる人が養子をとるとき
  11. 児童相談所|通告を受けて家庭訪問されたとき
  12. 一時保護|子が突然保護されたときの初動

中分類高齢者・成年後見・終活

  1. 後見・保佐・補助|判断能力に応じた3つの類型
  2. 成年後見人|家族と専門職、選ばれ方
  3. 家族信託|財産管理を家族に託す仕組み
  4. 死後事務委任|葬儀・解約手続を任せる契約
  5. 介護事故|施設側の責任が問われる場面
  6. 介護施設の契約|入居一時金・退去をめぐる争い

中分類近隣・日常トラブル

  1. 生活騒音|我慢の限度と法的な対応
  2. 越境した枝・境界|改正民法での切取りルール
  3. いじめ|記録の残し方と学校への申入れ
  4. 学校事故|授業・部活動中のけがと責任の所在
  5. 内容証明郵便|送る意味と効果的な場面
  6. 少額訴訟|小さな金額の請求を簡単に争う手続