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被害届と告訴|違いを知っておく

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この記事の要点

  • 被害届は、犯罪の被害にあった事実を警察などに申告するものである。法律上の定義はなく、警察官は被害の届出を受理しなければならないと犯罪捜査規範(国家公安委員会規則)に定められている(犯罪捜査規範61条1項)。
  • 告訴は、被害者など告訴をすることができる人が、検察官または司法警察員に犯罪事実を申告し、犯人の処罰を求める意思表示である。書面または口頭でする(刑事訴訟法230条・241条1項)。告訴を受けた司法警察員は、書類と証拠物を速やかに検察官に送付しなければならない(刑事訴訟法242条)。
  • 告訴がなければ起訴できない罪(親告罪)の告訴は、原則として、犯人を知った日から6か月を過ぎるとできなくなる(刑事訴訟法235条本文。外国の代表者・使節が行う一定の告訴についての例外がある〔同条ただし書〕)。告訴は起訴されるまでは取り消すことができるが、取り消した人は同じ事件で再び告訴できない(刑事訴訟法237条1項・2項)。

期限に注意

親告罪(名誉毀損罪〔刑法232条〕、器物損壊罪〔刑法264条〕など)の告訴は、原則として、犯人を知った日から6か月を経過するとできなくなる(刑事訴訟法235条本文)。警察や弁護士に相談している、被害届を出した、示談交渉をしているというだけでは、告訴期間は止まらず、当事者の合意で延ばすこともできない。また、親告罪かどうかとは別に、犯罪には公訴時効があり(刑事訴訟法250条)、被害届や告訴を出しただけでは公訴時効の進行は止まらない(刑事訴訟法254条1項参照)。期限を過ぎると権利を失ったり手続ができなくなったりすることがあり、いつから数えるか・延ばせるかは事情で変わるので、思い当たる方はできるだけ早く弁護士に確認してほしい。

問題提起

被害にあって警察に相談したら、「被害届を出しますか」と聞かれた。告訴という言葉も聞くが、何が違うのか。どちらを出せばよいのか――被害届と告訴は、どちらも捜査のきっかけになるが、法律上の意味が違う。

法律の文言(刑事訴訟法230条・241条1項)

犯罪により害を被つた者は、告訴をすることができる。刑事訴訟法230条(e-Gov法令検索で原文確認)
告訴又は告発は、書面又は口頭で検察官又は司法警察員にこれをしなければならない。刑事訴訟法241条1項(e-Gov法令検索で原文確認)

要件(告訴をするとき)

① 告訴をすることができる人(告訴権者)。 犯罪により害を被った人(被害者)が告訴できる(刑事訴訟法230条)。被害者の法定代理人は独立して告訴できる(刑事訴訟法231条1項)。被害者が死亡したときは、その配偶者、直系の親族または兄弟姉妹が告訴できるが、被害者の明示した意思に反することはできない(同条2項)。このほか、法定代理人が被疑者である場合などに被害者の親族が独立して告訴できる場合(刑事訴訟法232条)、死者の名誉を毀損した罪などの特則(刑事訴訟法233条)、親告罪で告訴できる人がいない場合に、利害関係人の申立てにより、検察官が告訴できる人を指定する制度(刑事訴訟法234条)がある。

② 方式と宛先。 告訴は、書面または口頭で、検察官または司法警察員にする(刑事訴訟法241条1項)。口頭の告訴を受けた検察官・司法警察員は調書を作らなければならない(同条2項)。代理人による告訴もできる(刑事訴訟法240条)。

③ 親告罪の告訴期間。 親告罪の告訴は、犯人を知った日から6か月を経過したときはできない(刑事訴訟法235条本文)。ただし書には、外国の代表者・使節が行う一定の告訴についての例外がある。告訴できる人が複数いるときは、1人が期間を過ぎても、他の人には影響しない(刑事訴訟法236条)。

④ 告訴の取消し。 告訴は、公訴の提起(起訴)があるまで取り消すことができる(刑事訴訟法237条1項)。取り消した人は、さらに告訴をすることができない(同条2項)。親告罪では、共犯の1人に対してした告訴やその取消しは、原則として他の共犯にも効力が及ぶ(刑事訴訟法238条1項)。ただし、親族の間の窃盗のように親族関係があることで親告罪になる罪では、親族でない共犯者には親告罪の特例が適用されない(刑法244条2項・3項)。

被害届・告訴の流れ(よくある例)

