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損害賠償命令|刑事手続に付随する請求

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この記事の要点

  • 故意の犯罪行為で人を死傷させた罪、不同意わいせつ・不同意性交等、逮捕・監禁、略取・誘拐などの罪の刑事裁判が地方裁判所に係属しているとき、被害者やその相続人などは、その裁判所に、刑事裁判の弁論の終結までに、被告人に損害賠償を命じる「損害賠償命令」を申し立てることができる(犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律〔以下「犯罪被害者保護法」〕24条1項)。手数料は2000円である(同法48条1項)。
  • 裁判所は、刑事裁判で有罪の言渡しがあった後に審理を始め、特別の事情がある場合を除き、4回以内の審理期日で審理を終える(同法35条)。
  • 損害賠償命令の裁判に対しては、当事者は、決定書の送達などを受けた日から2週間の不変期間内に異議を申し立てることができる。適法な異議があると、通常の民事訴訟に移る。異議がなければ、確定判決と同じ効力を持つ(同法38条・39条)。

期限に注意

損害賠償命令の申立ては、刑事裁判の弁論の終結までにしなければならない(犯罪被害者保護法24条1項)。損害賠償命令の裁判に対する異議は、決定書の送達または口頭での告知を受けた日から2週間の不変期間内にしなければならない(同法38条1項)。この2週間は不変期間で、通常の期限の延長はできない。また、損害賠償の請求権には消滅時効がある。損害賠償命令の申立てが却下された場合や、異議・事件の終了で民事訴訟に移った場合など、手続の行方によって時効の扱いが変わるので、時効が迫っているときは早急に確認する。期限を過ぎると権利を失ったり手続ができなくなったりすることがあり、いつから数えるか・延ばせるかは事情で変わるので、思い当たる方はできるだけ早く弁護士に確認してほしい。

問題提起

暴行を受けてけがをした。加害者は起訴されて刑事裁判を受けている。損害賠償も請求したいが、別に民事裁判を起こすのは費用も時間もかかる――そのような被害者のために、刑事裁判の成果を使って簡易・迅速に損害賠償を求める制度が設けられている。

法律の文言(犯罪被害者保護法24条1項)

次に掲げる罪に係る刑事被告事件(刑事訴訟法第四百五十一条第一項の規定により更に審判をすることとされたものを除く。)の被害者又はその一般承継人は、当該被告事件の係属する裁判所(地方裁判所に限る。)に対し、その弁論の終結までに、損害賠償命令(当該被告事件に係る訴因として特定された事実を原因とする不法行為に基づく損害賠償の請求(これに附帯する損害賠償の請求を含む。)について、その賠償を被告人に命ずることをいう。以下同じ。)の申立てをすることができる。犯罪被害者保護法24条1項柱書(e-Gov法令検索で原文確認)

要件(申し立てることができる場合)

① 対象となる罪(犯罪被害者保護法24条1項各号)。 故意の犯罪行為により人を死傷させた罪またはその未遂罪(1号)、刑法176条(不同意わいせつ)・177条(不同意性交等)・179条(監護者わいせつ及び監護者性交等)の罪、刑法220条(逮捕及び監禁)の罪、刑法224条から227条まで(略取・誘拐・人身売買など)の罪、これらの罪の犯罪行為を含む罪、またはこれらの未遂罪(2号)である。過失運転致死傷などの過失による罪は対象に含まれていない。これは現行法の罪名による一覧で、法改正前の行為について旧法の罪名(強制わいせつ・準強制わいせつなど)で起訴されている事件も、経過措置により対象になる場合がある。

② 申し立てることができる人。 被害者またはその一般承継人(相続人など)である。

③ 申立先と時期。 刑事裁判が係属している地方裁判所に、その弁論の終結までに申し立てる。簡易裁判所の刑事事件は対象外である。再審の開始によって更に審判をすることになった事件も除かれる(同法24条1項柱書の括弧書き)。

④ 請求の範囲。 刑事裁判の訴因として特定された事実を原因とする、不法行為に基づく損害賠償の請求(附帯する請求を含む)である。

⑤ 申立書。 当事者と法定代理人、請求の趣旨と訴因として特定された事実その他請求を特定するのに足りる事実を記載した書面を出す(同法24条2項)。手数料は2000円である(同法48条1項)。

手続の流れ

1. 刑事裁判の弁論の終結までに、地方裁判所に申立書を出し、手数料を納める。申立書は被告人に送達される(犯罪被害者保護法25条)。
2. 刑事裁判の終局裁判の告知があるまでは、損害賠償命令の審理は行われない(同法27条1項)。その間、裁判所は申立人に刑事裁判の公判期日を知らせる(同条2項)。
3. 刑事裁判で有罪の言渡しがあると、裁判所は直ちに審理期日を開く。直ちに開くことが相当でないときは、裁判長が速やかに最初の審理期日を定める(同法35条1項)。最初の審理期日で、刑事事件の訴訟記録のうち必要なものを取り調べる(同条4項)。
4. 特別の事情がある場合を除き、4回以内の審理期日で審理を終える(同条3項)。
5. 裁判所は、原則として決定書を作成して損害賠償命令の裁判をする(同法37条1項)。相当と認めるときは、当事者が出頭する審理期日に主文と理由の要旨を口頭で告知する方法で裁判をすることもある(同条4項)。仮執行の宣言を付けることもできる(同条2項)。
6. 当事者は、決定書の送達または口頭での告知を受けた日から2週間の不変期間内に異議を申し立てることができる(同法38条1項)。後日書面が届くのを待ってよいとは限らないので、告知の方法を確かめる。

