問題提起
自賠責保険に請求しようとしたら、交通事故証明書を出すよう言われた。どこで、どうやって取るのか。届いた証明書のどこを見ればよいのか。交通事故証明書の基本を整理する。
弁護士に相談する前に知っておきたい法律の要点を、分野ごとにスレッド形式でまとめています。
自賠責保険に請求しようとしたら、交通事故証明書を出すよう言われた。どこで、どうやって取るのか。届いた証明書のどこを見ればよいのか。交通事故証明書の基本を整理する。
センターは、第一条の目的を達成するため、次の業務を行う。
(略)
五 交通事故に関し、その発生した日時、場所その他内閣府令で定める事項を記載した書面を、当該事故における加害者、被害者その他当該書面の交付を受けることについて正当な利益を有すると認められる者の求めに応じて交付すること。自動車安全運転センター法29条1項・一部省略(e-Gov法令検索で原文確認)
① 申請できる人。 事故の加害者・被害者のほか、交付を受けることに正当な利益がある人(同法29条1項5号)。センターの案内では、損害賠償を請求できる親族や保険金の受取人などが例に挙げられている。本人から頼まれた代理人が申請するときは、原則として本人の委任状が要る。親権者・成年後見人などの法定代理人が申請するときや、親族などが自分の正当な利益に基づいて申請するときは、必要な書類をセンターに確かめる。
② 申請の方法(自動車安全運転センターの案内による)。
・窓口:各都道府県のセンター事務所で申請用紙に記入し、手数料を添えて申し込む。
・郵便振替:申込用紙(センター事務所・警察署・交番・駐在所にある)に記入し、ゆうちょ銀行・郵便局で手数料を添えて申し込む。
・インターネット:センターのウェブサイトから申し込む。申請できる人や送付先などに条件があるので、転居している場合や、代理人・親族が申請する場合は、どの方法を使えるかをセンターの案内で確かめる。
③ 手数料。 交付手数料は1通1,000円。これとは別に払込みなどの費用がかかるかは、申請・支払の方法ごとにセンターの案内で確かめる。
④ 交付を受けられる期間。 センターは、人身事故は事故発生から5年、物件事故は3年を過ぎたものは、原則として交付できないと案内している。過ぎている場合や過ぎそうな場合は、交付できるかをセンターに問い合わせる。この期間は、損害賠償や保険金を請求できる期間(時効)とは別のものである。
⑤ 警察への届出が前提。 証明書は警察から提供された資料に基づいて作られるので、警察に届け出のない事故については発行されない(センターの案内)。道路交通法では、交通事故があったとき、事故に関係した車両等の運転者(運転者が死亡・負傷してやむを得ないときは、その他の乗務員)が、直ちに警察官に事故を報告しなければならない(道路交通法72条1項)。届出に相手の同意は要らない。なお、これは道路交通法の「道路」(一般の交通に使われる私道・駐車場なども当たりうる=同法2条1項1号)での事故についての義務で、道路に当たらない敷地内の事故などは、届出や証明書の扱いを警察・センターに確かめる。事故の直後に届け出ていなかったとしても、それだけで二度と証明書が取れないと決まるわけではないので、放っておかずに事故の場所を管轄する警察署に連絡し、扱いを確かめる。届出が遅れるほど、事故の確認は難しくなる。
実務の視点 相手方や自分の保険会社が交通事故証明書を取り寄せていることも多いので、写しを送ってもらえるか確かめるとよい。請求先によっては原本を求められることがあるので、提出先に必要な形式と通数を確かめてから申請する。申請には、事故の発生日時・場所、届け出た警察署などを書くので、事故当日のメモや警察の受理番号を控えておくと手続が早い。
1. 届け出た警察署、事故の日時・場所を確かめる。
2. 窓口・郵便振替・インターネットのいずれかで申請し、手数料を払う。
3. 窓口または郵送で交付を受ける。受け取り方や交付までの日数は、申請の方法や、警察からの資料がセンターに届いているかなどで変わるので、申請先に確かめる。