1. 警察署に相談する。被害届を出すことは告訴の前提ではなく、初めから告訴をすることもできる。告訴に当たるかどうかは、書面の題名だけでなく、処罰を求める意思が示されているかなどの中身で判断される。被害届は、事件が管轄区域の事件かどうかを問わず受理しなければならないとされている(犯罪捜査規範61条1項)。口頭の届出は、被害届の様式に記入を求めるか、警察官が代書する(同条2項)。
2. 処罰を求める意思を明確にしたいとき、または親告罪のときは、告訴をする。司法警察員である警察官は、告訴を受理しなければならない(犯罪捜査規範63条1項)。書面で告訴するときは、告訴状に被害の事実と処罰を求める意思を書く。
3. 告訴を受けた司法警察員は、書類と証拠物を速やかに検察官に送付する(刑事訴訟法242条)。
4. 検察官は、告訴のあった事件について起訴・不起訴の処分をしたときは、告訴人に速やかに通知しなければならない(刑事訴訟法260条)。不起訴処分のときは、告訴人の請求があれば理由を告げなければならない(刑事訴訟法261条)。

実務の視点 告訴期間が迫っているのに告訴状をすぐに受け取ってもらえないときは、受理を待つだけにせず、直ちに弁護士に相談する。提出した書面、提出先、日時、やり取りを記録しておく。告訴状を出すときは、いつ・どこで・誰が・何をしたかを時系列で整理し、証拠(写真・診断書・メッセージの記録など)の写しを添えると、捜査機関が事実を把握しやすい。告訴状の作成は弁護士に依頼することもできる。

確認点・よくある誤解

① 告発との違い。 告訴は告訴権者がするもので、告訴権者以外の人が犯罪事実を申告して処罰を求めるのは告発という(刑事訴訟法239条1項:何人でも、犯罪があると思料するときは告発できる)。

② 虚偽の告訴は犯罪になる。 人に刑事または懲戒の処分を受けさせる目的で虚偽の告訴・告発その他の申告をすると、虚偽告訴等罪(刑法172条)になる。事実と推測を分けて書く。

③ 取り消すと再告訴できない。 示談に応じて告訴を取り消すと、取り消した人は同じ事件で再び告訴することはできない(刑事訴訟法237条2項)。取り消す前に、示談の内容が守られるかを弁護士と確認する。なお、親告罪でない罪では、告訴を取り消しても、それだけで捜査や起訴ができなくなるわけではない。告訴の取消しと被害届の取下げも同じではない。

④ 性犯罪の多くは親告罪ではない。 刑法の改正により、不同意わいせつ罪・不同意性交等罪などは親告罪ではない。親告罪かどうかは罪ごとに違い、過去の被害には行為の時の法律と改正法の経過措置が関係するので、被害の時期や以前に告訴を取り消したことがあるかを含めて弁護士に確かめる。

⑤ 親告罪でない罪は告訴がなくても起訴できる。 一方、親告罪では、被害届を出しただけで告訴の要件を満たしたとは限らないので注意する。

議論のある点

議論のある点 「犯人を知った日」については、犯人の氏名や住所まで知る必要はなく、犯人が誰かを特定できる程度に認識すれば足りるとされているが、具体的にいつその認識に達したかは、事案によって判断が分かれる。犯罪が続いている場合に告訴期間がいつから進むかも、その犯罪が法的にどう評価されるかによって変わる。なお、犯人が分からない段階でも、犯罪事実を特定して告訴することはできるとされている。告訴状がすぐに受理されない場面もあり、その対応も事案によって違う。一般論だけで判断せず、弁護士に相談してほしい。

法改正の予定

情報通信技術を使う手続の整備(令和7年法律第39号)により、告訴・告発を主務省令で定める電磁的方法でもできるようにする規定が設けられている(刑事訴訟法241条・242条。e-Gov 法令検索では2027年3月31日施行の未施行の版として掲載)。告訴期間の変更は見当たらない。

特に相談した方がよい場面

・被害にあったが、被害届と告訴のどちらにするか迷っている
・名誉毀損や器物損壊など、親告罪の可能性がある
・告訴状を出したいが、受理されない
・加害者側から示談と告訴の取消しを求められている
・告訴期間が近いのに、告訴状を受け取ってもらえない
・子どもの被害で、親権者などが加害者である
・被害から時間がたっている

具体的な事案は、法律事務所、弁護士会の法律相談センターや法テラス等にご相談ください。

相談のタイミング

親告罪の告訴は、犯人を知った日から6か月で期限が来るので、被害にあって相手が分かったら、早めに弁護士に相談する。証拠も時間がたつと失われやすい。

まとめ

被害届は被害の事実の申告で、告訴は犯人の処罰を求める意思表示である。告訴は書面または口頭で検察官または司法警察員にし、親告罪の告訴は犯人を知った日から6か月以内にする必要がある。告訴は起訴まで取り消せるが、取り消すと再び告訴できない。

出典

刑事訴訟法230条・231条・232条・233条・234条・235条・250条・254条・236条・237条・238条・239条・240条・241条・242条・260条・261条(e-Gov 法令検索で原文確認・2026-10-20。未施行の改正〔令和7年法律第39号〕も確認)

刑法172条・232条・244条・264条

犯罪捜査規範61条・63条

最終確認日
2026年10月20日
法令の基準時
2026年10月時点の法令による
出典(外部サイト)
e-Gov 法令検索(デジタル庁)〔外部サイト〕/裁判所ウェブサイト〔外部サイト〕
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