実務の視点 刑事裁判の記録をそのまま使えるので、被害者が一から証拠を集める負担は軽い。一方、損害の額(治療費・休業損害・慰謝料など)を示す資料は申立人側で用意する必要がある。領収書や診断書、休業を示す資料を早めにそろえておくとよい。

確認点・よくある誤解

① 無罪などの場合は申立てが却下される。 刑事裁判で無罪の判決などがあったとき、または有罪になった罪が対象の罪に当たらないときは、申立ては却下される(犯罪被害者保護法28条1項)。この場合でも、却下の告知を受けた時から6か月を経過するまでは、時効は完成しない(同法29条。申立てが不適法として却下された場合を除く)。その間に通常の民事訴訟を起こすかどうかを検討する。

② 異議があれば通常の民事訴訟になる。 適法な異議があると、損害賠償命令は仮執行の宣言を付けたものを除いて効力を失い(同法38条4項)、申立ての時に地方裁判所または簡易裁判所に訴えの提起があったものとみなされる(同法39条1項)。このとき、訴えの提起の手数料との差額を納める必要がある(同法48条3項)。下の③の事件の終了によって民事訴訟に移った場合も同じである。

③ 民事訴訟の手続に移すこともできる。 審理が4回以内で終わりそうにないときは、裁判所が事件を終了させ、民事訴訟に移すことができる。刑事裁判の終局裁判の告知までに申立人が民事訴訟手続を求めたときなども、裁判所は事件を終了させる(同法43条)。

④ 異議がなければ確定判決と同じ効力。 適法な異議の申立てがないときは、損害賠償命令は確定判決と同一の効力を持つ(同法38条5項)。ただし、確定判決と同じ効力があっても自動的に支払われるわけではなく、支払がなければ強制執行の手続が要る。

⑤ 仮執行の宣言があると異議だけでは執行は止まらない。 仮執行の宣言を付けた損害賠償命令は、異議が出ても効力を失わない(同法38条4項)。執行を止めるには、別に執行停止を求める手続が必要になる場合がある。

議論のある点

議論のある点 損害の範囲や額(後遺障害の評価、慰謝料の額など)、過失相殺に当たる事情の扱いは、事件ごとに判断が分かれる。損害賠償命令にするか、初めから通常の民事訴訟にするか、示談を目指すかの選択も、被害の内容や被告人の資力によって変わる。一般論だけで判断せず、弁護士に相談してほしい。

法改正の予定

情報通信技術を使う手続の整備により、損害賠償命令の裁判を電磁的記録の決定書で行う規定などが設けられている(犯罪被害者保護法37条・39条ほか。e-Gov 法令検索では2027年3月31日施行の未施行の版として掲載)。申立ての期限や異議の期間の変更は見当たらない。

特に相談した方がよい場面

・加害者が起訴され、損害賠償も請求したい
・損害賠償命令と通常の民事訴訟のどちらがよいか迷っている
・損害賠償命令の決定に不服がある、または相手方が異議を申し立てた
・加害者側から示談の申入れがある
・仮執行の宣言付きの損害賠償命令を受けた、または差押えを受けた
・加害者に氏名や住所を知られることに不安がある

具体的な事案は、法律事務所、弁護士会の法律相談センターや法テラス等にご相談ください。

相談のタイミング

申立ては刑事裁判の弁論の終結までに限られるので、遅くとも起訴されたと分かったらすぐに弁護士に相談する。弁論の終結は第1回の公判期日で行われることもある。時効、加害者の財産の保全、示談、証拠の確保は起訴前から問題になるので、起訴を待たずに相談してよい。不起訴や少年審判などで損害賠償命令を使えない場合も、通常の民事訴訟などで請求できるかは別に検討できる。

まとめ

損害賠償命令は、一定の罪の被害者が、刑事裁判を担当した地方裁判所に、弁論の終結までに申し立てて、刑事記録を使って簡易・迅速に損害賠償を求める制度である。手数料は2000円で、原則4回以内の期日で審理を終える。異議があれば通常の民事訴訟に移り、異議がなければ確定判決と同じ効力を持つ。

出典

犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律24条・25条・27条・28条・29条・35条・37条・38条・39条・43条・48条(e-Gov 法令検索で原文確認・2026-10-20。未施行の改正も確認)

最終確認日
2026年10月20日
法令の基準時
2026年10月時点の法令による
出典(外部サイト)
e-Gov 法令検索(デジタル庁)〔外部サイト〕/裁判所ウェブサイト〔外部サイト〕
ご相談
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