4. 記載内容を確かめる(下の確認点)。
5. 保険会社への請求や示談・訴訟の資料として使う。
① 記載される主な内容。 事故の発生日時・場所、当事者の住所・氏名・生年月日、車種・車両番号、自賠責保険の会社・証明書番号、事故時の状態(運転者・同乗者・歩行者など)、事故の類型(追突・出会い頭など)などが記載される。氏名や車両番号に誤りがないかを確かめる。
② 「照合記録簿の種別」欄。 証明書には、警察が人身事故・物件事故のどちらとして扱っているかが記載される。事故の後に痛みなどがあるときは、証明書を待たずに早めに医療機関を受診する。けがをしたのに「物件事故」となっている場合は、診断書を出すなどして人身事故として扱ってもらえるか、警察に相談する。診断書を出せば必ず扱いが変わるというものではない。
③ 「物件事故」の表示だけで、けがの請求ができなくなるわけではない。 人身事故の証明書がないまま自賠責保険などに請求するときは、人身事故の証明書が取れない理由を書いた書面(人身事故証明書入手不能理由書)を求められることがある。ただし、その書面を出せば支払われるというものではなく、事故とけがの関係などは別に確かめられる。必要な書類は請求先に確かめる。
④ 過失や損害を証明する書面ではない。 交通事故証明書は、事故があったことと一定の事実を証明するもので、どちらに過失があるか、損害がどれだけかを示すものではない。当事者が「甲」「乙」と並んでいても、その順番や区分で、法的な加害者・被害者や過失割合が決まるわけではない。
⑤ 記載に誤りがあるとき。 当事者の氏名や車両番号などの誤りに気付いたら、事故を届け出た警察署や自動車安全運転センターに問い合わせる。
⑥ 証明書が取れないときも、請求の道がなくなるわけではない。 交付期間を過ぎたなどで証明書が取れないことだけで、損害賠償の請求や訴えが一律にできなくなるわけではない。ほかの資料で事故を示せないか、弁護士に相談する。
・けががあるのに物件事故として処理されている、「物件事故だからけがの補償はできない」と言われた
・相手が警察への届出を拒んでいる(同意を待たずに警察に連絡し、届出や事故の確認が進まないときは弁護士にも相談する)
・事故から長い期間がたっていて、証明書を取れるか、請求がまだできるか分からない
・証明書の記載と、実際の事故の状況や当事者が食い違っている
・保険会社の示す過失割合や賠償額に納得できない、保険会社から時効について知らされた
証明書の交付期間とは別に、損害賠償の請求には時効があり(民法724条・724条の2)、自賠責保険への被害者請求にも時効の定めがある(自動車損害賠償保障法19条)。どの期間がいつから進むかは、請求の相手、請求の種類、損害の内容、事故の時期などで変わる。証明書を申請・取得しただけでは時効は止まらず、示談の話合いを続けているだけで当然に止まるわけでもない。事故から時間がたっているとき、期限が近いかもしれないときは、示談の進み具合にかかわらず、早めに弁護士に相談したい。
交通事故証明書は、自動車安全運転センターが警察に届け出のあった事故について交付する書面で、窓口・郵便振替・インターネットで申請できる。センターは、人身事故は5年、物件事故は3年を過ぎたものは原則として交付できないと案内している。届出がまだなら警察に連絡し、証明書が届いたら記載内容と「人身事故・物件事故」の別を確かめる。証明書は過失や損害を示す書面ではなく、交付期間と請求の時効は別であることに注意する。
出典
自動車安全運転センター法29条1項5号/道路交通法2条1項1号・72条1項/民法724条・724条の2/自動車損害賠償保障法19条(いずれも e-Gov 法令検索で原文確認・2026-10-18)/自動車安全運転センター「交通事故証明書」のページ(https://www.jsdc.or.jp/certificate/accident/・2026-10-18 閲覧。申請方法・手数料・交付期間・警察未届の事故の扱い)